STAGE 0-19 喧嘩と制裁
最近長めに文章書けるなぁ……調子がいいんだろうか
6月21日 10:20
最悪だ、と内心永琳は呟いた。この二人はお互いを憎み合っている関係であり、見つけ次第ドンパチやりかねない。幸い妹紅が不調だから、直接やり合う心配はないだろうが……
「何しに来た性悪女!」
「なによ、せっかく見舞いに来てやったのにこのブス!」
永琳は頭を抱えた。
凄まじい剣幕でののしり合う二人の美少女に対し、永琳は何も出来ない。立場上永琳は輝夜の肩を持つしかなく、なので仲裁ということができない。
と、見ているしかない永琳を余所に――凄まじい剣幕で真次が立ち上がった。二人は言い争いに夢中で気がついてない。
やがて、彼が二人のちょうど間ぐらいに来たのだが、二人はそれでも口喧嘩をやめない。
そこに――真次のゲンコツが、ちょうど二人の頭上に落ちた。
「「痛ったぁ!?」」
悲鳴を上げる二人、何をされたのかわかっていない様子だ。ぎろりと真次は輝夜を睨み、凄みながらいった。
「さて輝夜。何が悪かったのか大体50から300字ぐらいで答えなさい」
「そんなの勿論……妹紅が悪い!」
妹紅を指さしながら、姫様は堂々と言った。しかし、条件を満たしていないせいか、直後――真次の頭突きが、姫様の頭に直撃した。
「つっ~~~~!!?!??」
鈍い音と共に、姫様はごろごろと床を転がりまわる。相当痛かったらしい。
「ハッ! ザマぁ!!」
「妹紅、お前にも同じ質問だ」
「どう考えても輝夜が悪い!」
すると真次は、二コリと笑顔を作り――ただし顔に青筋を浮かべながらだが――そのまま頭を大きく後ろに引く。がっちりと頭を掴まれているため妹紅は逃げられず、姫様と同じように頭突きを喰らった。
「け、慧音並みに痛い……」
その場で頭を抱える妹紅。そして、真次は怒鳴り散らす。
「まず一つ、これは二人ともだが、声でか過ぎだ! 病院ではお静かに!! 隣には藍がいます!!」
「し、真次だって結構うるさい……」
「だまらっしゃい! 次! 妹紅お前、様子見にきた相手に入ってきていきなり暴言はねぇだろ! あと目ぇ覚めたばっかで体調悪いんだがら、相手を挑発するような行為は控えるように!! 輝夜はもう少し大人な対応しろ! いきなり暴言でカチンと来るのはわかるが、相手は怪我人だ! 少しは堪えろ!! 暴言を暴言で返したらそら喧嘩になるわ!!」
至極まっとうな正論に、二人は何も言えない。その場でしゅんとするしかなかったが、痛みも引いてきたのだろう。落ち着いた二人の反撃が始まった。
「お、お前! 何様のつもりだ!? 私たちの関係も知らないで……!」
「そうよそうよ! 部外者がなに言っちゃってる訳!?」
「お前らの遺恨なんて知るかボケ!」
ばっさりと、二人の言い分を切り捨てた。確かに、真次はこの二人のことを全く知らない。だからこそ、こうして仲裁ができたとも言える。
「ただな! ここは病院で、妹紅は患者だ! それを弁えたうえで行動するように! 今度喧嘩してみろ? その度に原稿用紙十枚分ぐらいの反省文書かせるからな! お互いに!!」
「なによ原稿用紙って?」
「……大体四千文字ぐらいの反省文書かせるからな! ついでに変な日本語使ってないかとか、適当じゃないかとかきっちりチェックして、あまりにもひどいようなら書きなおさせるぞ!」
その内容に妹紅と輝夜は青ざめる。二人とも本気で相手が憎いので、四千字のまともな反省文なんて書ける訳がない。
「慧音より厳しいわね……こいつは……」
「え、永琳! 代筆しなさい!! あなたならできるでしょ!?」
「て~る~よ~? もしそんなことしてみろ? お前のゲームのセーブデータ全部消すからな!! 妹紅も誰かに代筆なんて頼んでみろ? 俺オリジナルの『身体に良いがクソまずいレシピ10選』のフルコースだからな! しかも退院するまでの病院食全部!!」
輝夜は絶望的な表情を作る。妹紅は少しその料理に興味を持ったが、食べたくはないと渋い表情になった。
そして……本当にしぶしぶと言った様子で、二人は口論をやめた。それどころかひそひそと、輝夜が妹紅に耳打ちする。
「……真次を怒らせるのはやめましょ? 一時休戦しない?」
「……そうね……」
「……何をコソコソ話してるんだ?」
「な、なんでもないわよ」
輝夜がぶんぶんと首を振る。真次に怒られるのは効いたらしい。
「ならばよし! 姫さんは用事が済んだら速やかに出ること。永琳は妹紅の診察を頼む」
「え? あん……真次先生が診察するんじゃないの?」
「俺はこっちに来たばっかで、妹紅の身体の仕組みに詳しい訳じゃない。処置したのは俺だが、主に診るのは永琳先生の方がいいだろうという判断だ。まぁ、様子見に来ることぐらいはあるだろうが」
そう言うと真次は永琳に「あとを頼む」と言って、部屋から出て行ってしまった。すると、輝夜と妹紅はゆっくりとため息を吐く。
「あー痛かった……」
「本当、頭突き上手かったわ……」
「慧音並みって言ってたものね。あの獣人の頭突き、寺子屋で相当痛いって噂になってたわよ」
「ちなみに、角が生えている時の慧音だともっと痛い」
「あれより痛いの!? 勘弁してほしいわ……」
と、二人は穏やかに会話をしている。普段ではまず無い光景だ。だが、その平穏も長くは続かない。お互いにハッとした後、すぐさま険悪な空気に戻った。
「か、勘違いするんじゃないわ。あくまで真次がいるから休戦するだけだから。それに、退院したらいつも通りやるわよ!?」
「そうね! 反省文が嫌だから様子見してあげるわよ! 真次先生がいなかったらぶっ飛ばしてあげるわ!!」
いつも通りの空気に戻ると永琳はため息をひとつついた後、妹紅の診察を始める。
この二人の仲が取り持たれるのは、一体いつになるのやらなどと、永琳は遠い目で見つめるのであった……
6月21日 10:47
という訳で、輝夜ともこたんの喧嘩回であり、制裁回であります。真次君は二人の事情を知らないので、バッサリといい分を切り捨て、自分の主張を通しました。二人の過去については、書こうかどうか迷い中。




