STAGE 0-14 空飛ぶ医者
今回は少し早めに投稿出来ましたが……これから忙しくなるので、遅くなるかもしれません。
6月20日 15:57
真次は、こちらの世界に来てから驚愕しっぱなしだった。
妖怪はまだ受け入れることができた。なぜなら、彼は幽霊騒動に立ち会ったことがあったから。だが、そこから派生して摩訶不思議パワーだの、自身に能力があることなどは全くの予想外で、正直精神に堪えて来ていた。
しかし――
「これが……弾幕ゴッコ……すげぇな」
今までの疲労感を吹き飛ばすほどの衝撃であった。
真剣な闘争でありながら、その戦いには花がある。
こんな事を日常的に行っている世界……そしてこれから、自分は「これ」を習得することになる訳だ。
「どう真次? 弾幕ゴッコを見た感想は?」
「一言でいうなら……やべぇ、だな。色んな意味で」
それは輝夜たちへの称賛であり、同時に畏怖の言葉でもある、現在の自分は、少なくてもあんなことはできない……はずだ。
「もっといい感想はないの?」
「言葉にできねぇよ……こんなの……」
未だに衝撃で身体が震えている。恐怖も多少混じっているが、それ以上に感動が身体を突き抜けていた。
「俺も……あんな風に戦えるのか?」
「うーん。先生は能力持ちですし、素質はあると思いますよ」
「さっきやったゲームの身体を使う版だと思えばいいわ」
「あれは二次元、こっちは三次元だけどな」
それに、画面全体を見渡せるゲームと異なり、自身の感覚で弾幕を認識しなければならない。姫様はこう言っているものの、全くの別物と考えた方がよさそうである。
「まーとりあえず、俺はどこから始めればいいんだ?」
「空を飛ぶことからでしょうか? 日常生活にも便利ですし」
「そうね。弾幕撃つのは後回しでいいんじゃない?」
真次はなるほどと頷いた。確かに空を飛べれば、色々と便利そうではある。
「まず自分の思った通りに動けないと、話にならないものね。それに、説明したと思うけど、逃げまわるしかないのとかあるから、空中での動きを覚えた方がいいわ。地上を逃げまわるだけで戦う奴もいなくはないけど、そんなのは異端よ?」
前半の話は輝夜が弾幕ゴッコの説明にあった「耐久スペル」のことだろう。相手が何らかの方法で姿を消すなりして、一方的に攻撃してくるスペルカードだ。攻撃して相手を倒すことができなくなる以上、回避するしかない。
……後半の話は信じられなかった。あの弾幕の雨を、地上で避けきることなどできるのだろうか? 輝夜が異端というのも納得がいった。
「……で、どうやって飛ぶんだ?」
「簡単よ、飛んでいる自分をイメージして、力を放出するの。才能があれば、それで飛べるわ」
「そんな大雑把でいいのか? ふーむ……」
あまりにざっくらばんとした説明に、真次は逆に困ってしまった。空を飛ぶというのは、どうにも感覚によるものが大きいらしい。しかしやってみなければ、いつまでたっても飛べないままだ。
「姫様、ちょっと適当すぎません?」
「でも実際私はそれで飛べたわよ?」
ウドンゲと輝夜が何か話しているが、イメージを膨らませている最中の真次の耳には届かなかった。
「空を飛ぶねぇ……やっぱり羽生やして飛ぶっつーより……」
想像する。
自身が、空を飛ぶ姿を。それは、金属の噴出口から熱を放出し――空を自在に飛行できる装置。『ブースター』をイメージ。
全体からゆっくり点火、バランスを崩さないように慎重に調節する。すると――身体が地面から浮きあがってきたではないか。
「お……おおおおおお!? すっげぇ! マジで飛んでるよ俺!!」
地面から僅かではあるが、確かに真次の身体は飛んでいる。彼は今、非常に感激していた。
「ね? 飛べたでしょ?」
「よく飛べましたね……」
ドヤ顔の輝夜に、感心するウドンゲ。そして飛び回れてご機嫌の真次。
調子に乗った彼は、そのまま辺りを派手に飛び回った。
「すげぇすげぇ! こりゃあスゲェぞ!! 幻想郷万歳!! ……あ? なんだありゃ」
そうして飛びまわっている内に……真次は妙なものを見つけた。
竹林の一部が、不自然に焦げている。妙に思った青年は二人を呼び、その場所の調査へと向かうのであった。
6月20日 16:11
という訳で、真次君は飛べるようになりました。まだ弾幕は撃てませんが、彼の習得の早さならすぐでしょう。問題はスペルカードなんだよなぁ……どんなのにするか、決めかねてます。