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第2話 境界

昨日の続きです。

どうぞ^^

扉の中は光に満たされていた・・・。

っというか、地獄が暗すぎたせいで目が慣れていないのかもしれない。


扉の中に入ると、またすぐに別の扉があった。

そして、そこを抜けると青年と同じような格好をした女性が立っていた。


「あなたが、赤羽龍也さんね。」


「そうなんだけどさぁ、さっきから全然状況が把握できてないから説明してくれない?まず、あんた達は誰だ?」


「随分な口調ですね・・・。まぁ、いいでしょう。1から説明しましょう。」


そういって、どこから現れたかわからない椅子に青年と女性は腰掛け、俺にも座るように促した。

それに、素直に応じて女性が話し出すのを待った。


「まず、私の名前はミカエルと申します。大抵は、大天使ミカエルと言われますね。天界の長を務めています。こちらの青年はライコという、私の補佐をしてくれている天使です。」


ミカエルがそういうと先ほどのライコという青年が一礼してきた。


「天使っていうのは神とは違うのか?」


「神という存在は厳密には存在しないといってもいいでしょう。っとういうより、存在を認識することは不可能な存在です。そして、実際に人間界に干渉できるのは地獄の悪魔と天界の天使のみです。ですから、あなたたちのいう神とは天使であり、悪魔であるのです。」


「なるほどな…んで、なんでその天使の中の長である、あんたが直接俺なんかに会いに来たんだ??」


「それは、ある天使が禁忌を犯したせいであなたの人生が大きく変わってしまったので、その説明と謝罪をするためにあなたをここに呼びました。」

そういいながら申し訳なさそうな表情をした。


「禁忌?人生?」


「はい。禁忌とは字の如く、天界で禁じられていることです。今回はそれを破ったものがいました。名をオーランといいます。その天使は人間界に住む一人の女の子に好意を抱いておりました。ですが、その子の命は若いうちに散ってしまうはずでした。オーランはそれを受け入れることが出来ず、その子の人生を大きく変えてしまったのです。」


「なんだ?それはいい話じゃないか。ってか、その話と俺の人生に何のつながりがあるんだ?」


「そう思うのが普通ですね。では、もっとわかりやすく言いましょう。あんたが死ぬ直前に見たトラックの動きは覚えていますか?」


「あぁ。地獄で散々、嘘の映像見せられたが、実際の動きは鮮明に覚えているぞ。」


「嘘の映像??」

女性がちょっと首をかしげながら俺に聞いてきた。


「俺は、トラックが横断歩道手前で急に左に曲がったせいではねられたはずなのに、地獄では直接突っ込んでくる映像ばかり見せられたんだ。」


「…そういうことでしたか。」

女性が何かに納得した表情をした後、ライコに何やら耳打ちした。


「なにが、わかったんだ?」


「えぇ。大体のことがわかりましたが、まず先ほどの話の続きをしますね。」

後ろにいたライコが再び扉を作成し、どこかに言ってしまったが気に留めなかった。


「あぁ。ただ、後で何がわかったのかは聞かしてくれ。」

俺の言葉にうなずき。ミカエルは再び語り始めた。


「実は、オーランが助けたかったのはあなたの友人が救おうとした少女なのです。あの時、少女はかばおうとした少年とトラックに撥ねられ亡くなるはずでした。しかし、オーランはそうならないようにトラックを左にカーブさせることで、それを回避しました。そのため、あなたが巻き込まれ、少女とあなたの友人は助かったのです。」


