STAGE 6-27 幻想郷防衛戦・6
7月23日 13:34
「「うおおおおおおおぉぉ!!」」
漆黒の怨霊と白衣の医者が、互いに弾幕を掃射していく。
完全に霊夢を意識の外に追いやり、双子の弟めがけて苛烈な攻撃をぶつけた。圧倒的な殺意を込めて、西本真也が弾幕を撃ち続ける。
対して真次は、高速機動を駆使して間合いを維持する。引きながら射撃を続けるスタイルだ。シンプルな戦法だが、それ故に強い。
「腰が引けているぞ! 兄弟っ!」
「ビビリで悪かったな! こちとら慎重第一なんだよ!!」
背面を見ないまま飛び回り、弾丸を打ち込んで勢いを削ぐ。二丁拳銃を振り回し、連続射撃を怨霊に食らわせた。
霊夢の攻撃と、皆の弾幕を被弾している。その上真次の銃撃も浴びているのに、まるで手ごたえがない。咆哮を上げる化け物に恐怖を感じ、僅かだがトリガーが鈍る。
「増幅『濃縮還元の絶望』」
純黒のオーラを纏い、弾幕と格闘戦を織り交ぜて真也が迫る。被弾したダメージを肩代わりさせ、装甲の代わりにしている。
速度も増して肉薄し、牙を見せつけるように笑う兄。むき出しの闘争本能に銃弾を浴びせ、黒い鎧を打ち砕こうとする。
しかし固い。ともかく固い。適当な攻撃は通用しない。弾丸は当たっているのに、ヒビ一つ入らない。真次は銃撃をやめ、近接格闘に切り替えた。
「剣弾『レーザーサーベル』!」
銃口から光の剣を発生させ、突っ込んでくる兄と切り結ぶ。軽く感心したような声を出した後、真也も妖刀を腰から引き抜いた。
禍々しい気配。村正ではなさそうだが、危険な気配がひしひしと伝わってくる。息を飲む真次に向けて、ニヤリと意味深に兄は嗤った。
「安心しろ。村正より三ランク下だ」
「十分物騒だろうが!」
抜刀した刀を振りかざしてくる怨霊。真次は慌てて刃を防御し、斬撃の連打に防戦一方だ。
「懐かしいなぁ? 兄弟! よくこうしてチャンバラしたものだな! えぇ!?」
「ったく、いつの話だよ!? 良い年した大人になってまで、こんなことしたくなかったね!!」
黒い刀と光の剣で鍔迫り合い。双子の顔がすぐ目の前にある。金属の擦れる音をさせつつ、真也が思い出を語りだした。
「松ぼっくりの投げ合いも愉しかったよなぁ!?」
「あぁ、参真は呑気に絵を描いてた!」
「成績も、体力も、知力も! 悉くお前が上だった……!」
「何だよお前、今更コンプレックスかぁ!?」
「お前にではない……私の宿命にだ!」
剣と剣をぶつけ合い、お互い後ろに下がって再び弾幕戦へ。並行して空を飛びながら、弾幕と弾幕が衝突を続けた。
「私は負けた。負けて負けて負けた負けて負け続けた。それが私の宿命だ。それが私の天命だ。正しい誰かに退治されるのが、私の宿命」
「お前何言ってやがる!?」
「私は当て馬。私は敗北者。私は絶対に誰にも勝てない。それに打ち克つ。この世界を壊して、私は私の宿命に打ち克ってみせる……!」
支離滅裂。理解不能。早口でまくし立てる兄の顔は、怨霊であるなしに関係なく、狂気に染まっていた。
真次は不思議な事に、哀れみを覚えた。狂い叫ぶその顔は、勝利に飢え渇く餓鬼。実際兄の人生は、負けて失敗して何も得られず、失うばかりで、仮に何かを獲得しても、それは失うまでの伏線でしかなかった。でもだからって――
「だからって幻想郷壊すことねぇだろ!」
「黙れ! 負け犬と石を投げられ、そのまま黙っていられるものか!!」
それはどこに向けた怨みなのだろうか? 形のない何かに吼え、明確な悪意を叫んで弾幕を張り続ける。誰をどう怨んでいるかさえも忘れ、ただただ衝動に身を任せ弾幕を撒き散らす。
やみくもに放つ攻撃は全方位に飛翔し、鳥居や灯篭を破壊していく。真次も防御で手一杯になり、被弾の衝撃で銃を手放してしまう。
「隙有りだァ! 兄弟ぃ!」
「っ――! 遠隔『タレットモード』!」
宣言と同時に、投げ出された銃器が空中に留まり、自動で敵への攻撃を開始する。挟まれる形で射撃を受けたが、それでも怨霊は止まらない。怯まずに荒々しく息を吐いて、迫りくる兄の顔。殺意に溢れた顔面が――赤いスカートによって吹っ飛ばされた。
「ぐっ!?」
「よくもまぁ、私を忘れてくれたわね!」
ドロップキックを顔面に決め、蹴った反動を利用して真次の隣に立つ。
「霊夢……助かった」
「しっかりしなさい!」
顔面を蹴られた真也が二人を睨み、痣のついた顔で獣のように咆えた。殴られた痛みに戦意を高め、復讐に憑かれた怪物が荒く息を吐く。
この異変の決着を狙うべく、二人の主人公がラスボスと対峙した。
7月23日 13:58
スペカ解説
増幅「濃縮還元の絶望」
怨霊たちの怨みをバリア状に展開し、ダメージを肩代わりするスペルカード。そのまま殴ったり弾幕も放つことも可能。
遠隔「タレットモード」
銃器を手放し、空中で固定砲台にして、自動で照準、射撃するスペルカード。セントリーガンと言えば分かりやすいでしょうか




