STAGE 0-24 戦いに備えて
6月22日 14:59
さて、妹紅の部屋を去った真次は、早速輝夜の元へと歩を進めていた。
このまま妹紅と対戦すれば、どうあがいても惨敗確定である。何せ真次は、空は飛べるがショットは弱くスペルカードは使えない。何か案がないか、そうでなくても地力を上げておいた方がいいと思い、輝夜にそのことを話そうとしている。
「姫さーん。邪魔するぜ~」
いきなり引き戸を開ける真次。どうせゲームでもしてるんだろうと高をくくっていたのだが、書物か何かを読んでいた所らしい。
「あら真次。またゲームしに来たの?」
「いや、お前に弾幕ファイトを申し込む!」
「……それを言うなら、弾幕ゴッコね」
素で反応する輝夜に、ちょっとがっかりしながら真次は言った。
「ありゃ、このネタわからなかったか……ま、女性がロボット物詳しい方が珍しいもんな」
「? 何? ゲーム?」
「いや、元ネタはアニメ……そのテレビを通じて、動く絵を物語にしたものが流されていたんだが、ある物語でのセリフだな」
「外の世界にはそんなものもあるのね。一回現代に行ってみたいわ」
「やめとけ。常識通じなくてマジ大変だぞ……」
「実に重みのある意見だわ」
くすくすと笑いながら輝夜が喋る。これだけゲームを持ってるのなら、現代に興味はあるのだろうとは思っていた。確かに現代は色々と便利だが、正直こちらとは違い過ぎる。第一、こんなふうに快く泊めてくれる施設や場所などかなり少ない。あまりおすすめはできなかった。
「で、どうして急に?」
「いやぁな、妹紅に退院したら一回弾幕戦しようって約束しちまって……今のままじゃ勝てる気しねぇから姫さんに特訓してもらおうかなぁ……と」
「勝てる訳ないでしょ? 馬鹿じゃないの」
いきなり辛辣な言葉が、輝夜の口から飛び出した。
「そんなバッサリ言わずに……何かねぇのか? 苦手なものとか、弱点とか」
「昔はあったけど、私と戦ってるうちに全部克服しちゃったわ。ついでに聞くけど現状、真次の実力ってどんな感じなのよ?」
「通常弾は早いのが撃てるが威力が弱い。スペカは使えん。空はもうだいぶ自由に飛べるな」
「スペカなしとか……もう一度言うわ。馬鹿じゃないの?」
……この話を聞いて、妹紅の実力は真次にも把握出来た。どうやら妹紅は「強い」部類に入るらしい。やったりやられたりと妹紅の証言から、輝夜も実力者なのだろう。
「蟻が龍に挑むようなものよ。一方的に蹂躙されることね」
「太古の英雄たちは生身で龍とやりあったりして勝ったんだぜ? 希望は捨てるつもりはねぇな」
「あんた英雄でもなんでもないでしょ」
にへもない。諦めろと、輝夜の言葉は語っていた。
「じゃ、じゃあ俺はどうしたら強くなれますか?」
「アンタが敬語とか気持ち悪いからやめてくれる!? そんなの実戦経験積みまくるか……他の退治屋とかに相談することね」
どれだけ努力しようが、あと数日で妹紅は退院するのに、それまでに十分な実戦経験など積めるはずがない。となると、自然と手段は限定された。
「退治屋って言うと……巫女とかか? ちょうど調査を依頼したいのもあるし、ついでに頼むのもいいかもな」
「お賽銭は十分に用意しておきなさい。相手も慈善事業でやってるんじゃない訳だもの。特に博麗の方は飢えてるから注意した方がいいわよ」
かつて輝夜たちが異変を引き起こした際、解決したのが博麗の巫女だという。戦闘能力もさることながら、尋常ならざる勘働きで異変の元凶を特定できるらしい。
「もう一つ守矢とか言う神社もあるんだったよな? こっからだとどちらが近い?」
「微妙な差で守矢神社かしら。外の世界から移転してきたそうだから、話も通じるところがあるだろうし、そっちに行くのがいいんじゃない?」
……明日相談ついでに、あの妖怪たちにかけられているであろう、呪いの調査を依頼するのもいいだろう。弾幕も撃てるようにはなったので、永林も文句はないはずだ。
「さて真次、弾幕戦するんでしょ? 外に出るわよ」
「おっ、付き合ってくれるのか?」
「暇だしね……さぁ、どこまでもがき苦しむか、見せてもらおう……」
「ちょ、おま、それ大佐のセリフ!」
「実際、私と真次の戦闘能力の差は、これぐらい絶望的な状況だと思うわよ?」
それが大げさではなかったことを、真次はこののち、身をもって知ることになった。何度も被弾し、スペカでの切り返しも出来ず、通常弾のみでの戦いは苦しく、すべて輝夜の圧勝で終わることとなる。
退院後の妹紅戦を戦々恐々としながら、それでも彼は勝利を諦めることなく、輝夜との弾幕戦に励んだ。
6月22日 16:01
輝夜と真次の間にも、まだまだ大きな差があります。さすがに直感での回避力があっても、火力不足とスペカなし、さらには姫様の火力じゃどうしても負けてしまうようです。雑魚妖怪なら倒せますが、まだまだ幻想郷の住人とやりあうには力不足ですね。