「ちょっとまった。んじゃぁ、あの時にトラックが曲がったのはオーランとかいう天使の仕業なのか??」

もし、そうなら天使だろうと何だろうと殺してやろうと思った・・・。


「そうです。トラックは曲がったというより曲げられたのです。そのため、100km/h以上のスピードで走っていたのにも関わらず横転せずに曲がることが出来たのです。」


「そうか・・・。じゃあ、俺が死んだのはイレギュラーなことだったのか。」


「そうなりますね・・・。理解が早くて助かります。あっライコいかがでしたか?」

ミカエルが語ろうとした瞬間、扉の中からライコが現れた。


「ミカエル様の予想どおりでした。」


「何がだ?」

気になって俺が聞いたが、それには返事が無かった。


「仮説が、結論に変わったわ。あなたが死んだのは先ほどの理由で間違い無いけれど、地獄に言った理由は手違いだからよ。」


「はっ?いくら客観的に思えたといっても、想像を絶するような痛みで発狂しそうになったのが手違いだって!!」

地獄での日々を思い出しながらいつの間にか俺は叫んでいた。


「言葉が足りなかったわね。貴方が地獄で『死の眠り』から覚めたのは、本来あなたは地獄に行く人間じゃなかったからよ。」


「わかりやすく言え。」


「そうね。貴方がいたのは、貴方を撥ねたトラックの運転手が行くはずだった地獄なの。実は、トラックの運転手は少女を撥ねた後、その場から猛スピードで逃走したの。でもね、トラックのタイヤの隙間に少女の身体の一部が挟まっていたため、それが原因スリップして壁に突っ込んで運転手も死ぬはずだったのです。その上、その運転手は連続婦女暴行犯だったので…。」


「だから?」


「その運転手自体がひき逃げ以外にも多くのの罪を犯していたので、それを償うために地獄へ送られるはずだったのに、オーランのせいで生き残ってしまった。だから、貴方が代わりに地獄に落ちたの。『死の眠り』で見た映像に違和感はなかったかしら?地獄で見せられる映像は自分がやってしまった罪を何倍もの痛みと共に本人に体験させるものだから…。」


そこで、俺は気がついた。地獄で見せられていた映像と自分の見た映像での違和感。その正体はトラックの不自然な動きと、俺の視線だ。実際の俺は歩道を歩いていたが、地獄での映像の中の俺は横断歩道を渡ろういた。

つまり、俺の視線は少女のものだったのだ。トラックの運転手が殺したはずの少女の視線なのだ。


理解していくうちに腸が煮えくりかえりそうになってきた。


「つまり、あれか?俺は本当、天界に行くはずだったのに、地獄に落ちたってわけか?」


「えぇ…そういうことになるわね。だけど、あなたが地獄で『死の眠り』から目覚められたのは不幸中の幸いと言えるわね。」


そこで、カチンっときた。


「不幸中の幸いだと?あんなものを永遠と思えるくらい何百回いや何千回も見せられて、幸いだと!!??ふざけんなよ!俺の命返せよ。ってか、そのオーランって奴はどこだよ!!そいつこそ、地獄に落とせアホ!俺だって、まだやりたいことは色々あったのに、なんだよこの仕打ちは・・・・・」


俺が怒り狂うのを見て、ミカエルとライコ完全に俯いてしまった。

「…返す言葉が無いわ。いくら大天使とはいえ、貴方を元の世界に戻すことは出来ない。そもそも、貴方が死んでから地球上では、すでに13年ほど月日が経ってしまったし・・・。そして、オーランはすでに禁忌を犯したことで砂となり消えてしまったわ。」






しばらく、椅子に座ったまま誰も口を開かなかった。






「…んで。俺はこれからどうなる?できれば今度こそ天界で、少しは安らいだ生活をさせてくれ。。」


そこで、ライコとミカエルがさらに気まずそうな顔をした。

「実は…あなたは一度地獄に落ちたせいで天界には、住むことはおろか行くことすら出来ないの。。だから、本来ならこの話も天界ですれば良いのだけど、この境界と呼ばれる空間でしているの…。」



再び、沈黙。



「なら、また俺は地獄か…。心底腐ってんなこの世界は!!」


「…本当にすみません。貴方は今回の件で、完全な被害者なの。すべて私たち天界。いや、天使に責任があるのだから…。それなのにひどい仕打ちばかり受けさせてしまって…。でも地獄に行くことはないわ。償いになるかわからないけど、貴方に新たな生き方を用意したいの。」


