STAGE 4-2 呪いの猛威
7月12日 12:31
軽く怒られてしまった真次だが、彼は昼食の用意をしていた。永遠亭が忙しいのを見て、手早く食べれるおにぎりを振る舞ったのである。軽く冷ました緑茶もセットで、つかの間の休息の時に、皆の疲労が溶けていく。
「いやーちょっと攻めた味付けだったが、口に合ってよかったぜ」
「びっくりしたわよ……焼きおにぎりの上にチーズなんて……」
「でも意外と……というより結構おいしかったですよ」
「だから余計腹立つのよ!」
「えぇ……」
輝夜に理不尽な怒られ方をしてしまった真次。がっくりと大げさに肩を落としているが、マズイと言われるよりはずっとマシだ。休憩がてら、真次が妖怪の山に出ている間、何か変わったことがないか聞いてみると、ウドンゲの目つきが据わった。
突然の変化に戸惑っていると、永琳がゆっくりとこちらを向いて話し始めた。
「実は、そのことについて話したかったんです」
「何かあったのか?」
「先生。私と初めて人里に行った時、退治屋の人に絡まれたの覚えていますか?」
……覚えている。
この前人里で、はみ出し者にされたかけた子供の父親は、あの時真次に絡んできた退治屋だ。より正確には、絡まれたのは真次ではなくアリスだったが……彼が首を突っ込んだ。
その後、黒い炎を身体から噴き出しながら、その退治屋は服だけ残して消えてしまったと記憶している。
「退治屋さんに仲間がいましたよね? 人里でも対抗したり、色々と調べたりしているんですけど……真次先生が留守の間に、彼らがここに来たんです」
それもぼんやり覚えている。あの出来事に誰もが混乱していたが、収拾がついたところで、真次、ウドンゲ、アリスの下へわざわざ謝りに来ていた律義な退治屋だ。
「で、その退治屋たちがどうしたんだ?」
「はい……実は異変が始まってから、人里ではあの現象が何度か起こっているみたいです」
「子供たちが言ってたな。『黒い炎の病』って」
「はい。ですが、その正体は呪いで間違いありません。問題はその呪いがどんな効果なのかなんです」
青年は首を傾げる。黒い炎を上げて死ぬのが呪いの効果なのでは? ウドンゲに告げると、彼女も腕を組みながら答えた。
「私も専門外なので、はっきりしたことは言えません。でも退治屋さんたちはこう言ってたんです『これは殺める呪いではなく、同化する呪いに近い』だと」
「??? さっぱりわからん」
「えーと、つまり殺しているのではなく、人間を無理やり怨霊化して、自分たちと同化して取り込んでいるんじゃないか……と。吸収の方が近いかもしれません」
「マジかよ……それが本当なら、放置したらどんどん吸収して強くなっちまう」
今のでさえ抵抗するのがやっとなのに、成長されたら手が付けられなくなる。何度が直接戦い、被害を直視してきた真次には恐ろしく感じられた。
肩を震わせる真次へ、今度は永琳が畳みかける。
「そこで、永遠亭としては呪いの予防薬、あるいは発症の抑制剤を開発しています。ですが同時に、退治屋があることを依頼してきたのです」
「それは?」
「冥界に赴き、人の魂がちゃんと死後の世界に行けているのかどうかを調べてほしい……どこも異変で人手が足りていませんから、誰でもいいから助けてほしいのが本音なんでしょうね。ダメ元で頼み込んできたのですが……」
「わかった俺が行こう。医薬品は使えるが、作るのは専門外だからな……」
午前中、休んでいてほしいと彼に告げたのは、これが理由だろう。真次は外科医であって、薬剤師の知識は全くない。一応目を通してはいるが、素人が迂闊に手を出せない世界なのは、重々承知だった。
「それじゃあ荷造りしてくる。薬の方は頼んだぜ」
「はい。真次先生こそお気をつけて……」
微笑む永琳の顔に、先程過去を思い出した違和感と近い印象を覚える。
それを振り払うように、あるいは逃げるように、真次は荷物の整理を始めるのだった。
7月12日 12:49
現代では、冷凍の焼きおにぎりにとろけるチーズ乗せるだけで今回のおにぎりは再現できますよ。簡単に美味しくなるのでオススメ




