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【完結済み】あなたが読むかぎり  作者: 川原 源明
第3章 トオミサマ ―視線の檻―

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第45話 共有視界の終端

 その夜、ひなたは自室のベッドで天井を見つめていた。

 灯りは消しているのに、視界が暗くならない。

 閉じたはずのまぶたの裏で、誰かの目が開いている。


「……やっぱり、おかしい」


 彼女は立ち上がり、机の上のノートを開いた。

 今日一日の出来事を、文字にして確かめたくなったからだ。

 けれど──


「……私が、見ていた? それとも……」


 書き出した文章が、意味を結ばない。

 主語が欠けている。

 視線の主体が不在なのだ。


 《視界の共有は終了しました──ID:to_mi_023》


 スマホにそう表示されたのは、まさにその瞬間だった。


 画面を開くと、ログがすべて消去されている。

 どのアプリでも、履歴が白紙。まるで、記録自体が初めから存在しなかったように。


「……終わった?」


 ひなたはそうつぶやいたが、何の確証もなかった。


 数分後、理久から連絡が入った。


《映像のトリガーが断たれた可能性がある。おそらく、接触者側の“記憶視界”が遮断された。》


《でも、どうして? 私はなにも……》


《お前が“見ること”をやめたからだ。書こうとして、“視覚”じゃなく“言語”に変換しようとした。それが“視界の構造”に対する、唯一の対抗手段だったんだ》


 ──“書く”ことによって、“視る”構造を断ち切る。


 理久の仮説は、言語が視覚情報を“捕捉”し、逆に“言語化できない視界”を構造から外す可能性に基づいていた。


「じゃあ、私は……見てたんじゃない。書こうとしてたんだ」


 そう口に出したとき、部屋の中がようやく“自分の空間”として戻ってきたような気がした。


 だが、最後に──


 ひなたの机の上、開いたノートのページ。

 そこに、彼女が書いたはずの文字のすぐ脇に、“別の筆跡”でこう記されていた。


 「次は、あなたが見せる番」



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


もし、あなたの画面にまだ異常が起きていないなら、ページ上部から【ブックマーク】をして『生存確認』の印を残してください。


下部の【☆評価】は、失われた彼らへのせめてもの供養になります。


……どうか、次回の更新までご無事で。

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