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【完結済み】あなたが読むかぎり  作者: 川原 源明
第3章 トオミサマ ―視線の檻―

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第44話 映像の反転

 午後の授業が終わる頃、ひなたは黒板を見ながら、どこか別の映像を見ていた。


 ──鏡の中から、誰かが自分を見ている。


 そんな感覚だった。


 視界の隅に、いつも「もう一つの目」がある。


 自分の視界を誰かが覗いている、ではなく──自分が、誰かの目を通して“自分”を視ている。


「朝倉さん?」


 先生の声が教室に響く。ひなたは、はっとして立ち上がった。


「す、すみません……」


 理久が、隣の席でノートを閉じた。


「もう出るぞ。映像室、貸し切ってある」


 そのまま、理久の案内で旧校舎の奥へ。


 使われなくなった視聴覚室。備え付けのモニターと、理久の持ち込んだ解析機器が並ぶ。


「これ、昨日の録画……“あれ”を視たときのログ」


 理久はUSBメモリを差し込み、再生を始めた。


 ──画面には、屋上での映像。だが今回は違う。


 録画ファイルの“画角”が反転している。


 撮影者の視界ではなく、まるで“誰かに視られている側”の映像が記録されていた。


「……これって」


「ああ。撮ったはずの本人が“撮られていた”。

 つまり、“見る”側がいつのまにか“見られる存在”に書き換えられてる」


 ひなたは、モニターの中に映る少女──過去の自分を見つめる。

 その視線の奥、画面のさらに奥。

 画面の“裏側”に何かがいる。白く長い輪郭──、歪んだ腕、脚、そして“顔がない顔”。


「今、動いた……!」


 ひなたが叫んだとき、理久はすぐに再生を止めた。


「ダメだ。これ以上は見るな。

 これ……視覚情報がループして、観測者の脳内で再構成されてる。

 “あれ”は記録を通じて、視覚そのものを改ざんしてくる」


「じゃあ、どうすればいいの……?」


「このままだと、見るだけで脳が“視せられる器官”に書き換えられる」


 モニターが、ふいにノイズを走らせた。

 その刹那、画面いっぱいに「目」が映る。

 潰れたような、のっぺりとした──それでも、確かに“こちらを見ている”目。

 そして、ひなたの瞳の奥で何かが“反応”した。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


もし、あなたの画面にまだ異常が起きていないなら、ページ上部から【ブックマーク】をして『生存確認』の印を残してください。




下部の【☆評価】は、失われた彼らへのせめてもの供養になります。


……どうか、次回の更新までご無事で。

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