7.市バスにて
丁度、高校生たちが、学校から帰る時間だったのもあり、市バスのバス停には多くの高校生たちが並んでいた。
間もなくして、染谷たちが乗るバスがやってきた。
「これも、先程と同様に船頭みたいなのが乗っておるな」
「そう。あの人たちがいないとこの箱は動かないんだよ」
「重要な人物なのじゃな」
「動く籠も同じなのか?」
「お、察しがいいな。その通りだよ」
バスは、並んでいた乗客を飲み込むと、早々に扉を閉め、発進する。
エンジンは低いうなり声をあげ、時折、轍を踏むとゴトンと左右上下に揺れるのだった。車窓からは、商店街の建物や行き交う車、人々がいつもの京都の日常を作り上げているのが見える。
「このバスとやらは、揺れがさっきの電車より激しいな」
「道の状況が電車とは違うからな」
時子は、やや興奮気味でさっきから窓の外ばかり眺めている。
その横顔は、まだ幼さを残している。そういえば、時子は本当は何歳なのだろう。自分より10は年下に見えるが、実はもっと若かったなんてことがありそうだ。そもそも、平安時代に年齢などという概念があるのかどうかも謎だ。染谷は、時子の横顔を見ながら、そんな事を考えていた。