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タオル一枚の大混乱!? 透ける恥じらいとスチームの魔力

 朝の日差しがゆっくりとカーテンの隙間から差し込んできて、部屋の床をほんのりと明るく照らしている。まだ私は布団の中でうつらうつらしていて、まどろみの世界から抜け出せずにいたけれど、次第に聞こえてくる侍女たちの足音と、淡く柔らかな光の温もりで意識がはっきりしてくる。やがて、ふと目を開けると、枕元にやってきたエミーが「おはようございます、リアンナ様。そろそろ起きるお時間ですよ」と穏やかな声で起こしてくれた。


 私は短く息を吐いて、毛布をめくりながらゆっくり上半身を起こす。体が重たいとか、眠気が取れないとか、そういう感じは意外となかった。ここ最近は領地の仕事や勉強でずいぶん疲れていたのに、きょうは不思議なほどすっきりしている気がする。もしかすると、昨日の夜に早めに寝られたことと、気分転換に一度スパに行って以来、心が少し軽くなっているのかもしれない。


 ローザも隣の簡易ベッドから起き上がってきて、「リアンナ様、きょうは二日目の追加コースですよね? スチームサウナとか頭皮ケアとか、まだまだ楽しみが残ってますよ!」と嬉しそうな表情を浮かべた。私はその言葉を聞いて、思わず毛布を抱きしめそうになる。昨日初めて行ったスパ施設での施術が、想像以上に気恥ずかしくて、しかも妙に気持ちが良かった。おかげで今日は確かに体が軽いし、眠りの質も良かった気がする。しかし、同時にあの独特の恥ずかしさをもう一度味わうのかと思うと、なんとも言えない落ち着かなさが胸に込み上げてくるのだ。


 「うう……昨日はあれだけ大変だったのに、まだ続きがあるんだよね……」


 布団の中から這い出しながらそうぼやいてみせると、エミーがくすくす笑う。「大変というか、お嬢様けっこう気に入ってましたよね? オイルマッサージの後なんか、本当に体が軽そうでしたし」と軽い口調で突いてくる。私は「そ、それは……だって気持ちよかったのは事実だけど……」と歯切れ悪く答え、顔が少し熱くなってしまう。前世が男だった自分が、いまは13歳の少女の身でエステを受けて「気持ちいい」なんて言ってる事実に戸惑いを拭えない。しかし体が楽になるのだから否定もできない。結局、やるせない思いを抱えながら朝の身支度へと移行するしかなかった。


 朝食は例によって軽めのパンとスープ、果物の盛り合わせ。私がパンにジャムを塗りながら「そういえば今日のスケジュールって?」と尋ねると、エミーが「あのスパに予約を取ってありますので、昨日の続きを受けることになります。きょうはスチームサウナや頭皮エステと、フェイシャルの追加メニューがあるそうですよ」と淡々と告げる。ローザは横から「やっぱり、スチームサウナは定番ですよね! それと頭皮マッサージは極楽ですよ~」などと楽しそうだ。私は「はあ……」と短い溜め息をつき、パンをかじりながら内心の緊張をかみしめる。


 結局、朝食を終えて身支度を整え、私は侍女二人とともに再び馬車に乗り込んだ。前回と同じスパへ向かう道中、同じ風景が流れているというのに私の気持ちは前日とは少し違う。昨日、初めて受けたハーブ湯マッサージと美脚コースが、意外に悪くなかった。むしろ体が軽くなったことは大きなプラスだ。しかし、同時にあのくすぐったい感覚と、意識しなくても出てしまう声の恥ずかしさをもう一度体験するのかと考えると、あまり気が進まない気持ちもある。私は見事に「うまい話に乗せられている」みたいな感覚だ。だけど、本当に悪くないと言えるから困る。


 「まったく、こんな身になってしまったせいで……」と小さく呟く。もちろん「こんな身」とは言えないが、前世で男だったとは誰にも言えないから、侍女たちにはただの少女の独り言にしか聞こえないらしい。ローザが「大丈夫ですよ~。きょうはきのうよりもっと楽になるはずです!」と無責任に返してきて、私は苦笑いしながら「その“もっと楽になる”という表現もなぁ……」と心の中でツッコミを入れた。


 そんなこんなでスパ施設へ着くと、昨日と同じように豪華なエントランスが私たちを迎えてくれる。朝の清々しい空気とは対照的に、中はアロマの香りがむっと立ちこめていて、いかにもリラックスしなさいと言わんばかり。スタッフが笑顔で「本日もお越しいただきありがとうございます」と挨拶してくるも、私はまだ緊張のほうが強く、どこかぎこちない返事しかできない。エミーとローザはその様子を面白がっているらしく、私を茶化しながら受付までエスコートしてくれる。もう逃げられそうにない。


 受付で施術コースの説明を聞くと、まずはスチームサウナから入り、その後、頭皮エステ、そしてフェイシャルパックの追加メニューを体験する流れだという。前回聞いたときから察してはいたが、いざ改めて段取りを聞くと、やはり軽くめまいがする。スチームサウナ……たぶんタオルを巻いて汗をかくのだろうが、想像しただけで嫌な予感しかしない。


