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【完結済み】あなたが読むかぎり  作者: 川原 源明
第5章 忘却奇譚 ―語るな、語らせるな―

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101/101

第101話 だれも語らないなら、わたしが語る

 あなたはもう、忘れてしまったかもしれない。

 あの夏のことを。

 誰かが語って、誰かが語られなくなって、そして、誰かの声だけが残ったあの日々を。


 でも、わたしは違う。

 わたしは、覚えている。

 忘れなかった。

 それどころか、忘れないために語ることを選んだ。


 ──ねぇ、聞いてくれる? これは、わたしの声で語ったもの。


 いくつかの“物語”があった。

 誰かの声が聞こえて、誰かが消えて、誰かが存在しなかったことになった。

 存在の輪郭は、誰かに「語られなければならない」ことで決まる。

 でもそれは、とても静かで残酷な仕組みだった。


 最初はただの“好奇心”だった。

 ネットで見かけた謎の駅、消えた少女。

 興味本位で理久を巻き込んで、現地に行った。

 だけどそこで気づいた。

 語られること、記されること、思い出されること──それらのすべてが、誰かの“存在”をこの世界に残すことなんだって。


 語られなくなった人間は、消えていく。

 見られなくなったものは、もうこの世に存在しない。

 それが、“語りの呪い”だった。

 でも同時に、それは“語りのちから”でもあった。


 語れば、残る。

 語れば、伝わる。

 だからわたしは、語ることを選んだ。


 理久は、どこかでわたしを笑っているかもしれない。

 論理で説明がつかない世界なんて、アイツにとっては不条理でしかなかったはずだ。

 でも、それでもいい。

 あのとき理久がそばにいてくれたこと、わたしはずっと覚えてる。

 それも、語っていく。


 この世界には、いくつもの“語ってはいけない話”がある。

 でもね、同じ数だけ、“語らなければいけない話”もあるの。


 だから、これはそのひとつ。

 わたしの中に残った、いくつもの声と、形と、匂いと、記憶。

 誰も知らなくなった物語。

 誰も語らなくなった呪い。

 誰かの中でだけ、かすかに響いていた“あの声”。


 それを、わたしが語る。


 きっと、誰かがわたしの声を聞く限り、

 この物語は、終わらない。

 たとえ誰も信じなくても、たとえ誰にも届かなくても、

 語られた物語は、この世界に残り続ける。


 これは、そういう物語。

 そしてこれは、わたしの声で語ったもの。


 ──聞こえたでしょう?

 今、ここで。

 あなたに。



ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

もし、あなたの画面にまだ異常が起きていないなら、ページ上部から【ブックマーク】をして『生存確認』の印を残してください。

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……最後まで読んでくれてありがとう、ご無事で。

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