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三章 第二十九話 空手1

用語説明w


アルバロ

神族の男性で、ラーズの人文学部の同期。女好きで合コン好き。チャラく緩く大学生活を楽しんでいる。


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。したたかな性格のヤワラちゃん


講義 原始歴史学



俺にとっては、技術文明史と文化人類学に続く、オーギュスト教授の三つ目の講義だ


この原始史学は必修のため、しっかりと受けなければ



「原始とは、時代区分で言えば最古のもの。天地暦元年以前の時代のことだ」


オーギュスト教授が話す

あの人、興奮するとお姉言葉っぽくなるのは何なんだろ



天地暦元年とは、神らしきものが暴れまわった終末戦争アポカリプスの時代


惑星ギアの直近に突如として現れた、惑星ウル

二つの惑星が二連星となり、ペアが誕生した歴史上最大規模の出来事が起こった年だ


なんせ、惑星が一つ増え、更に単純計算で、人類の数が倍になり、文明と技術が倍増したのだから



「時代区分は原始時代と言っているが、原始のイメージは毛皮を着て石槍を担ぐ野蛮人だろう」

オーギュスト教授が言う


原始時代とは、惑星ギアと惑星ウルが出会う前の時代

つまり、二つの惑星にそれぞれ原始時代がある


文明レベルは、惑星ギアが原子力発電所を持ち、惑星ウルが圧縮超高密度魔法言語を開発できるほど


協力してSSランクとも言われる惑星規模の天災、神らしきものの封印を可能とする技術力を持っていた


四千年の月日が経っているためロストテクノロジーも多く、現在と比べても全てが劣っているわけではない、高度な文明を持っていた



「そのため、この原始時代という名前は時代区分でしか使わない。代わりに、紀元前の時代を先史時代や旧世界などと呼んでいる」



先史時代とは、歴史として残っている以前の時代のこと

大きく二つの意味に分けられる


一つは文字を持つ前の人類の歩み

石器時代における人類の技術進歩などの研究だ


もう一つは、天地暦元年より以前

終末戦争とペア構成の動乱によって、旧世界の記録は多くが失われてしまった


ペア誕生時に何が起こったのか

神らしきものはどこから現れたのか

それ以前の人類の歴史は


「それらの謎を取り扱うのが、先史時代だ」


そう言って、オーギュスト教授は講義を終えた




「おい、ラーズ」


俺が教室を出ようとすると、アルバロが呼び止めてくる


「何だよ?」


「ラーズ、文化人類学の単位をもう取ったって本当か?」



ザワッ…


教室中の注目が集まる



「いや、違うって。実施研修の単位を一つ貰えただけだから」



文化人類学は人文学部の必修科目

テストだけでなく、実施研修を複数クリアしなくては単位を貰えない難易度の高い科目だ


そのため、学生たちは実施研修のネタになるものを探し続ける

発掘調査やフィールドワークなどが主だが、レポートを書ければ何でもいい


だが、実施研修に鳴り得るほどのネタは、そう簡単には見つからない



同期たちが集まってきたので、俺は経緯を説明する

ミィの宝の地図のことだ



「えっ、立ち入り制限地区に入ったの!?」


「そうだね。宝の地図を見つけた友達が騎士の卵だったから入れたんだ」


立ち入り制限地区はモンスターの領域であり、軍属やモンスターハンター資格を持たなければ入ることを禁止されている


「そういえば、うちの大学から行く調査隊もモンスターハンターに同行して貰うって言ってた」


同期の女の子が言う

名前はアンだ


先輩達が、この発掘調査に行くことで実施研修の単位を貰えると喜んでいたな



「くそー…、いいなぁ、ラーズ。もう実施研修の単位を一つゲットか…」

アルバロが本気で羨ましがっている


「実施研修の単位は三つも必要だものね」

アンが言う


「だよな。一年で一つ目ってさ」


「違うよ、実施研修のネタを見つけられる目がだよ」

アンがアルバロに首を振る


「目って?」


「ラーズは、歴史に触れるセンスや天運があるってこと。一年生で大学の調査隊を立ち上げるなんて、なかなかないことだよ。ちょっと嫉妬しちゃうかも」


「え…」


アンは、「じゃあね」と言って別の女子と出て行った




・・・・・・




旧道場



オープントーナメントのダメージを抜く期間と、ミィの宝探し

