表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/216

STAGE 0-18 最悪の目覚め

さーて、前回が長かったから、今回は短く感じるかも?

6月21日 10:03



 ……声が聞こえた。

 呆れた様な、驚いたような、そんな声色。

 だが……妹紅には間違いなく、その声に聞き覚えがあった。

 心臓が鼓動を早める。理由は知らないが、アイツがここにいるなんて――! あるいは、目が覚めるまでずっとここにいたのだろうか? だがそんなことはどうでもいい。


(早く! 早く起きて逃げないと……!)


 身体はだるく、瞼は重い。全身を内部から焼かれたという死に方は初めてだったし、被害が身体全体だったせいか、はたまたアイツの能力なのかは不明だが、いつも通りに全快になっている訳ではなさそうだった。


(……動いて……! 動け!!)


 泥沼から抜け出すように、ようやく妹紅の意識は覚醒しきった。

 世界が開け、見覚えのある天井が視界に入る……永遠亭の天井だ。


「……は?」


 妹紅は拍子抜けした。てっきりアイツがまだそばにいて、もう一度拷問じみた殺され方でもするのかと思ったからだ。だが、それはつかの間の安堵であったことを思い知らされる。


「あっ! 真次先生、妹紅さんが起きましたよ!」

「そうみたいだなウドンゲ」

「っ~!?」


 聞き間違えるはずがない。アイツの声だ。


「オイオイ、どうした? まだ目ぇ覚ましたばっかだろう。無理すんな」

「……!?」


 その男の姿は、白衣を着ていることを除いて、背丈、顔つき、声色、何もかもがこの前妹紅を焼いた奴と合致していた。だが、性格や喋り方がかなり異なる。しかし、とんでもない苦痛を味わされた妹紅としては、だからと言って油断も隙も見せたくなかった。


「お、お前……! お前……!!」

「……さっきからどうしたんだよ? ああ、目が覚めたばっかで意識が混濁してんのか? ウドンゲ! 永琳先生呼んできてくれ!」


 男がそういうと、素直にウドンゲは出て行った。いよいよ男と二人きりになる。……これで何かするつもりなのだろう。


「お前……どうして……」

「俺と……えっと、妹紅だっけか? は、初対面のはずなんだが……」


 ……あくまでも、白を切るつもりらしい。あれだけのことをしておいて、よくもまぁ、ぬけぬけとこうして出てこれたものだ。


「ふざけるな! それだけそっくりで、誤魔化すなんて無理が……」

「まぁ落ちつけよ。とりあえず永琳先生が来るから、言いたいことはその後で。な?」


 男はどうも、何もするつもりはないらしい。それどころか妹紅をなだめる始末だ。どういうことなのだろう?

 やがてここの主治医である永琳が現れ、男といくつか言葉を交わす。そして診察しながら、妹紅にも話しかけてきた。


「調子はどうかしら?」

「最悪な気分よ。目覚めにそいつがいたせいでね」

「なぁ、俺が何かしたのか?」

「まだ白を切るか。お前が私を燃やしたくせに!」


 永琳と男は、顔を見合わせる。


「……間違いないの?」

「ここまでそっくりで見間違える訳ないでしょ!? あんな強力な弾幕やスペカまで使ってきて!」

「いやちょっと待て。俺は数日前に幻想入りしたばっかで、空はなんとか飛べるが、スペルカードどころか、弾幕なんて撃てやしないぞ?」

「はぁ!?」


 完全に食い違う言い分に、妹紅はいらいらしてきた。しかし……何故だか、男が嘘をついているようにも見えない。


「どういうことなのよ……?」

「……話を整理するわ。あなたを襲ったのは、彼……真次で間違いないの? どれぐらいの時間に襲われた?」

「間違いない。時間帯は深夜だった」

「なら無理よ。彼が弾幕ゴッコを知ったのは、姫様の話によれば昨日のお昼。それより前に襲われている以上、彼は犯人じゃないわ。それに――」

「深夜は妖怪の時間なんだろ? なら、弾幕ゴッコの出来ない俺なんか、逆に妖怪に襲われてジ・エンドだ。他に特徴はなかったか?」


 どうやら、アイツに瓜二つなだけで、別人だったようだ。こうして話してみると、纏っている雰囲気がまるで違いすぎる。アイツは宵闇そのものが意思を持っているような、昏響きだったのに対し、この男は逆に明るく温かい感じかした。


「初めは、鎖を纏った狼だった」

「……! おい、そいつは――! 炎で攻撃してこなかったか!?」

「……そんな気もする」

「ゆかりんの言った通りか……永琳、悪い知らせだ。俺を襲ったヤツ、幻想郷に侵入しているらしい。妖怪が治らないって特性を聞いた時から、嫌な予感はしていたが……」


 男は渋面を作った。どうやら、妹紅を襲った犯人を知っているらしい。


「どういうことよ?」

「現代からこっちに移動するとき、俺たちもそれに襲われた。おかげで藍は重症だ。俺は能力のおかげかどうか知らんが、ほぼ無傷で済んだが……」


 ……完全に人違いだったようだ。

 にしても、あまりにも似過ぎている。まるで――双子か何かのようだ。


「アンタ、自分にそっくりな奴に心当たりはないか? 本当に……声から見た目、背丈までそっくりだ」


すると男は、意外な答えを出した。


「ある。が、あり得ん。そいつは七年前に現代で自殺してる」

「……そうか。悪いこと聞いたな」

「気にするな。そんなに仲良かった訳じゃねぇし」


 ニカッと笑って、陰りなく男は言う。

 そして、男は最後にこう付け加えた。


「それと、お前でもそいつでもアンタでもなく、俺のことは親しみを込めて、あんし……じゃなくて、真次先生と呼びなさい」

「あ、ああ……そう言えば私も名乗ってなかったわ。私は藤原妹紅。よろしく、真次先生」


 ようやく誤解も解け、妹紅は態度を軟化させる。

 なのに、なぜだろう。

 まだ心臓の鼓動は、早いままだ。


「真次先生……何言おうとしたんですか?」

「いや、外の世界のネタを言おうとしてな? まずついてこれないだろうと思ってやめた」


 カラカラと笑う真次。とそこに、新たな人物がその場に現れる。その人物とは――


「あら、目が覚めたの妹紅?」

「輝夜……!」


 彼女にとって、憎い相手、蓬莱山 輝夜がそこにいた。



6月21日 10:19


という訳で、無事にもこたん復活。そして輝夜とさっそくぶつける作者。次回はカオス回になるかもしれません。いや、予定では超絶カオス回用意してあるんですけどね~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