「新たな生き方?」

選択肢は無いと思っていたのだが、他に選択肢があるようだ。あまり、期待はしていないが地獄よりはマシだろう。


「あなたが生きていたのとは別次元、異空間に存在する世界で生きてみない?」


「さっき、生き返らせるのは無理だとか言ってなかったか?」

ミカエルの言葉を思い出しながら言ってみる。


「地球にはね、しかし他の次元に貴方を飛ばすことは可能よ。ただし、戻ってくることはできないわ。どうかしら?」


少し考えてみるが、地獄よりはどう考えてもマシだろう。

「いい考えかもしれないが、その世界は一体どんな世界なんだ?」


「魔法や魔物などが存在する世界よ。地球と文化や生活様式は似ているところがあるようだが、微妙に異なっているわ。」


「ファンタジーだな…。」


「そうね。私たちも奇術という魔法を使うことができますが、その世界のものとは異なりますね。」

少し、ミカエルが微笑みながら答える。


「しかし、俺には魔法の才能なんてないからなぁ…。」


「わかりませんよ…。地球でも、魔法を行使することは可能ですが、誰も気づいていないだけですから。」


「なんだって!?」

そりゃ驚くさ、意外と身近に魔法が存在しているだから…。


「まぁ、その話は置いといて。ちょっと確認させてもらいます。」

ミカエルが音も無く近づいてきて俺の額に手を当てる。



「…これは…さすがに、予想外です…。」


「どうかしたのか?」


「貴方は、魔力は確かに持っています。しかし、性質が…。」


「何だって言うんだ?」


「『死の眠り』から覚めたことにより、地獄の魔法である邪法。すなわち地獄の業火を意味する、闇と炎属性が覚醒したようです。」


「そうか。闇と炎か。なんか、いいな!」

先ほどの沈み具合から一変して、ちょっとテンション上がってきた。これから、異世界に行くこと加え、自分の中にも魔法の才能があったのだから。


「そのようですね。これなら、貴方の真紅の瞳も説明が付きます。魔法については、向こうに着いてから学んでください。私たちの奇術は天使専用なので、貴方には使いこなせませんので。」


「そうか。わかった。だが、俺の瞳は茶色だぞ?真紅なんて人間としてありえないだろう。」


俺がそういうと、音も無くライコが俺に手鏡を渡してきた。

そこに写っていたのは自分の顔であって、自分の顔ではなかった。


「なんの冗談だこれは…。」

驚くのも無理は無い。

真紅の瞳に、髪は真っ黒。顔立ちは童顔から、少々大人びたものへと変わっていたのだから。


「『死の眠り』の影響なのでしょう。説明は付きませんが…。」


「そろそろ出発してはどうでしょうか?」

ライコの提案にうなずき

「そうね…」


「ちょっと待ってくれ!いくら異世界でも言葉も魔法も知らないんじゃやっていけないぞ!」

急に不安になってきた。


「わかっています。ですから私から贈り物を…」

そういいながらミカエルが俺の額に軽く口づけした。


「はい。おしまいです。貴方の身体能力を向上しておきました。そして、言語や文字も読めるようにしておきましたので困ることは無いと思います。」


「おぉ。ありがとうな。」


「最後に…。本当に申し訳ありませんでした。こんな形で完全に償えるとは思いませんが、新たな世界での生活を楽しんでいただければ、と思います。」

そういって、深く頭を下げた。


「もういいよ。確かに、地獄では発狂しかけたけど。途中で違和感にも気づけたし、昔からの憧れの異世界にいけるならそれだけでうれしいよ。」


「そういってもらえれば私たちも多少気が楽になります。では、お別れです。もう会うことは無いのが少々寂しいですが、人生を楽しんでください。」


「あぁ、そうするよ!じゃぁな!!」


「はい。さようなら」



その言葉とともに俺の意識は途切れた。



***

「行きましたね。」


「…にしても、闇と炎ですか…なかなか面白いものを持っているようですね。」


「面白いもの?そんなレベルじゃないわ。彼のは、地獄の業火そのものを吸収してしまったようなの…。」


「っといいますと?」


「私が彼の魔力や質を調べようとしたら、中から黒い炎が伸びてきて追い払われたわ…。相等危険な代物よ。」


「…異世界などに送ってよかったのですか??」

ちょっとあわてたライコが聞いてくる。


「まぁ、彼なら大丈夫でしょう。異世界で何をするのかが少々気になりますが…。」


「そうですね…」


そんなことを彼らが話していることなど知らずに俺の意識は深く深く沈んでいった。

いかがでしたか?


ご意見、ご感想等ありましたらよろしくお願いします!!

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