オカシな話 花火
「リュウ?大丈夫?」
覗き込まれて、顔の近さに息が詰まる。
「…だ、大丈夫。」
顔ごと視線を逸らせば「でも、顔赤いし…」なんて心配そうな声色で呟かれて、誰のせいだ!と怒鳴りたくなった。
ため息を吐いて、誤魔化す。
「早く、帰えろ…熱い…」
あの日から、タカの顔を見ると落ち着かなくなった。
*
花火大会に行く予定を立てた。
俺は「甚平着るわ!中坊の時に買った黒地に龍の絵が背中にバーンてあるやつ!」と冗談半分で言ったら
「じゃあ、せっかくだし、俺も浴衣着ようかな?」とタカが返してくれた。
無理せずに合わせてくれる優しさが嬉しかった。
浴衣姿見のタカはすげぇかっこよかった。
あ、着慣れてる人だ!って、分かる立ち姿だった。
眼鏡も無いし、前髪も分けてフワっとしてるし、ツヤツヤだった。
女の目がすげぇ刺さって、何人かには話しかけられてた。
俺は急いでタカのとこ行って「コイツら何?」って女共にメンチきった。
タカは「連れが来たから失礼する」って俺の肩に手回して女共から離れた。
屋台をまわってたら、タカとはぐれた。
電話しても出ない。気づいてねぇのかな?スマホを離して周りを見渡した時。
タカがいた。
初めて見る険しい顔で、しきりに顔を動かして周りを見てる。
あんな必死に探してくれるなんて思わなくて、なんか喉が詰まった。
目が、合った瞬間。
タカの目が見開かれて、ホッて、力が抜けたのが分かった。
気の抜けた、でも温かい微笑みに、心臓がバクン!て花火みたいに鳴った。
近づいてくるタカから目を逸らせない。
「よかった…見つけれて…」
あのタカが、膝に手を当てて息を整える。
垂れてくる汗をらしくなく袖で拭えば、ムキムキな腕が見えた。
(…こんな、タカ、知らない…)
この後何を食べたかも覚えてない。
チラリと盗み見た、花火に照らされる穏やかな笑みの横顔が、忘れられなくて、胸がざわつく。
気づいたらタカをぼんやり見つめてしまう。




