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第10話 友達

ついに、話数が2桁になりました。

これからもよろしくお願いします^^


それではどうぞ

パンパンッ。

王様が手を叩くと扉から先程のメイドさんが入ってきた。


ずっと外で待機していたのか疑問に思ったが、メイドさんは嫌な顔一つしていない…。


「コーヒーをもう1杯頼む」

王様がそう言うと、メイドさんは一礼して全員分のマグカップを回収した。


「とりあえず先程の話は内密にな。さて、まだ話さなくてはいけないことが山積みなのだが、まずは君の報酬の話をしよう」

先程とは違うメイドさんが、まだ湯気が出ているマグカップを配り始めた。


「報酬ですか?」


「うむ。今回、『ベルグ盗賊団』の壊滅に協力した事のな。まぁ、殆ど君の力なんだが、壊滅させたのは王国騎士団ということになっているのであまり大層な物はあげられないがな…」


「え…? 俺は、ただ復讐のために数多くの命を奪っただけですよ? それに、多大な被害も出てしまいましたし…」


「元々、『ベルグ盗賊団』のボスをはじめとする幹部には生死を問わずに懸賞金が掛けられている存在じゃ。あの村にいた者だけで4人。残りの2人はアジトにいたので、騎士団によって殺されたがな。それに、村人の死については先程、君が言ったように誰の責任でもない。

いや、わしの責任というべきなくらいだ。だから、君には報酬を受け取る権利があるのだ。」


そこで、王様はマグカップからコーヒーを飲んだ。

俺も同じように一口飲んだ。


「そうですか…。ただ、何処の誰かもわからない俺なんかにいいんですか?」


「王国に貢献するものには平等に恩恵を受け取る権利がある。それに…君については何も知らないが、わしも長年の経験から人を見る目はある。その経験から言えば君は悪い人間ではないと思う。いや確信している」


「王様にそんなことを言ってもらえるなんて光栄です」

そういいながら一礼する。


「王様では無い。ジェイドだ。それで、報酬として何か欲しいものなどあったら言ってみてくれないか?」


「失礼しました。ジェイド王。特に無いですね…。」


「無いとは欲の無い奴じゃな。うむ……時にタツヤよ。君は今後行く場所等あるか?」

少し驚いている様子だ。

だが、俺はジェイド王から初めて名前で呼ばれたことに何故か歯がゆい感じがしていた。


「行く場所ですか? 特に無いですね…。今まで、あまり勉学を習わなかったものですから地名等がさっぱりわからない上、荷物は村と共に焼き払われてしまいましたから…」

知識が無いことを強調するように言う。



「そうか……。では、報酬が思いつくまでは、しばらくの間は城で寝泊りするといい。その間に図書館で書物などで知識をつけることも出来るしな」


これは、予想外の提案だった。

確かに、寝泊りに困らないし、この世界の常識を得ることも出来る。


迷うことはなかった。

「本当ですか!?」


「あぁ。昨日まで使っていた客間を使うといい。城内の案内は…フィーナ頼めるか?」


「はい。父様。」

この部屋に来てから、一度もしゃべらなかった王女様が初めて口を開いた。


「うむ。では、早速タツヤに城内を案内してあげなさい。わしは公務に行かねばならぬからな…」

そういいながらジェイド王は立ち上がった。


「では、タツヤよ。良い1日を」

ジェイド王はそう言って奥の扉から部屋を出て行った。


取り残された俺達はしばし無言のままだった。


「フィーナ。いつまで黙っているつもり? 早くタツヤさんを案内して差し上げなさい」

その沈黙を破ったのはエリス王妃だった。


「はい…母様。た、タツヤさん、行きましぇ…行きますよ」

あれ?今、噛まなかった?


