STAGE 4-0 稀代の刀鍛冶
やーっと四章突入です……筆が遅くてすまぬ……
さて、妖怪の山は灰色として……仙人の領域と、命連寺はシロだったか。
地底は確か、嫌われ者の住処になっていたな。重要物が配置されている可能性は低い。となると……『紅蓮の戦神』を差し向けるのが最適か。何せ自我を保ったまま支配は出来なかった。寝返り交渉にも屈さなかった経歴のある英雄故、致し方なし。精々暴れ回ってくれることを期待しよう。
……では『稀代の刀鍛冶』は冥界方面へ赴くと良い。あの場所には八雲 紫 の友人が住んでいるそうだ。痛めつけるのも一興だろうが、君を指定したのには理由がある。『稀代の刀鍛冶』よ、どう復讐するべきか迷いがあるな?
いやすまない。こだわりを捨てきれないと言うべきか。だがよく分かるぞ? 復讐はできるだけ、恨みをぶつけて愉しい相手にするものだ。下手に発散して、真に怨む相手への圧が減っては本末転倒だからなぁ……そんな君に朗報だ。
冥界ならば、この幻想郷で死んだ人間の鬼籍……すなわち、誰がどう死んだかの履歴がある。君が復讐をもくろむ一族の事情を考えれば、隠し子の血筋が幻想郷に来ていても、不思議はあるまい。
怨霊王の言葉を聞いて、何も言葉を発さなかった『妖刀使い』の怨霊が、鋭利に微笑む。彼女は笑みを深くしたまま、一本の刀を差しだした。
「『紅蓮の戦神』へお使い下さい。彼には私達一族の刀を用いた話もあります。これを持たせれば盤石でしょう」
「ありがたい申し出だが、良いのかね? 君の憎悪の根源は、自分たちの傑作が災いの品とされたこと。『レジェンダリーアーセナル』を切った時、君らの刀を構築しなかったのは、気を使ったつもりなのだが」
以前、紅魔館で用いたスペルカードの一つは、様々な伝説級の装具を使う物だった。怨霊の彼らは聖なる武具より、呪われた武具の再現に適している。そして『稀代の刀鍛冶』の刀は、凄まじい適正があったのだ。
「構いませんよ。『紅蓮の戦神』は唯一、怨霊として我々の下にやってきながら、八雲に味方した裏切者。暴れるついでに、その名を穢してしまえばよいのです」
「そうか……本当に惜しいな。君と『紅蓮』は怨む相手も似通っていた。それだけに残念だが、君の意見も最もだ。ありがたく使わせてもらうとしよう」
「して、王よ。あなたはどうなさるおつもりか?」
『刀鍛冶』の言葉に、真也は悩まし気に顎に手を添えて答える。
「適当に妖怪を襲い、尋問を行う予定だ。目的の情報を持っているかは、正直望み薄だがな」
「要所への襲撃をやめるのですか?」
「本音を言えば仕掛けたいがね……上空からニアが私の動向を監視してくる可能性が高い。あまり派手に動こうにも、事前に対策されてしまうだろう。ならばいっそ、私は囮になった方が我々全体としては益となる」
「ふふふ……王自らが囮役などとは、誰も想像できますまい」
「そういうことだ。八雲側はいつでも壊せるが、もう一つの結界の起点が未だに不明。発見次第、総力を以て破壊する。その際は強制的に呼び戻すこととなるだろう。個人的な復讐を成したいならば、早めに終わらせることだ。これは同朋諸君全員への通達である」
ぞわりと、怨霊たちが踊り出る。刻限があると示された彼らは、各々の無念と向き合い、誰にどうぶつけるかを真剣に悩む者もいた。
「倒される事は恐れずとも良い。八雲の力で一つのなった我々は、いずれ私の下へと還ってくる。それが例え――英雄級の人物でも」
倒されたはずの『英知の牧師』と『火刑の聖女』の魂が、真也の一部で保管されている。まだ目を覚ましてはいないが、徐々に再生しつつあった。
「彼らは強靭で固有の精神構造をしている。そのため自己がはっきりとしているのだが、同時に再生も遅い。英霊でなければ二日とかからず完全復活できるのだがな」
「仮に私が打ち倒され、眠りについたら……場合によっては滅びの瞬間に立ち会えないのですか?」
「安心したまえ。決戦の時は必ず叩き起こしてやる。誰一人として仲間はずれにはしないさ……幻想郷を終わらせる、その最後の戦いの時にはな。何も不安に思わずに……憎悪に殉じるがいい」
『稀代の刀鍛冶』が深々と一礼し、他の怨霊たちも活動を再開する。
全ての配下が立ち去った後、何故か真也は、憂いを帯びた顔つきをしていた。
一区切りってことで色々再認してきたんですが、並列投稿や休んでいた時期があったとはいえ、初投稿から7年以上立ってますね……付き合ってくれる読者様には感謝でございます。完結させなきゃ(使命感)