数日ぶりの道場だ


「ゴドー先輩、お疲れ様です」


「おー」


「ラーズ、来たか」


「ロン早かったな」


俺達は下だけ道着に着替えると、靴を履く


「ゴドー先輩、ちょっと走ってきます」


「おー」



大学の周囲には、学生のマラソン用としか思えない外周のコースがある


車もあまり来ないため走りやすく、体育会系の部活の学生がたくさん走っている


つまり女子大生が走っていて目の保養にいい


「ふぅ…」


そして、多くの男子学生が足を止めるスポットがここ

テニスコートだ


テニス部の男女が練習しているのが合法的に覗ける

スポーツをしている女子大生はいい…



「…」

「…」


俺とロンは無言で見入る


「コラッ、エロ小僧!」


「うわっ!?」

「えっ!」


焦って振り返ると


「あっはっは。覗きはいかんよ、二人共」


ケイト先輩だった

下は柔道着で、他の柔道部員もいる


「い、いえ、違いますよ。一人、めちゃくちゃ上手い人がいるなって…」


俺はテニスコートを示す


「ああ、あの人はプロになるのが確定してるんだよ。インカレを制したって」


「すげー、そうなんですね。やっぱり別格ですもん」


「うちの体育学部はプロになる人が多いから」


「見てたら目を奪われたんですよ。やっぱり、アスリートって凄いですね」


高い技術力を目の当たりにすると、やっぱり刺激になる

…最初はエロ目的だったのは秘密だ



「よし。行こうぜ、ラーズ」


「オッケ。ケイト先輩それじゃあ」


俺とロンが歩き出す


「二人共、やる気出てるね」


「リベンジしなきゃですからね」

「俺も、次は一回くらい勝ちたいっすから」


俺とロンはそこからダッシュ

一気に息を上げた



「よし、練習すっか」


ゴドー先輩がようやく起きる


「よろしくお願いします」


「今日は、少し空手を教えてやる」


「空手?」


ここは空手部で、今まで習ってたのも空手

寝すぎてバカになっちゃった?



「ぶっ飛ばされてーのか?」


「いえいえ、教えて下さい!」


「…今まで教えたのはキックボクシング。空手と共通の技術は多いが、最大の違いはルールとグローブの有無だ」


ゴドー先輩が、俺を威圧しながら説明してくれる



空手とは本来、武道であり殺生を厭わない技

当然、グローブもしていない


だが、そんなルール(殺し合い)では練習できないため、競技として無数の流派が生まれている


皮肉なことに、ルールを設ければ設けるほど、空手は個性を失い劣化キックボクシングへと近づいていくのだ



「空手の技は多彩だ。打っちゃダメな打撃はないからな」


ゴドー先輩が俺に右ミドルをゆっくりと蹴る


俺はカットのために左足を上げる


すると、俺の左足の前を通り過ぎ、踵が俺の顔に戻って来る



「これが内回し蹴りだ。威力は出にくいが、意表を突ける」


「おぉ…」


予想外すぎて反応できなかった…!



「次が三日月蹴りだ」


今度は、ゴドー先輩が左のミドル


隙を突かれて、俺は咄嗟に右腕でガード



トスッ…


「…かはっ!!」



ミドルと思ったら、前蹴りのような軌道で、俺の右脇を突かれる


こちらも予想外の軌道と痛みで、俺は膝を付く



「前蹴りとミドルの中間の軌道でレバーを蹴る。軌道的にカットをすり抜けて入る」


「痛い…、ロン、代わって…」


「マジかよ」



「他にも後ろ回し蹴り、大技だと胴回し蹴りとだな」


「俺の相手だったカポエラみたいなのっすね」


「あそこまで回転はしないけどな」


ロンのオープントーナメントの相手のカポエラ使い

総合格闘技にアレンジもされていて強かった



「ここまでの蹴りは空手技だが、ルール上はキックでも使える。実際に使う選手もいるしな。当然、東玉流ルールでもオッケーだ」


「はい」


「キックボクシングの蹴りは強い。ミドルとローは世界を制する。だが、アレンジをしてみるのもいいだろう」


「ゴドー先輩、ついに俺達を認めて…」



ゴキッ


「お前らはミドルを使いこなせないから言ってるんだよ」



「ひ、酷い、鬼…」


「ラーズ、ゴドー先輩を煽るのやめろって」


「そんな無謀な挑戦するかよ!」


「うるせー。次は突きだ」


そう言って、ゴドー先輩が構えた



宝の地図 三章 第二十四話 宝探し1

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