表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/216

STAGE 3-34 怨念は深く逸話を染めて

戦闘パートの時間だあああああ!

7月9日 14:36



 真次と布都が弟子たちの応対に追われてた頃、神子と屠自古も苦戦を強いられていた。

 リーダー格であろう女は西洋甲冑を纏い、二人を見つけると両目を爛々と輝かせ、猛禽の如く飛びかかった。

 細身の剣で心臓をついばもうと放たれた刺突を、神子は紙一重で避ける。大きく飛び込み無防備な背中へ弾幕を発射するも、怨霊はそのままの勢いで通り過ぎ、光弾が中空へ流れていった。


「殺す……! 殺してやる! お前が……お前たちのような奴等は……消えろぉっ!!」


 神子の能力で察するまでもない。彼女の欲は復讐と破壊のみ。和解の余地は元よりなさそうだ。彼女と同族である屠自古が叫ぶ。


「我々の領域に土足で踏み込んでおいて……よくもまぁそんな口が利けるものだな!」


 バリバリと大気を震わせながら、屠自古の雷撃が怨霊へ飛んでゆく。距離を取るかと思いきや、先程のようにその女は飛び込んできた。雷を模した軌道を取る弾幕を、曲がる前の段階で避けると、悪霊が屠自古の眼前で愉悦を浮かべ――


「屠自古!」


 強引に腕を引かれ、自己の意思とは別の挙動をとった身体が危険を脱する。太子様が救ってくれた。胸の内を熱くしながらも、己の迂闊さを屠自古は恥じる。汚名を返上すべく、今度は手前から細かく曲がる雷光を、弾幕として敵対者に殺到させた。

 危険を悟り距離を取る怨霊。適切な対応だが、この動きには神子も屠自古も強い違和感を覚えた。


(おかしい。どうしてここまで弾幕戦に慣れている!?)


 命連寺を襲った相手ならば、手慣れな事は疑いようがない。だが初見の攻撃に完璧な対応をするには、何度も戦闘経験をしなければ……否、経験を積んでても難しいはずなのだ。言葉を発さず、二人は意思を通わせる。


 ――太子様、この輩は!

 ――ええ、恐らく私の能力に近い……少なくても何かを察知できている!


 弾幕の間を埋めるように神子が追撃。同郷故の巧みな連携は、幻想郷の実力者たちが見ても舌を巻く領域であった。圧力を増した猛攻は甲冑女に掠めるが、にもかかわらず有効打はない。ならば――道士二人が挟み込む位置取りに動いた瞬間、女の唇がスペルカードを紡ぎ出した。


「背信『凶行の追従者・ジル』」 


 背面を庇える位置に、別の西洋甲冑の男が現れる。女は神子へ、男は屠自古へ突撃してきた。

 亡者の眼差しが屠自古を射竦める。怨念より狂気に呑まれたその顔は、既に人でなくなった彼女でさえ悍ましく、怯んだその一瞬を隙ありと、男の両刃剣が振り下ろされた。剣圧が頬を撫で、刀身に映った屠自古の顔には冷や汗が滲む。

 だが同時に、彼女は好機と確信した。金属鎧は電気を良く通す。近距離の間合いでさらに踏み込み、屠自古は男へ掌底と共に雷を叩きこんだ!

 オオオオオオオオオオッ!!!

 並みの相手なら消し炭にできる威力の電撃を受け、全身を痙攣させ男がのたうつ。膝をつき剣を支えにぐったりとする相手へ、追撃の構えを取ると頭上から雷撃が降り注いだ。鋼鉄の刃は雷を誘引し、まっすぐ男へ伸び突き刺さる。二度目の被弾に悲鳴はなく、五体を投げ出して倒れ、その戦士は息絶えた。

 ようやくこれで太子様と挟み撃ちにできる。意識を怨霊へ向けた途端、その女は二枚目を宣言した。


呼符こぶ『救国の御旗の下に』」


 高々と軍旗を掲げ振るうたび、怨霊の軍勢が女の背からやって来る。男も顔負けの力強さで旗をはためかせ、鬼気とした表情の下へ嬉々として馳せ参じる亡者たち。怨霊特有の悪意に満ちた彼らを指揮する女は、まさしく魔女であった。


「神子様――!」


 わらわらと湧いて出てくる群体に阻まれ、神子が孤立させられてしまう。集団の背後で弾幕の光が激しさを増し、あの女と太子様の戦いは佳境に入ったと確信した。合流しなければならないが、眼前の有象無象は屠自古を阻むために呼ばれたのだろう。悪鬼たちは何度も雷に焼かれながら、倒れた仲間を踏み越えて迫って来る。しかし彼女は立ち止まるつもりはない。屠自古もまた鬼の形相で、壁となった軍隊の突破を目指した……



7月9日 14:47

戦闘開始後は、あまり正体を隠さない方向性で行きます。(この人物については、名前の時点で察してる人がいましたが……)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