STAGE 6-10 決戦の日時は
7月20日 09:11
紫のスキマが永遠亭と繋がったのは、翌日の朝だった。
重要な話と予想はしていたが、真次の帰還が日を跨ぐとは。ウドンゲがぷりぷりと頬を膨らませ、てゐは大げさに首を振り、輝夜もジト目で睨む。
唯一、神妙な顔で迎えたのは永琳だけだった。
「……どうでしたか?」
藍が「永琳と話した」事実から……彼女はほぼ、異変を把握している。言外に訴える月の医師と目を合わせ、紫たちと決めたことを伝えた。
「三日後の12時に、博麗神社で宴会がある。今日の夜か……遅くとも明日の朝には、幻想郷中に新聞がばら撒かれるはずだ」
「天狗の記者のですね?」
「そうだ。すべての記者が、一面トップ記事にして配布する」
月の頭脳は、意味合いを正しく理解した。
すなわち……この世界の命運を賭けた戦いは、7月23日の正午、博麗神社で火ぶたが切られる。藍が根回しを行っているから、この文面で各所は察しがつくだろう。
問題は主賓が来るかどうか。自然な形で真次に問う。
「貴方の兄弟は来ますか?」
「絶対に来る。煽り文だけはすぐ浮かんだからな。まぁでも他の文がてんでダメで、原稿作りに徹夜する羽目になっちった」
「……体調、整えておいてくださいよ?」
「あぁ。大事な時だからな……」
二人だけに通じる会話を続けていると、横からウドンゲに肘で脇腹を突かれた。「ぐふっ!?」と鈍い悲鳴をあげ、恨めし気に先輩を睨む。
「ちょ、もうちょい加減してくれよ……」
「……」
「あ、あの? ウドンゲパイセン?」
「…………何か言うことは?」
「いやでも今回は大した事じゃ……」
「言うことは?」
瞳に狂気の光を灯し、赤い眼光が彼を貫く。しぶしぶ真次は頭を下げた。
「む、無断外泊して、すいませんでした……」
「よろしい」
「……お前は俺のお母さんかよ」
「何か言いました?」
「いえ何も」
ヤブ蛇を避けるために、そそくさとその場から逃げ出そうとする真次。しかし誰かに肩を掴まれてしまう。
「オウフ」
「ちょっと真次。何か隠してるでしょ?」
姫様の手が襟首を捉え、華奢な身体と裏腹に力は強く逃げれない。あくまでこの場ではしらばっくれようと、そっぽを向いて逃げようとした。
「あ~……後で永琳に聞いてくれ」
「ふーん……」
瞳が据わる姫君。彼女は懐から、ディスクを読み込む携帯ゲーム機を二台取り出し、真次に渡した。
「○SPとは……また懐かしい物を……」
「勝負よ真次。負けたら洗いざらい吐いてもらうわ!」
「弾幕ゴッコじゃないだけ有情か……で、何のゲームで?」
「勇なま3Dの二人プレイしましょ」
「有名ゲームのドマイナー突いてきたな!?」
ちらと永琳の顔を覗く。苦笑の黙認を受け止めた彼は、しばらく輝夜と二人で遊びつつ、『真実』を打ち明ける。重くのしかかる空気と事実を、軽快な電子音が和らげてくれる気がした。
7月20日 09:30
ウドンゲ「……長い間出てきませんね。もう二時間経ちましたよ?」
永琳「致し方無しよ。貴方たちには私から話すわ。彼ひとりに語らせるのはね……」
ウドンゲ「え、師匠もう分かって……?」
永琳「先生の治療の是非について、方針を変えたでしょう? あの時に察してたの」
てゐ「流石月の頭脳ウサ」
永琳「隠してことは謝るわ。でも迂闊に広められない類のものだったから……」
輝夜「世界に!」
真次「平和は!」
二人「「訪れなァい!」」
てゐ「あはははははっ! 二人ともガッツリ遊んでるウサ~~~っ!」
永琳「………………ハァ」
ウドンゲ「真次先生……ちゃんと話してくれましたよね?」
永琳「大丈夫なハズよ……たぶん」




