STAGE 0-21 射命丸 文の突撃取材
なんとかセーフ! 今日中に投稿出来ました!!
6月21日 13:47
「ふぅ、少し休憩を入れましょうか」
「おう……そうしてくれ……きっついな~……」
真次が弾幕を撃てるようになって少々、ウドンゲはそのまま、彼と弾幕ゴッコの練習をしていた。
ウドンゲは手加減してくれているのか、弾の密度は薄く、また自身の機動力自体はあるので、楽に弾幕を掻い潜れる。
「にしても先生、すごいですね。一発も直撃してないじゃないですか」
「俺には直感があるからな。それのおかげで、自分の身の危険がわかるんだ」
それに加えて、自身の超人的なまでの直感が加わり、背後からの攻撃にも対応可能。ブースターをイメージした飛行は安定しており、また緊急時には一時的に加速も効く。空を飛ぶイメージの際、ブースターを選んだのは正解だったかもしれない。
「そういやウドンゲ、なんでエアガンなんて持ってたんだ?」
「ああ、それはですね……たまたま香霖堂見つけた時、間違って霊力込めて撃ったら暴発しちゃって……で、試しに弾幕ゴッコにも使えないか試してみたんです。結果は、真次さんに教えた通りでしたけど……あ、お茶とってきますね」
「サンキュー」
奥に駆け出していくウドンゲを手を振って見送る。すぐ疲れてしまうのは欠点と言えばそうだが、ウドンゲによればその内持久力もついてくるとのことだそうだ。
「あー早く強くなりてー」
とはいえ、この手のは地道に努力するしかないとのこと。薬で一時的に強化することもできなくはないそうだが、反動が強いし、薬依存の強さは安定しないとのことで、やめておくことにした。
ウドンゲが戻ってくるまでの間、真次はくるくると銃を回して素早く内ポケットに入れては、素早く取り出す動作を繰り返した。……かっこつけたい訳ではないのだが、暇なのである。
「あやややや! それはどんな意味のある動作なんですかね?」
突如、聞きなれない声が頭上から降ってきた。真次は邪険にすることなく答える。
「いや、特に意味はない」
「そういうことでしたら、暇つぶしに取材を受けてみる気はありませんか?」
と、声の主が目の前へと降りてきた。黒い羽の生えた若い女性だ。手には手帳、頭には奇妙な帽子らしきものをかぶっている。
「取材ねぇ……マスコミはすぐもてはやしたがるから苦手なんだよなぁ……」
「そ、そう言わずに……ほら、初対面ですし……」
「永琳からの紹介がなかったってことは、永遠亭の住人ではないんだろ? メモ帳を持ってるってことは……新聞記者辺りか?」
「その通り! 清く正しい射命丸 文と申します!」
羽の生えた記者が、軽く会釈をしながら言った。どうやら幻想郷には新聞があるらしい。
「で、なんで永遠亭に?」
「いやぁ、ここにいいネタの提供主がいまして……で、ついでにこっちの様子を見に来たら、見馴れない人間が弾幕ゴッコの練習をしているではありませんか! それで気になって様子を見に来たのですよ」
「それって俺のことか?」
「他に誰がいらっしゃるんです?」
真次は頭を掻きながら、苦い表情を作る。外の世界での経験で、個人的にマスコミは苦手意識があるのだ。
「で、いつ頃から永遠亭に?」
「えっと……昨日の深夜からだな。藍に連れられてこっちの世界に来た」
「ははぁやっぱり……その年で弾幕ゴッコの練習なんておかしいと思ったんですよ。普通もっと幼いころから、練習するものですからね。こっちの感想はどうです? 外来人さん」
「名前で呼んでいい。西本 真次だ……感想って言われても、ちょっと仕事で忙しかったからな。なんとも言えん。色々と外と違う世界なんだな~ってことぐらいしか知らん」
苦手と思いつつも、真次は無礼な態度はとらない。マスコミを怒らせて得することなどないということを知っているからだ。
「あやや? 職業は医者ですか?」
「外科医……主に怪我を治すのが仕事だ。妖怪の特性を考えると、こっちではあまり必要のない職業かもな」