 更衣室でガウンとタオルに着替え、スリッパを履いてスパエリアへ向かう。同じ装いであるはずなのに、何度やっても落ち着かない。前世が男性だったころは、サウナに入るのも普通だったけれど、いまは体が違う。背が低いし、腰や肩のラインも女の子らしい輪郭を帯びているし、胸のあたりは薄いとはいえ女性的にできている。そのせいでどうしても気後れしてしまうのだ。周りを見れば、ほかの女性客がタオルを巻いたまま歩いていて、特に隠す素振りもない。皆にとっては普通の風景なんだろう。一方私はなんとも言えない罪悪感を抱きながら歩くから、目をそらすように俯いてしまう。


 スチームサウナの入口へ行くと、すでにモワッとした熱気が漂ってきて、これは汗をかきそうだなと直感する。スタッフが「こちらがスチームサウナです。長く入りすぎないようにご注意くださいね」とアドバイス。エミーとローザが「行きましょう、お嬢様!」と楽しそうに声をかけてくるから、私は渋々後に続く。扉を開けた瞬間、むわっとした蒸気が肌を包み、視界が白い。中にはすでに数人の女性客がいて、皆タオル姿でリラックスしているが、私の目にはどこか妖艶に見えてしまい、急に意識が上ずる。


 同じように私もタオル一本で入る。昨日は背中や脚を出す程度だったけれど、ここでは汗だくになると聞いて緊張が走る。案の定、入って数分もすると顔や体中から汗がだらだら出始めた。しかも普段より発汗が激しい気がする。エミーが「お嬢様、すごい汗…」と驚いた顔で言うと、私も「こ、こんなの想像以上……」と息を切らす。あまりの蒸気でタオルがじんわり濡れてきてしまい、肌に貼りつくような感触が妙にくすぐったい。そして、困るのは貼りついたところがラインを浮き彫りにすることだ。「や、やめて、何か透けそうじゃない?」と慌ててタオルを押さえる私に、侍女たちは「大丈夫ですよ、皆さん同じだし」と軽い調子。いや、私はそれじゃ済まないと言いたい。中身は男性の意識があるし、他人には言えないけれど、こんな姿を見られるのは本当に恥ずかしい。


 辺りを見回すと、私と同じように汗をかいている女性客が何人かいて、別に誰も私を凝視しているわけでもない。多分私のことなんて気にしてないのだろう。しかし、自分としてはたまったものではない。胸元やお尻の形が透けて見えるかもしれないと思うと気が気でない。「ちょ、やばくない!?」と半分冗談まじりに騒ぐと、エミーが「お嬢様、落ち着いて。そんなに透けてないですよ」とささやき、ローザが「むしろ健康的でいい感じです~」と追い打ちをかける。私はそれを聞いてもう「どうしてそういうこと言うのっ!」と赤面を隠せなくなる。


 数分後、もうたっぷり汗をかいたので、さすがにサウナを出ることに。外に出ると急に空気が冷たく感じて、鳥肌が立ちそうだった。タオルが貼りついて離れにくい。スタッフが「今度はシャワーを軽く浴びて、上がりましょう」と促すから従うけれど、改めて自分のことを実感して、恥ずかしさで頭がじんじんする。男としては汗をかいても堂々としていただろうが、いまは透けたり貼りついたりと何かと困ることが多い。


 シャワーを浴びて一息ついたあと、次の施術は頭皮エステだという。場所を移動して腰掛けると、施術師が「では温かいオイルを使って、頭皮を揉みほぐしていきますね」とやわらかな声で告げる。正直、前世でも床屋でシャンプーされるのは好きだったし、これはもしかしたら気持ち良いかもと思い始める。が、私の想像をはるかに超える心地よさがそこには待っていた。


 施術師が後ろにまわり、頭皮全体に蒸しタオルをあてがいながらオイルを指でなじませていく。指先が頭皮のツボをくるくると刺激し、首筋を軽く押してくる。その度に全身の力が抜けていくような感覚が生まれて、思わず「ふにゃぁ…」と声を出してしまう。いや、こんな声、前世の自分でもシャンプーで出したことはなかったはずだ。「へ、変な声出てない?」と確認しようとしても、もう口がままならない。エミーとローザが「お嬢様、いい声出してますよ~」と軽口を叩き、私は引きつったように「や、やめて…」と返すが、体は素直に快感に溶けていく。もはや抵抗する気力がわかないほど気持ちいい。


 数分して、施術師が「大丈夫ですか? 痛くないですか?」と尋ねる。私は恥ずかしいながら「い、痛くは全然ないです……」と正直に答え、「そ、そこもう少し強めに…」とリクエストしかけてドキリとする。こんなふうに施術を要求するなんて、まるで女性的感覚を満喫しているようじゃないか。でも、正直気持ちいいものは気持ちいいとしか言えない。


 頭皮エステが終わると、それまでの疲れが嘘のように頭がすっきりしていた。私はボーッとしたまま鏡を見つめ、「なんか、顔つきまでほんの少し明るくなったかも……?」と感じる。そこへ侍女が「お嬢様、まだ先があるんですよ。フェイシャルの追加メニューを受けるって申し込みましたよね?」と囁いてきて、私は「え、また顔に何か塗るの?」と少しビビる。昨日はオイルマッサージと脚のケアで終わったが、今回は顔にもアプローチをするらしい。美容パックとか、そういうのは女性のお客さんにとっては当たり前なのかもしれないが、私には未知の領域に思えてならない。

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