フィーナ王女は、噛んだことを無かったことにしたのか立ち上がり、扉の横まで移動した。

その途中で、王妃様が王女様に何やら耳打ちしていたが気にしないことにした。

せっかく案内してくれるのを断る理由も無いので、俺もそれに続いた。



ギィーという音と共に扉が開いた。

「さぁ、タツヤさん。こちらです」

そう言って、スタスタ歩き始めた。


慌てて俺もそれに続く。



***


娘と黒髪の青年が扉から出て行くのを見送ると近くの使用人に紅茶を持ってきてもらうように頼む。

私は紅茶のほうが好きなのだが、夫がコーヒーが好きなのでそれにあわせている。


「あの青年のおかげで、これから楽しくやっていけそうだわ」

先程耳打ちしたことを思い出し、ふふふっと笑いながら使用人の持ってきた紅茶を口にする。


「それにしても、あのフィーナが男の子とねぇ~」

娘であるのと同時にフィーナは王女だ。そのため、英才教育を小さいころから施している。

そのせいで友達も少なく、特に同い年くらいの男の子の知り合いはいないに等しかった。



学校に行く前に、少しでも男の子に慣れておいて欲しいものだと思う、私だった。

いずれ、王族としての役目を負うようになると青春らしいことは出来なくなるのだから…。

自分が経験してきた人生を振り返りながらそんなことを考える。



元々、私が王家直系の血筋だったが、国の決まりで女王は認められていない。

そのため、婿を迎えたのだ。


もちろん、あの人が嫌いなわけではない。

私の場合は思いが通じていたので、苦しむことなど無かったがフィーナはどうだろうか?

私やあの人が死んだ後、フィーナが心に決めた人がいない場合は大臣の息子などが自動的に迎えられる。


そうなって欲しくない。

それに、もっと色々な世界を見て欲しい。


そんなことを願いながら紅茶をすすった。



***


「ここがエントランスホールになります」

そういって王女様が案内してくれたのは昨日、自分が捕らえられそうになった場所だった。

ちなみに、そこに行くまで王女様は一切口を開かなかった。


「左右対称のエントランスホールには、4重の結界魔法が掛けてあります。これは、戦時の時に門を突破された際の非常線としても役に立ちます。わかりましたか?」

スラスラと話す様子を見て俺は素直に感心した。昨日は良く見ていなかったが、このエントランスホールには様々な装飾が施されている。


「はい。あの銅像はなんですか?」

そういって俺はペガサスにまたがりながら長槍を構える女性騎士の像だった。


「あれは…母様です」


「え? 王妃様?」

あんなお淑やかな人とこの像は似ても似つかない。

もっと近くで見ようと像によると、王女様もついてきた。


「この像は、フランベルジュ戦争で光の聖騎士と称えられた母をかたどった像です。母様はこの戦いで光の魔法を多用し、帝国の兵を次々に壊滅させていったのです」

どうやら、王妃様は相当強いようだ。



「他に何か質問はありゃましぇ…」

クスッ。


今回は、我慢できなかった。

どうやら舌を噛んでしまったようで涙目になっている。


クスッ。

そんな様子を見て、また笑ってしまった…。


「笑いましたね?」

まだ涙目のままだが、どうやら怒っているようだ。


「……」


「笑いましたよね?」

王者様の顔が、近づいてきた。


「…………はい」


「そうですか……。謝ってください!」


「へ?」

何を言われるのかビクビクしていたのだが…。


「だから、私の苦しむ姿を見て笑ったことを謝ってください」


「あ、はい。この度は大変失礼なことを王女様にしてしまいました。申し訳ありませんでした」

相手は、王族だ。不敬罪とかもこの世界にはあるのだろう。そう思いながら、しっかりと謝った。


「ち、違うでしょ!? と、友達なんだからそんな固い言葉じゃ無いでしょ?」


「友達?」


「え? 違うの…? さっき、母様が『あの男の子とはきっといい友達あるいはもっといい関係になれるはず』って言っていたから…」

さっき、耳打ちしたときだろうか? きっと王妃様にも何か考えがあるのだろう…。


「自分なんかが友達でいいんですか? 俺はただの平民ですよ?」


「そんなこと関係ないわ。貴方に治癒魔法をかけているときも目が覚めたらお話したいと思っていたのだし…」


「ん? 治癒魔法?」

王女様に会ったのは昨日が初めてじゃなかったのか?


