森元信乃のクリスマス!
こちらは自作、『FURAIBO《風来坊》』シリーズのキャラクター人気投票を行い、その一位を取りましたヒロイン『森本 信乃』の物語です!
せっかくの機会なのでクリスマスストーリーにさせていただきました!
これが自作の初見の方。ぜひ自作シリーズ本編も読んでいただけると嬉しいです!
『FURAIBO《風来坊》』シリーズ https://ncode.syosetu.com/s1109i/
時は雪の降る夜。本日は年に一度のイベント、クリスマスイブ。家族は家庭で過ごし、カップルが町を楽しむ明るい夜。
その少女、『森本 信乃』は自身の上司『マザー クオーツ』に呼び出されていた。
「プレゼント配り、ですか?」
「はい。この街の配達担当のサンタさんが、今回体調不良になってしまったらしいのです」
「サンタさんが、体調不良? そもそもいたんですか、この世界にサンタさんが」
クオーツがしれっと口にしたことに戸惑った反応を見せる信乃。
「ええ、あの人とは以前から知り合いでして。そこでこの度代わりに引き受けることになったんです。そこで、ワープの異能力を持つ貴方を呼びました」
話の経緯は分かった信乃。するとクオーツは自身の机の下に隠しておいた大きな袋を取り出した。袋の膨らみ具合から、見るからに中身が詰まっている事が分かる。
「これが、そのプレゼントです」
「こんなに!」
クオーツが指を差した先には、見た目だけでもかなり中身が詰まっている白い袋が置かれていた。
「こ、こんなに!?」
信乃は普段、このあたりの狂暴な生物を大人しくさせて保護し、犯罪者を捕まえる組織『次警隊』の小隊長の一人だ。
しかしこの日、彼女の小隊の隊員達は皆別の用事で外れている。かといって目の前の隊長に押し付ける訳にもいかない。
「わ、分かりました。出来るだけ頑張ってみます」
かくして、聖夜にプレゼント配りの仕事をすることになった信乃。彼女はクオーツに渡された衣服に着替えるも、鏡で見た自分の姿に少し恥ずかしさを覚えた。
「う~……このサンタ服、可愛いけどちょっと露出が多いような」
信乃が今着ていたのはよく見る赤いサンタ服。ただし上は半袖で肩回りも布がなく、下はフリル付きのミニスカートだ。頭にはサンタ帽を被り、中々にキュートに仕上がっている。
「と、とにかく! この街の子供たちの為にも頑張らないと! 確か運ぶ用の乗り物がそろそろ来るって聞いたけど……」
信乃が口からこぼした丁度その時、彼女の家の玄関からノックオンが聞こえて来た。もしやと思い扉を開くと、そこには文字通りのトナカイが二頭、袋を乗せたソリを引いて来ていた。
「トナカイ、さん? 貴方達が運んでくださるんですか?」
「なんや小娘! 初対面でいきなり馴れ馴れしいぞ!」
「えぇ! トナカイがしゃべった!? それも、なんで関西弁?」
突然話を返して来たトナカイに驚く信乃。すると起こっている個体の隣のトナカイが優しくなだめてきた。
「すんません。ウチの兄、この通り血気盛んなもんでして……あ、喋り方は気にせんといてください。ウチら普段『忍者の世界』にいるもんで、話からが伝染ったんですぅ」
「な、なるほど?」
忍者の世界の住民は関西弁で話す人物が多い事を信乃は知っている。何故トナカイがそんな所に普段住んでいるのか分からなかったが、時間もないため細かい事を言うのはなしにした。
「とりあえず乗ってください。居場所とプレゼントの指定については聞いてはると思いますんで、早速行きましょうか。今日はよろしくお願いしますぅ」
「は、はい。よろしくお願いします……」
やって来たトナカイの思っていた以上にインパクトに若干萎縮してしまう信乃だったが、一度丁寧に頭を下げてからそりに乗車した。
「それじゃあ行きますか、兄さん!」
「おうよ! しっかり手綱握っときや嬢ちゃん!」
「はい、手綱手綱……」
信乃が言われるがままにソリの手綱を握ると、次の瞬間、トナカイは立った一歩の蹴り上げでソリごと自分達を空中に浮き上がらせ、そのまま空を蹴って空を飛び始めた。
「す、凄い! 本当にソリで空を飛んでる!」
初めての体験に目を丸くする信乃。トナカイ兄妹はこれに自慢気に答えた。
「おいおい、こんなもんやないでワイらの力!」
「せっかくの体験や。いっぱい飛ばしたんでぇ!」
宣言通り、トナカイの足は一歩一歩進めていきごとに速くなっていき、もちろんそれに比例して空中を移動する速度も上がっていく。空を切るような爽快感にいつしか信乃は笑みを浮かべていた。
「ウワァ! 凄い、凄いです!」
「どうや、爽快な気分やろ! まずは一件目まで人っ飛びや!」
トナカイ兄弟は信乃の反応を面白がりつつ足を速めた。そして一件目。黒い屋根の上にまで辿り着いた。窓の奥には既に眠っている少年の姿がある。
「さて、ここからがお前さんの仕事や」
