オカシな公認
鷹宮剣護は絵に描いたような真面目な男だ。
染めた事のない黒髪。着崩さない制服。シルバーのフレームの眼鏡は理知さを強調し、そのイメージ通り、この辺りでも有名な進学校の優等生だ。
麻木龍騎は不良だ。
金髪に染めた髪にピアス、服装もだらしない。改造したバイクを乗り回し、金さえあれば入れる私立にかろうじて在籍してはいるが登校する事はあまりない。
そんな間逆な二人の共通点は
スイーツ好きな事だ。
剣護の家で、剣護が買ってきたスイーツを二人で食べる。
金は龍騎が出している。
不良と付き合いがあると知れ、教師には杞憂されたが、剣護は変わらない。学業も怠らないし、生活態度も変わらなかった。
だが、龍騎は変わった。
学校に出て席に座るようになった。
家にも一応顔を出すようになった。
それらは、ただ、剣護と食べるスイーツを買うお小遣い欲しさではあったが、周りを驚かせた。
態度を改めてまで小遣いをせびる息子に何に使うのかとダメ元で聞いた母は言葉を失った。
友達と美味い物食べたいから
この息子に、友達?
バイクですら勝手に金を持って出てしまったのに、その友達との食事の為にはきちんと話しをしたのか?と
母は本当は恋人にでも貢いでいるのだと思っていた。だから言ったのだ
そのお友達を紹介して、と
「で?なんでいきなり、リュウん家に来てるんだ?」
話しがあると呼び出され、連れてこられた先はそれはそれはご立派なお屋敷だった。
「お袋がダチ見せろっうから」
「いや、人ん家尋ねるなら手土産とかいるからな?先に言えよ」
「そうなのか?」
「しかも、リュウのお母さんは、今日連れて来いって言ったのか?」
「いや、昨日そう言ってたから」
「…ハァ。あのな?普通は、俺に説明してから予定を決めて、お母さんにいついつ連れて来ると話てから呼ぶもんだからな?」
「そうか、いや、ダチ家に呼んだことねぇし。その」
「うん。お前たち、今から来い!で集まるもんな。でも、それ仕事とかあったら無理だろ?」
「…悪い」
「リュウ?ちゃんと話してくれよ?そしたら俺も考えれるんだからさ」
「タカは、俺ん家来んの嫌じゃねぇ?」
「は?なんで?」
「こんなデカイ家とか、金持ちとか嫌がられた」
「いや、それ、嫌がるじゃなくて緊張だと思うぞ?…リュウの家だろ?リュウの家族に会うんだろ?嫌なわけ無いだろ?むしろ嬉しいよ?でも、日は改めて決めような?」
「ああ。タカ、あ、ぁりがと」
「!?」
「な、なんか言えよっ」
「あー、うん。こっちこそありがとう」
とりあえず、戻ろうと声をかけようとしたら、いきなり門が開いた。
息を切らした男性(おそらく使用人)に
「奥様が、是非、寄って行って、頂きたい、と、申しておられます、ので」と凄まじく息も絶え絶えに言われたてリュウの顔を見たら、「多分カメラで見てたんだろ」と門の防犯カメラを指さされた。
知られてないならともかく、知られてしまってるなら挨拶くらいはしなきゃか、と諦めて足を踏み入れた。
高級感は溢れるが落ち着いた雰囲気の応接間にリュウと並んで座ってる。
目の前の女性(リュウの母親)は未だに涙が止まらないらしい。
居た堪れない。
泣いてる理由が「龍騎に、こんな、まともで優しい堅実的なお友達が出来るなんて」な、辺り。リュウはなかなかに悪さばかりの人生なようだ。
「お袋、いい加減落ち着けよ、タカが困ってんだろ?」
「貴方が他人を気遣うなんてっ、ああでも、そうね、取り乱してしまってごめんなさい。龍騎の母です」
「初めまして、鷹宮 剣護といいます。龍騎君とは仲良くさせて頂いてます。急な来訪で手土産も持参出来ずにすみません」
「本当、しっかりした方ねぇ、でも、子どもの友達がお家に遊びに来るのにそんなの必要ないわ、これからも気にしないでちょうだいね?」
「ありがとうございます」
「それにしても、貴方たち出会ったきっかけは?鷹宮さんは違う学校の方でしょう?」
「僕が不良に絡まれているのを龍騎君が助けてくれたんですよ。それでお礼にお茶を出して話したら気があったんです」
「絡んだんじゃあないのね」
「ええ。まあ、助けた理由は不良達が気に入らなかったから、でしたが」
「あら、それならいつもの龍騎ね。」
「フン、どうせ俺は喧嘩ぱやいよーだ」
「ああ。でも、それがリュウだろ?」
「~っ!///」
「あらあら」
「生暖かい目で見るなぁ!」
「ふふ、本当にお友達なのねぇ」
「え?」
「なんだよ?ウソだと思ってたのかよ」
「龍騎の不良の影響やお金目当てじゃあなくて、ちゃんと龍騎を見てくれる、本当の友達なのねってことよ」
「う、まあ、タカには腹割って話してっからな」
「僕にとっても、リュウは得難い友人ですよ」
「これからもよろしくお願いしますね、鷹宮さん」
「はい。あ、僕のことは名前でかまいませんよ?まだ子どもですし」
「あら、じゃあ私もかなこさんて呼んで欲しいわぁ」
「お袋」
「かなこさんっていうんですね。可愛いらしいイメージでとっても似合いますね。」
「剣護くん、モテるんでしょう?」
「いえ、僕は昔から友人止まりですよ。今は龍騎くんで手一杯ですしね」
「ふふ、そうなの。なら嬉しいわぁ。また、遊びに来てね?主人にも会って欲しいし。」
「龍騎くんのお父上はお忙しいのでしょう?僕と会うよりご家族と団欒された方が」
「剣護くんがいなきゃ龍騎が来ないもの。
それに、貴方ならきっと主人も喜ぶわ。」
ニコニコと笑う彼女に、嫌な予感を感じる。いや、これは…
「かなこさん」
「なにかしら?」
名前を呼んでみても崩れない笑みの裏の真意に諦めのため息をつく。
「…そろそろお暇させて頂きます。」
「なら、送って行くわ。西条さん?車を」
「いいよ!俺が送ってく!っかタカん家泊まるから」
「あらあら、はいはい、じゃあ、はい。これで美味しいもの食べなさい」
「ありがとうございます…ほら、リュウ」
「サンキュー、お袋」
「ふふ、いってらっしゃい」
まあ、こんなお金持ちの嫁になるくらいだからそれなりに胆も据わった人なんだろうな。
『絶対なんか企まれてるよなぁ』とは思うけど、自分の隣で無防備に笑う彼と一緒にいれる為なら、まあ、良いかとため息を吐いた。
***
「ほう、龍騎に友人がいて、しかも紹介したのか」
「ええ、進学校に通う真面目な子なんだけど、貴方が気に入りそうな子だったわ」
「お前がそこまで言うとはな」
「ええ、龍騎のお婿さんにしたいくらいよ」
「…龍騎は息子だぞ?」
「それくらい、龍騎には必要そうな子だったのよ」
「それは是非会ってみたいな」
「彼が一緒なら龍騎も来るから集まりの時になんてどうかしら?」
「ふむ。親父も気にかけてたし、龍騎が来るなら有りだな。」
「彼、袴が似合いそうなのよ、用意しちゃおうかしら~」
「…彼の意見を聞いてやれよ?」
「もちろんよ!」




