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STAGE 5-14 抗う者たち

7月17日 19:19



 さとりの放った言葉は、強烈なショックを伴って響いた。

 真田幸村の襲撃は異変の一部だろう。にもかかわらず、協力関係にないとは如何なる背景だろうか? 心当たりのある真次がおずおずと口にする。


「自分の意志で、幻想郷と敵対していないから……か?」

「は? 何言ってんの?」


 棘のある言葉が彼に投げかけられる。住処を奪われた地底の妖怪には、理解不能な発言だ。彼ら彼女らにしてみれば、地底の占拠は敵対行為としか思えない。

 また余計なことをしてしまったろうか? 内省する青年をさとりがフォローする。


「それは要素の一つですね」

「……どういうこと?」

「彼の言う『幻想郷』は……地底に限った話ではない。幻想郷の全土……あるいはこの世界そのものの意味合いです。真次さん。異変で遭遇した怨霊たちの言動を想起してもらえますか? ぼんやりと想像のまま口にしてみて下さい」


 さとりが何を考えているのかは不明だが、とりあえず指示通りに呟いてみる。


「えーと…………幻想郷が憎いだの、王がどうだの言ってたような……」


 真次が喋り終えた直後、少女はくるりと周辺に視線を向けて問う。


「――今度は地底の皆さんに質問します。地底を襲った怨霊たちが、今彼が言ったような言動をしていましたか?」


 反応はまちまちである。「いちいち覚えていない」とか、「聞いたことがない」とか、まとまりのない妖怪らしくバラバラの返答だ。けれど誰もが「聞き覚えがる」とは言わない。「誰も聞いていない……そうですね?」と少女が念押しすると、妖怪たちは曖昧に頷きを返す。


「当然ですよね。だって『彼』以外の怨霊は、元々地底暮らしの怨霊ですから。持っているのは個々の怨みのみ。幻想郷云々なんて考えたこともないでしょう」

「……間違いないにゃー」


 これは顔見知りのお燐に対し、攻撃を躊躇ったことから明らかだ。彼等はあくまで真田幸村の覇気に当てられただけである。


「アイツも……幸村もつまらないこと言ってないね。徳川がどうとか呻いてたが……」

「生前の無念をぼやいているのでしょう。けれどやはり幻想郷への敵意や、自分より上の人物への発言はしていません」


 一応「太閤殿下」と口にする場面はあるが、それはかつての主君「豊臣秀頼」の事だ。今は誰にも仕えていない。それに『思考を誘導されている』ことを考えれば、異変の首謀者との関係は想像できた。


「……洗脳まがいの誘導をしないと、黒幕は幸村を配下にできなかった?」

「間違いないでしょう。でなければ村正を使いません」

「それでも抗うなんて……精神タフ過ぎでしょ、妬ましいわ」


 橋姫の囁きに、さとりは何を想起したのだろうか? 真次の方をちらりと見てから、幸村の逸話の一つを紹介した。


「史実でも家康が、あの手この手で寝返りを持ちかけるのですが……『日本の半分を渡すと言われても、主君への恩義には背けない』と突っぱねたそうです」

「か、か、カッコイイ!」

「ははは……わたしだったら迷うかも」

「すごい漢にゃ~」


 忠義を貫いた武人の在り様に、妖怪たちは感嘆の声を上げる。しかし真次だけは、全く別の事を思い浮かべていた。


「なぁさとりん。それって某RPGの「世界の半分をやろう!」の元ネタ?」

「参考にしたと噂があります。脳死して「はい」を選んではいけない(戒め)」

「俺はボクタイでやらかしました……」


 よくある悪党側からの誘惑だが、史実の『彼』は見事に蹴っている。何よりゲームの主人公と異なり、状況は敗色濃厚だった。それでも忠を貫く姿勢は、見事と言わざるを得ない。


「以上のことから、『彼』は黒幕との協力関係にはありません。ですが無関係でもない。何らかの繋がりがあったのでしょう。その上で要求か誘惑かは不明ですが、『彼』は蹴った。だから『妖刀村正』で誘導している」

「……あれ? でもそれなら……『村正』を弾けば正気に戻せる?」

「その通り」


 一連の話を聞いて、真次の目が細く光った。もし真田幸村を正気に戻せれば――聞き出せるかもしれない。

 今回の異変が何なのか。黒幕たちの目的は何か。そして――どうしてそんなに、幻想郷を怨むのかを。

 古明地さとりが、この場の全員に目を配らせる。真次の内面までくみ取って、地霊殿の主が静かに、力強く訴えた。


「『彼』を……真田幸村を怨念から解放しましょう。それで地底を取り戻すことが出来ます。何より……英雄を手駒にしてほくそ笑む、黒幕に一泡吹かせてやりたくありません?」

「……確かに」

「ある意味幸村も被害者だにゃー」

「妬ましいわ。英雄過ぎて妬ましいわ!」

「で、具体的にどーするの?」


 黒谷ヤマメの問いに、さとりはやれやれと首を振った。


「そんなの決まってるじゃないですか。ね? 勇儀さん」

「……」


 長話に興味が持たなかったのか、それとも最初から腹を決めていたのか。鬼の四天王はゆっくりと腰を上げて宣言する。


「アイツは……真田幸村はアタシがる」


 全身に戦意を滾らせる姿は、怪力乱神そのもの。並々ならぬ力がオーラの様に漏れ出ている。味方であるはずなのに、頼もしいより恐ろしいと思えるほどの、圧倒的な力を大気に充満させていた。


「元より他に手はありません。ガチンコのタイマンで、彼の目を覚ましてやってください」

「ハッ! 言われるまでもないよ!」


 己の拳を手のひらに叩き込み、快音を響かせる勇儀。各々の抱いた思いと、鬼の闘志が共振する。

 地底を取り戻すために。

 一人の英雄の目を覚ますために。

 身を焦がすほどの闘争のために。

 異変の核を知るために。

 内情はばらばらでも、この戦いに賭ける思いは本物だ。全員の心意気が一つになったのを確かめ、さとりが勇儀に檄を求める。

 鬼は、爛々と輝く瞳で高々と拳を掲げた。


「明日の朝……全部解放する! お前らアタシについてこい!!」

「「「「「応っ!!」」」」」「おーっ!」

 

 無意識の声もこだまして、洞穴内に熱気が反響する。――地底解放の時は近い。



7月17日 19:41

本当はこの回で、こいしをもっと出したかった……せっかく5-14だったのに


追記:二回同じ文章繰り返してますね……カットしておきます

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