4.なれ果て
市江さんは、とりあえずこれに着替えてと、時子に使ってない娘の服を渡した。時子は、訳も分からないまま、その服を市江さんから受け取り、着替えた。
「お腹空いてるんじゃないの。何か食べる?」
「空いておる」
「ちょっと待ってて」
しばらく待っていると、市江さんは、お盆に乗せた食べ物を持ってきた。
白飯と汁物、焼き魚に煮物。白米は、平安京では、貴族の食事。高価なものだった。焼き魚も焼きたてでかなり身がふっくらしている。煮物も具が沢山入っている。平安京では、どれも貴族が食べる食事だった。
「お主らは、毎日こんなに豪勢な食事を摂っておるのか?」
「豪勢だなんてとんでもない。毎日食べてるわよ。さ、冷めないうちにおあがり」
箸は平安京でも使っているのと同じような物だった。
時子は、いつも、麦や粟といったものを主食にしていたので、こんなにあっさりと出てきた白米に感動しながら、一気にかきこんだ。
「ほらほら、そんなに一気に食べると身体に良くないわよ」
市江さんは呆れ笑いで時子を見守る。
「大変、おいしゅうございます」
思わず笑みがこぼれ出る旨さだった。この時のふっくらとした白米の味は一生忘れる事は無いだろう。
時子はそんな中、薄々と状況がつかめてきた。ここは平安京の成れの果て。つまり、未来の平安京だ。