そうですねぇ……などと、文が相槌を打つ。そこにウドンゲが戻ってきた。
「げぇーっ! ブン屋!」
「げぇーっ! とはなんですか。げぇーっ! とは」
明らかに拒絶の意を示すウドンゲ。……どうやら評判のよくない記者のようである。それでも真次は……いや、だからこそ真次は、彼女を邪険にはしない。
「……ウドンゲ、お茶追加で頼む」
「真次先生、この妖怪とは関わらないほうがいいですよ!」
「いいから頼む。俺たちだけでお茶を飲むってのも失礼だろ?」
仕方ない、とウドンゲはもう一度台所へと向かっていった。
「……文、昔ここで何やらかしたんだ?」
「ただ取材して新聞を作っただけですよ~」
胡散臭い笑みを浮かべながら、文は笑う。
「で、仕事で忙しかったとのことですが、何かあったのですか?」
真次はここで語るべきか迷ったが……注意喚起になるかもしれないと思い、今日までの出来事を語ることにした。
「……バケモノによる襲撃が相次いだ。始まりは俺が幻想郷に来る時の……なんて言えばいいんだあれ?」
「スキマとか、スキマ内のことですかね? 目玉や標識だらけの空間のことでしょうか?」
「ああ、そこで連れの妖怪と俺が襲撃された。そいつは幻想郷内部に入って、妖怪などを襲撃してる。しかも厄介なことに……そいつは妖怪の再生力を阻害することができるらしく、妖怪たちが物理的に殺されている」
「と言いますと?」
「……バラバラ死体のまま再生しない」
文が目の色を変えた。彼女にしてみれば、特ネタを掴んだと意気込んでいるのだろう。彼女が必死にメモしている間に、ウドンゲがお茶を置いて、そのままそそくさと逃げてしまった。それほど、この記者のことが苦手らしい。
「犯人はわかっているのですか?」
「黒い鎖を纏った狼と……これは被害者の証言だが、俺にそっくりな奴に人型で現れたそうだ。……記事にしてこのことをばら撒いてくれ。少しは警戒してくれるだろう」
「ふーむ……その被害者たちへの取材を敢行しても……」
「それは面会謝絶だ。詳しく聞きたきゃ、主治医の俺に聞け」
患者の容体や、この記者があまり良くない記者であることがわかった以上、会わせる訳にはいかないと真次は判断した。ましてや、うち一人は幻想郷の管理者の部下である。そこまで知らせる訳にはいかなかった。
「残念ですね……容態はどうなっているんですか?」
「永琳の診察によると、一人はほぼ全快らしい。もう一人は傷を負ったまま回復してない。養生中だ」
「なるほど。じゃあ次に、先生のプロフィールを聞かせてください。あとあだ名とか」
「……そっちも記事にするのか?」
真次は困惑した。てっきり今の話だけで引き下がると思っていたからである。
「生きている外来人って、結構珍しいんです。大概妖怪に喰われてますから」
真次は迷った。向こうの世界でのあだ名はあるにはあるが、こちらだと誤解を招きかねない内容なのである。
「あだ名か……昔は『神童』次は『精密機械』最後は『魔法使い(ウィザート)』だったな……」
「あやや? 真次さんは神の血を引いてたり、魔法が使えたりするんですか?」
「んな訳ねぇだろ。そんなんなら今必死に弾幕ゴッコの練習なんてしねぇよ」
それもそうかと、文は首を縦に振った。
「じゃあどうしてそんなあだ名が?」
「『神童』は年齢に対して医療技術がずば抜けてたかららしい。大きくなるにつれてもう童で無くなった後、あんまり精確かつ素早くやるもんだから『精密機械』。最後のは『精密機械』はきちんと感情のある俺に対して、失礼だとアメリカの連中が考えたあだ名が『魔法使い(ウィザード)』だ。全く、大仰だよな。医者は神様でも、魔法使いでもないってのに……」
真次が記者を嫌う理由。それがこのあだ名たちであった。真次にも救えない患者はいる。自分は先ほど言った通り、神様でも魔法使いでもない。なのに、『誰でも救える』なんて雰囲気を出して、自分のことを宣伝するマスコミが、大の苦手であった。
