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STAGE 4-23 渡る先で待つは試練

今回は……本来の予定を変更した形で話を進めます!

 7月13日 15:39



 三途の川を渡りながら、三人はいくつかの言葉を交わした。

 船旅は長く、無言のまま過ごすのは面白くない。渡し手の女性――小町と名乗った――が主に話題を振り、真次が答え、時折閻魔様が口を挟むような形だった。


「幻想郷はどうだい? 現世と比べて」

「んー……やっぱ自然が豊かだよな。ちょっと上手く言えないんだけどよ、公園の植物とかって、人間側の都合が見え隠れしてるっつーか……」

「科学発展の弊害ですか?」

「うーん……それとも違う気がする。木の生え方とか配置とか、人間が設計してて……こう、整然としすぎてるんだよ、あっちの自然は。比べてこっちは……野性的?」

「……現代人特有の感想ですね」

「すまねぇ、にわかモンの意見だ。伝え方もヘタクソですまねぇ」

「責めてはいません。非常に興味深い視点と思います」


 聞くところによると、彼女は幻想郷の閻魔らしい。現世は現世の閻魔がいるようで、担当が違うようだ。


「三途の川周辺は、さほど違いはないはずさ」

「あ……この世とあの世の境界は、地球のどこでも川だもんな。アメリカ……海を渡った別の国でも同じだった。ただ、アメリカやヨーロッパでの渡し手は、おっかない鬼が担当してるって聞いたが」

「人手不足の時期でもあったのかねぇ?」


 ぼんやりした会話に、閻魔様が真面目に答えた。


「親より先に死んだ子供たち。彼らの刑罰で石積みがありますが……それを崩す鬼が、代わりに渡し手を担当していると聞いたことがあります。外国では別なのですよ」

「へー……石積みの無い地域もあるんですねぇ……」

「俺としては、ここの石積みの光景は異様だったがな……」


 三途の川の岸辺、賽の河原で、まるで先鋭的な芸術作品の如き石の塔が、いくつも並んでる光景に真次は唖然としたものだ。しかもその発想は、あながち間違いでもなかったから驚きも二倍である。


「ありゃ? 現代暮らしでも石積みは知ってるのかい? 先生」

「人の命に関わってると、考えずにはいられない事だろう? しかしまぁ……いいだしっぺは誰だ?」

「あの石積みコンテストの主導者は、水子の霊と聞いています」

「……生まれてくる前に、死んじまった子達か」


 神妙な顔の彼に、少女は小さく納得した。


「……やはり、現代でもいるんですね」

「流石に、そういう子たちをゼロには出来てない。でもまぁ……悲しい事だけどよ、みんなみんな塞ぎ込んじまうより、ああやって子供らしくはしゃいでくれた方が……いいのかもしれないな」


 医者の彼はひどく遠い目で、岸辺を眺めている。――救えなかった誰かを、探しているのだろうか。

 渡し手の死神が、漕ぐのを速める。ここには、彼の知る誰かはいないはずだから。彼の徒労を減らすために、死神は船を進め――対岸へとたどり着く。


「あいよっと。無事着いたね」

「では、私は浄瑠璃の鏡を取ってきます。それまでの間……彼女に稽古をつけてもらうと良いでしょう」


 彼女? 一体誰の事なのだろうか? 船頭の死神とは思えず、真次が辺りを見渡す中、閻魔が口に指を入れて――高く通る音域の、口笛が響かせた。

 程なくして、空飛ぶ何かが寄ってくる。恐らく人外であろう少女が、『映姫様』と恭しく頭を下げた。

 何事かを閻魔様が耳打ちたかと思えば、何の説明もなしに岸辺の奥へと歩いていく。ついていこうとした真次を、少女の手が遮り、彼にささやいた。


「映姫様の言葉を伝えます。『まだ真次あなたを信用しきれない。あなたの行いはこの場で見分します。それまでの間久侘歌は、彼が異変に立ち向かえるか、実力を測ってください』と」

「……つまり、まずは嬢ちゃんに勝って見せろと」

「えぇ。その上で映姫様が、簡略的にあなたが白か黒かを判定します。全て通れば、あなたを旧地獄へ送り出しましょう」


 既に弾幕戦の構えを取る彼女に、真次も二丁の銃器を抜く。

 選択の余地はない。旧地獄に往くための戦いが、あの世側の岸辺で始まった。



7月13日 16:03

……すいません、実は作者、純狐が出た作品以降ちょっと東方シリーズから離れてて……まさか今真次君がいる場所が、最新作の近辺とは思っておりませんでした。なので急遽挿入した形でございます。使える状況は使っていくスタイル!

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