12.ソフトクリーム
「ただ今、戻りました」
市江さんは、買い物袋をぶら下げ、いつも通りの満面の笑みでマロウドに戻ってきた。
「あら、染谷さん来てたのね。時子ちゃんは留守番大丈夫だったかしら」
「お邪魔してます。市江さん、また時子ちゃんをお借りしたいんですが、よろしいでしょうか」
「あら、今度はどうしたの」
「時子ちゃんに漫画を見せてあげたいんです」
「あら、それは良いわね。私にも見せて欲しいわ」
「市江さんも一緒にいらっしゃいますか?」
「そうしたいところだけど、お店があるから」
市江さんは、手をひらひらさせ、笑顔で断った。
「ちょっと二人とも待って」
そう言うと、市江さんは、ソフトクリームを巻いてくれた。
「今日は暑いから、二人とも熱中症にならないようにね」
ソフトクリームはコーンに盛り付けられ、キンキンに冷えている。
「ありがとうございます」
染谷は、市江さんにお辞儀をすると、横で時子が真似をする。
連日続いた雨も止み、今日は快晴で暑かった。外で歩きながら食べるソフトクリームは格別に美味しかった。
時子は、ソフトクリームで口周りをべちゃべちゃにしている。
そんな時子を見て、染谷はそっとハンカチを差し出す。
「あ、ありがとうございます」
「言葉は現代っぽくなってきたけど、ソフトクリームの食べ方はへたくそだなあ」
「うるさい」
そう言って、二人して笑いあった。夏の暑さで、ソフトクリームが溶けるのが早かった。染谷にとっても時子にとっても、こうしてお互い心を通わせる時間が楽しくて、好きだった。




