STAGE 6-23 幻想郷防衛戦・2
7月23日 12:13
天子と付き人の衣玖が、弾幕と体術を組み合わせた戦い方で、千切っては投げ、投げ飛ばした後は弾幕で追い打ち。時に天子が赤い剣で切り払い、時に衣玖が電撃で焼き払う。阿吽の呼吸で立ちふさがる二人に、怨霊が一時たじろいだが――
「私が相手です」
西洋鎧の怨霊が剣を掲げ、二人と対峙する。「無銘」と呼ばれたその亡霊が、天子の剣と切り結んだ。
「つ!」
片刃の剣を鋭く振るい、刃と刃が火花を散らす。天人の力と拮抗する怨霊に、背後から衣玖が電撃を飛ばす。漆黒の騎士が、片足を軸にくるりと回り、反撃で弾幕を打ち込んだ。
隙有りと天子が切り込むも、剣を逆手に握り直して受け流す。二人の連携攻撃を、一人で捌きつつ反撃も忘れない。
((強い!))
足止めされた二人を、怨霊たちが通過していく。
その頃、側面の森も抜ける怨霊が増えていた。
「……邪魔だ」
「ち! またボウガンだ! 隠れろ!!」
黒衣の吸血鬼ハンター『銀杭』が、木々から銀の矢を放つ。
闇と影の死角から、放たれる弾丸に警戒を強める。動きを制限され、その隙に駆け上る怨霊の数が徐々に増えていく。
雲山と一輪のコンビがなぎ倒すが、少しずつ敵の処理が遅れてしまう。押される戦線に焦った声を上げた。
「誰か! 援護出来る!?」
「俺が行く!」
上空を他の人々に任せ、真次が地上に降りてトリガーを引く。
彼は状況に応じて、地上と上空で戦っていた。
「ありがと! けど無茶しないでよ?」
「まだまだ行けるぜ」
彼女に言われるまでもない。切り札を当てるため、体力を温存しておかなければ。途中の対処を丸投げはしないが、全力を使い切らないようにせねば。ペース配分を間違えないよう、真次はほどほどに戦う。
「上空の弾幕薄いよ! 撃って撃って!!」
「焔星『フィクストスター』!」
「奇跡『白昼の客星』!」
彼が抜けた穴を、お空と早苗のスペルカードが埋めようとする。核融合と星の輝きの弾幕が広がって、亡者の壁を押し返す寸前のところで――
「歪曲『真理否定・天動説』」
かつて聖女と呼ばれた怨霊の声が、星の弾幕を捻じ曲げ歪める。撃っても撃っても当たらない攻撃に、焦りを滲ませ天に向けて早苗が叫んだ。
「ニアさん!」
『援護します!』
通信機越しの声を、早苗に聞く余裕はない。緑髪の巫女への回答は、打ち下ろされる一筋の光。
あくまで「星にまつわる弾幕を歪める」スペルカードなのだろう。高高度レーザーを防げず、一発『火刑の聖女』の肩を掠め、墜落していった。
「やった!?」
「愚か者! 気を抜くでない!!」
他の怨霊が放った弾幕が早苗を狙うが、咄嗟に布都が皿を盾の代わりにした。
まだまだ敵は健在だ。一瞬の油断が命取りである。
「す、すいません! 助かりました!」
「貸しにしておくぞ!」
そのまま前衛後衛をスイッチ。布都、屠自古、妹紅の三人が怨霊の相手をする。
「……合わせる。好きにやれ」
「どうも」
屠自古と妹紅の血筋は、関係のある古い貴族と通じている。今回は不死鳥に道を譲り、道士の怨霊は背中を守った。
業火が空を焼き焦がし、蜃気楼に揺らめく大気を稲妻が走る。抜群の連携で敵を葬り去る二人に、布都も負けじと皿を投げ秘術を行使した。
破数は布都が下回り、炎と電撃の使い手に思わず聞いてしまう。
「お主ら……本当に今日が初対面か? 阿吽もびっくりの呼吸ぞ?」
「「初対面だ」」
声を発するタイミングも、どこか気だるい返答もそっくり。増々布都は声を上げた。
「息ぴったりではないか!」
「「偶然だ」」
「双子か? 双子なのか!?」
「「違うって言ってる」」
同じ調子で声を揃え、少々気にしたのか互いを見つめ合う。……首を動かす間も同一で、やはり双子を想起せずにいられない。
二の句を継ごうとした布都を――二人が手を伸ばし強引に引き上げる。猛然と高速弾が通過し、辛くも危機を逃れた。
「「双子はあいつだろ」」
弾丸の方角、遠目でも存在感を放つ昏い闇がある。
西本真次そっくりなのに――まるで似ていない怨霊の長が、着実に博麗神社へ距離を詰めて来ていた。
7月23日 12:28
スペカ解説
歪曲「真理否定・天動説」
元ネタはガリレオ・ガリレイの有名な宗教裁判。効果は『星』にまつわるスペルカードや、弾丸の軌道を捻じ曲げてしまう。何気に魔理沙と相性悪そう。