「家にこっそり侵入して、プレゼントを届けてやってください」
「はい……って、あれ? どうやって家に入るんですか?」
「「え?」
ここに来ての困惑の反応。トナカイたちは額に汗を浮かびつつ信乃に問いかけた。
「嬢ちゃん、もしかしてやけど、隊長さんから魔法の鍵、貰ってへんのか?」
「魔法の鍵?」
「はい。扉はもちろん、窓からでも入れる秘密の鍵です。防犯上サンタさんとか、その許可をもらった人が使えるんですが……」
「そんなの、貰ってませんけど?」
「「何やってぇ!」
ここに来て想定外のトラブル。おそらくクオーツが渡しそびれたのかと思う信乃。トナカイ兄妹はもちろん焦った。
「ホンマかそれ! だとするとどうやってプレゼントと届けるっちゅうねん!」
「今から鍵を貰いに行ってたんじゃもう間に合わないですよ! プレゼントをワープさせるわけでもあるまいし……」
「ワープ?」
信乃はここに来て思い出した。クオーツが今回の仕事に自分を選んだ理由を。
『ワープの異能力を持つ貴方を呼びました』
「そうか、そういう意味で!」
信乃はここで突然将棋の駒を差すような手つきを取った。トナカイ兄妹は彼女の謎の行動に当然困惑する。
「何しとんねやこんな時に!」
「そうですよ、変なことしていないで早く鍵を!」
「大丈夫、ここは任せてください!」
自信を込めて答える信乃。次の瞬間窓も扉も開くことなく、少年の枕元にはロボットもおもちゃが置かれた。
「え?」
「な、何が……何が起こったんや今の?」
何が起こったのかが分からないトナカイ兄弟。すると信乃が構えを解いて説明した。
「私の異能力<盤面操作>です。自らが指定した範囲にある物体の向きや位置を入れ替えることが出来ます」
「そ、そんなことが!」
「じゃあ、鍵がなかったのって」
「多分、クオーツ隊長がわざとそうしたんでしょうね。あの人も、もう少し説明が欲しかったかも」
信乃はほんの少しだけ文句をこぼしたが、何がともあれ解決策は見えた。
「これで不安要素は解決です! 配るのは私に任せてください!」
「ほお、自身ついて来たみたいやんけ。ほら頼みまっせ、サンタの嬢ちゃん!」
気難しい所のあったトナカイ兄も信乃の顔にかっこよく顔を二やつかせ、ソリは再び空中を駆けた。
様々な家の子供たちに、欲しいプレゼントが渡っていく。去り際、信乃は窓越しに眠っている子供たちに静かに声をかけた。
「メリークリスマス」
そして時間は過ぎていき、日が昇るほんの少し前。ようやく信乃はプレゼントを配り終わり、トナカイたちによって家にまで運ばれた。
「ここまで送っていただき、ありがとうございます」
「ええって、嬢ちゃんの働きぶりからしたら、この程度安いもんや」
「その通り、また何か機会があったら、よろしくお願いしますね!」
トナカイたちも機嫌よく仕事を終え、元いた場所へと帰っていった。信乃は一息つき、まずは着替えたいと家に入った。
「フゥ……やっぱり町一帯は疲れたなぁ……着替えて少し寝ないと……」
「あれ、信乃さん?」
突然かけられた声に驚いてしまう信乃。家の中には今不在であるはずの彼女の小隊の隊員『春山 黒葉』がいたのだ。
「く、黒葉君!? どうして」
「仕事が早く終わったから、信乃さんこそ、何その恰好。サンタコス?」
「え? ああいや、これはその……」
恥ずかしい姿を見られたと顔を赤くしてしまう信乃。しかし黒葉は笑みを浮かべ、素直にコメントした。
「可愛い。とっても似合ってるね」
「え! そ、そんな……似合ってますか!」
思わぬ誉め言葉に言葉遣いが変になる信乃。続いて黒葉は部屋の奥から何か箱を取り出して来た。
「ちょうどよかった。これ、渡せてよかった」
「何ですか?」
「ちょっと遅いかもだけど、俺から信乃さんにクリスマスプレゼント……いいかな?」
信乃は黒葉からのプレゼントに心の中で歓喜し、そっと受け取った。ゆっくり包みを広げて開けてみると、中に入っていたのはブローチだ。
「これは!」
「似合うかと思って。その、いらなかったかな?」
不安げになる黒葉。しかし信乃はブローチを優しく胸に当て、心からの感謝の笑みを黒葉に向けた。
「いえ……本当に、ありがとうございます」
信乃の見せた笑顔に黒葉も心が温かくなる思いになった。
今日はクリスマス。皆さん、いい日になりますように……
本作品を読んでいただきありがとうございます!
楽しんでいただけましたら嬉しい所です!
連載作、『FURAIBO《風来坊》』、そして今回の主人公、信乃が登場します『PURGEMAN』も一読していただけると嬉しいです!
作品リンク
FURAIBO《風来坊》 https://ncode.syosetu.com/n3786ib/
PURGEMAN https://ncode.syosetu.com/n9975ki/




