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【完結済み】あなたが読むかぎり  作者: 川原 源明
第3章 トオミサマ ―視線の檻―

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第43話 視界共有

 月曜日。

 登校中のひなたは、後ろを振り返ってばかりいた。


 見られている気がする。

 けれど、そこには誰もいない。ただ、道端の標識と、変わり映えのない住宅街。

 ──視線が、遅れて追ってくる。


「ひなた、挙動が不審だ。見られてるって自意識過剰か?」


 理久が前を歩きながら、ため息混じりに言った。


「……ねぇ理久。本当に、視たら感染するの?」


「“あれ”が意図的に見せている存在なら、そもそも“視せる”こと自体が呪術的構造に組み込まれてる。つまり、視界に入った時点で……感染する」


 ひなたは小さく息を呑む。


「でも、映像で見ただけだよ? 現実じゃないし……」


「なあ、考えてみろ。“見た”ってどう定義する?」


「目に……入ったこと?」


「それは“光を受け取った”だけ。

 でも、“見たと認識した時”が感染のトリガーだとしたら?」


「……じゃあ、脳の側が視たって思った瞬間、もう……」


「視界共有が始まってるってことだな」


 その瞬間、ひなたのスマホが震えた。通知は一件。


 《視界の共有が始まりました──ID:to_mi_023》


 スマホの画面が、暗転する。


 次の瞬間、まるで別人の視界が覗き込んでくるような錯覚が走った。


 映っているのは、自分の背中──

 校門の前で立ち尽くす、朝倉ひなたの後ろ姿。


 震える手でスマホを落とす。が、視界は続いている。

 理久の顔が、視界の端に入った。


「ひなた……お前、今、俺を見たな?」


 理久の声が、ひどく低く、硬質だった。


「……どういう、こと……?」


「まずい。“視線の同期”が始まってる。お前の視界が、外部とつながってる。俺にも、断片が入り込んだ」


「じゃあ、私の目、誰かと共有されてるの……?」


「いや──“誰か”じゃない。“何か”だ」


 視られる恐怖ではない。

 見ているはずの視界が、すでに誰かのものだったと気づく恐怖。


 この日を境に、ひなたは“自分の目”にすら、確信が持てなくなっていく。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


もし、あなたの画面にまだ異常が起きていないなら、ページ上部から【ブックマーク】をして『生存確認』の印を残してください。




下部の【☆評価】は、失われた彼らへのせめてもの供養になります。


……どうか、次回の更新までご無事で。

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