「で、家族構成とかは?」
「兄弟がいるんだが……俺と双子の長男は七年前に現代で自殺、それを機に三つ下の弟もどこか旅に出て全く連絡がねぇ……実質失踪だな。母親は父親を不気味に思って離婚。親父は会社のトップだ。そんなもんだから、実家に戻ってもほとんど一人だな」
「う、うわぁ……ひどいですね」
自分で言ってて思ったが、なかなかに悲惨な状態である。自分に補正がなかったら、不満に思っててもおかしくない。
「元気にしてっかなぁ……参真……」
「え? すいません、今何と?」
何故か、真次の弟の名前に文が反応した。慌ててメモ帳をめくっている。
「ん? 参真がどうした? 同じ名前の奴がいるのか? でも本人な訳ないぜ。何せこっちは異世界……」
「――あった! 長男の名前、真也ですよね!?」
「……!?」
メモ帳に書かれた名前は、確かに自分の兄の名前であった。……メモ帳には、二年前の日付が書かれている。そこには真次の名前もあった。
「それで、失踪した三男って、すごく絵が上手な方ですか!?」
「あ、ああ……オイ嘘だろ? こんな偶然あるのか?」
その後、文が次々と三男の特徴を言い当てていた。……ここまで合致してしまうと、否定する方が難しい。
「信じられねぇが……間違いねぇ。そいつ俺の弟だ」
「あやややや! 兄弟そろって幻想入りですか! 仲がいいですね!!」
「まさか、連絡とれなかったのって異世界来てたからか?」
「ああ、五年間は山籠りしてたと言ってました。こちらに来たのは二年前ですねぇ」
「……ってことは、素で五年間は連絡寄こさなかったってことかあのヤロー!」
怒り心頭……とまではいかないが、腹が立ったのは事実。何か意趣返しをしてやろうかと、画策していた所に、文の衝撃の一言が、真次の身に降りかかった。
「そんな真次さんにちょっとしたニュースを。彼、付喪神……妖怪の彼女がいますよ。初心い感じですがアツアツのカップルで、何度も取材を試みたのですが、なかなか上手くいかないんです」
「……は?! あいつに彼女!?」
あり得ない。彼の弟、西本 参真 は 絵を描くために生きているような人間だったはずである。結婚はおろか、恋人すらできるはずがないと踏んでいた。
その弟に、彼女?
何が弟を変えたのか、真次には全く見当がつかなかった。
「は――…………これは夢か? アイツ絵にしか興味ないような奴だったはずなんだが……」
「そうなんですよ。私が初めて会った時は、まだ小傘さんを連れていなかったんですよね。でも、気がついたらくっついてたんです。だから私も、いきさつを是非知りたいなぁって」
心底困ったように、腕を組む文。
――その様子を見て、真次は妙案を思いつく。
自分も得し、参真に意趣返しをしつつ――文にも利益のある、妙案を。
「なぁ文、俺にもお前にもいい話があるんだが……乗らないか?」
「あやや?」
初めて会ったばかりの相手だから、少し警戒している文。
しかし、真次がその内容を話している内に……彼女からも笑みがこぼれた。
「いいですねそれ! でも、そんなに上手くいきますか?」
「……あいつには俺に対して負い目がある。せいぜい利用させてもらうさ」
二年前と同じ笑みを、文は浮かべた。
真次はその時のことをよく知らないが、似たような笑みを彼女に返す。
「あっ、長居してしまいましたね! それでは真次さん! 練習頑張ってください!!」
「おう! 俺も新聞記事と、『計画』を実行できる時を楽しみにしてるぜ!!」
文が見えなくなるまで、真次は飛んでいく彼女を見送る。
……その後、戻ってきたウドンゲと一緒に、今日は日が沈むまで弾幕ゴッコの練習をすることになるのであった。
6月21日 14:42
という訳で、取材回+真次先生のプロフィール回+参真君の名前登場回です。彼の弟、「西本 参真」に何があったのか。どうして小傘とくっついているのかは作者の前作、「ふらりと歩いて幻想入り」を見てくださいね!(露骨な宣伝)