「はい。貴方が魔力暴走を起こした際の身体や精神へのダメージを回復させる必用がありましたから…」

どうやら、俺の身体を治してくれたのは彼女のようだ。


「それは、知らなかった。改めてお礼を言わしてもらう。ありがとうございます」


「だから…貴方とは友達なんだからそんな畏まった口調はやめて下さい! 昨日はもっと砕けた言い方していたじゃないですか…」


「う~ん。昨日はただの女の子だと思っていたからな…。それに君も、もっと自然に話していたじゃないか」


すると、王女様は一瞬もじもじして

「君や王女じゃありません。フィーナです。私の名前はフィーナです! 昨日はニーナがいたけど今は2人きり…ゴニョゴニョ」



…なるほど。

この王女様は男との会話の経験が父親とかしかいないタイプなのか…。

完璧なお嬢様タイプだな。

しかし、この世界に来てはじめての同世代の女の子だ。

ニーナさんは口には出せないが、5つくらいは上だと思うし…。



「えっと………フィーナ?」


「はい!」

俺の言葉に満面の笑みで答える王女様。否。フィーナ


かわいい…。

かわいすぎる…。


口に出そうだったのを慌てて抑えたが、それほどかわいかった。

『悩殺スマイル』とかいうやつだろう。


「さっきは、笑ってすまなかった。…これでいいか?」


「はい! 友達って感じがします! えっと…タツヤさん」


だから…その笑顔とか恥らう姿がかわいすぎる。

しかもそれを際立たせるかのように、エントランスホールのステンドグラスから暖かな太陽の光が入ってくる。



「さて、次いきますよ。タツヤさん。」


「あ、あぁ」

さっきの暗さはどこえやら、どんどん進んでいく。


どうやら、先程までは男友達にどう接したらいいのかわからなかったようだ…。



エントランスホールから外に出た俺達は、何かの建物に向かって歩いていた。


「ここから先が訓練所になります。あそこの建物は兵舎となっていますので、今回は省きます。緑の屋根の建物が魔法訓練所、青の屋根の建物が武術訓練所となっています。タツヤさんも滞在中は自由に使っていただいて構いません。」

フィーナのこの丁寧な口調は、これが一番自然なものらしく本人には丁寧だという印象はないらしい。


「先程も言いましたが、闇魔法・セラフィストのことは内密にお願いします。あくまで、炎使いということにしてください。」

驚いたころに、王族も光魔法のほかに1属性使えるセラフィストだそうだ。

これを知っているのはごく一部とのことらしいが、先程教えてもらった。

ちなみに、フィーナは水と光だそうだ。


「あぁ。わかっている」


「ならいいです。では、次にいきます」

そういいながらテクテクと歩いていく。


途中に獅子の噴水などがあり、さすが王城だなと感心していた。


次に訪れたのは城から少しはなれたところにある図書館だった。

「ここが、王国図書館となります。王国中の本があるため、欲しい情報はたいてい手に入ります。しかし、中には危険なものもあるので回覧できないものもあります。」


「へぇ~」

と感心しながら図書館の様子を見て回る。


日本で使われている3倍くらいの高さの本棚を使用しており、とても上の棚のものが取れそうにない。


「あれってどうやって取るんだ?」

フィーナの希望により、俺の口調は敬語でもなんでもないただの友人に話す口調になっている。


「ここの図書館は、上にあればあるほど危険な書物となっているのでたいてい閲覧することができません。しかし、どうしても閲覧したい場合は将軍以上の位を持つもののサインが必要になります。まぁ、図書館の係員は全員風使いなので本をとるのは楽ですよ?」

そういって、上のほうから本をとる係員を指差した。


「なるほどなぁ…」

妙に納得した俺達は図書館を後にした。










それから王城をくまなく案内してもらい、気付いたら日が沈みかけていた。


「それでは、タツヤさん。今日は楽しかったです。では、また明日」

俺の客室まで案内してくれたフィーナに感謝し、部屋の中に入った。


そこに、メイドさんが食事を持ってきてくれたので直ぐに食べ始めた。

朝、あんなに食べたのに不思議と完食することができた。



シャワーを浴びに風呂場に行くと、着替えとタオルが置かれていた。

本当にここのメイドさんは優秀らしい…。


俺は、温まったからだのまま天蓋つきのベットに滑り込み、夢の世界に旅立った。


いかがでしたか?


ご意見、ご感想等ありましたらよろしくお願いします。

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