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三章 第二十四話 宝探し1

用語説明w


立ち入り制限地区:モンスターの生息域であり、人類の支配権外の区域。安全性のために立ち入りが禁止され、騎士、軍、モンスターハンター資格を持つ者以外は特別許可が必要


フィーナ

ノーマンで黒髪、赤目の女子。ラーズの義理の妹で、飛び級でハナノミヤ聖女子大学に進学。クレハナの王族であり、内戦から逃れるために王位を辞退して一般家庭に下った。騎士の卵でもあり、複数の魔法を使える。最近はラーズの怪我の治療によって回復魔法の腕が上がっている


ミィ

魚人の女子。騎士学園時代にラーズとパーティを組んでいた。金勘定が上手く、戦闘よりもアイテム調達で貢献、騎士団の運営に興味を持ち、龍神皇国立騎士大学へと進学した。


フォウル

肩乗りサイズの雷竜、ラーズの使役対象。巨大化して強力なサンダーブレスを一回だけ吐くことができる



龍神皇国 南区

立ち入り制限地区 アレタリル草原



「広いなー…」

「風が気持ちいい!」


俺が運転する車が、広大な草原を疾走する


「どこまで行くんだっけ?」


「あと七キロだって」


ミィがPITでナビを確認する



「ミィさん、その場所が宝の地図なの?」


「そうよ、ソロン」


「フィー姉、どうしたの?」


「ちょっと酔ったかも…」


レンタルしたSUVには、ミィ、フィーナ、ピンク、ソロンが乗っている

まるでピクニック気分だ



俺達が向っているのは、ミィが仕入れた宝の地図に記された場所

不運なことに、場所は立ち入り制限地区内


そう、俺達はわざわざ危険地帯に、宝探しをしに来ているのだ


「グルル…」


フィーナの膝の上で丸くなっていた小さいドラゴン、フォウルが顔を上げる


「何かいるの?」


ピンクが窓の外を見ると、遠くにライオンに似た動物の姿が見えた


「あれ、マンティコア?」


「そうだよ。僕、授業で習った」

ソロンが窓に顔を押し当てる



マンティコアとは、老人のような顔を持つライオンのようなモンスターで、サソリの尻尾を持つ

攻撃魔法を使う強敵だ


ピンクとソロンは貴族の子供

騎士学園に通っており、授業でモンスターのことは習っている


二人は幼いころから貴族として英才教育を受けており、しかも、セフィ姉に匹敵する才能を持つとも言われるほどの実力を持つ



「いやー、ラーズが免許を取っていたのはラッキーだったよね」

ミィが窓の外を眺めながら言う


「そうか?」


「車ならモンスターとの戦闘を避けられるし、全員が乗れるし、人を雇わなくていいし」


「別に雇えばいいじゃん。制限地区なんて危ないんだから、ガイドがいてもいいだろ」



立ち入り制限地区とは、モンスターが闊歩する地域であり、人類の支配圏ではないエリアだ

本来は、モンスターハンターや騎士、軍属しか立ち入ることができないエリアであり、違反すれば罰則もある


今回は、ミィが制限地区に入るための手続きを行ってくれた

こういうことは、昔から要領がいい



「ダメだって。この宝の地図の情報は人に見せたくないんだから」


「どうせ偽物じゃないのか?」


「失礼な、これは本物だよ!」


ミィが運転中の俺に古い羊皮紙をグリグリと押し付ける


「いや、やめろって! 大事な地図なんだろ!」


「ラーズ、前見て!」


フィーナに言われ、俺は慌ててハンドルを握る



「ちょっと、しっかりしてよ」


「それなら運転の邪魔するなって! 俺はまだ若葉マークが外れてないんだぞ」



今日は、前にミィに言われていた宝探しへの旅

ミィが誘ったピンクとソロンは、わざわざ騎士学園を休んでまで参加した


二人とも優等生であり、同級生と比べると圧倒的に実力が高い上に勉強もできる

性格もいいため教師の受けが良く、すぐに許可が出たとか


…俺達が騎士学園に通っていた頃は、授業を休むなんて考えたことなかったけどなぁ



「ラーズは授業を休んでたよね」


「え、いつ?」


フィーナに言われ、俺は聞き返す


「初等部の二年生の時だっけ。ほら、大森林で行方不明になったでしょ」


「ああ、騎士学園の生徒が拉致されたっていうトンデモ事件ね」

ミィが笑う


「えっ、何それ?」

「ラー兄、拉致って攫われたってこと!?」


ピンクとソロンが同時に驚く


「嫌なことを思い出さすなよ…」



大森林とは、惑星ギアにあるブリトンという国の北方に広がる広大な立ち入り制限地区だ

通常の制限地区とは規模が桁違いであり、その範囲内の魔素濃度も高い


こういう大規模制限地区のことを秘境と呼ぶが、大森林はペアの二つの惑星の中でも最大規模の秘境だ


騎士学園では、この大森林の入口領域に入るという遠足のような行事がある

魔法を習得し始めた騎士学園の生徒にとって、秘境の大気中の濃い魔素濃度は開いてきた感覚を自覚するきっかけともなるのだ


そんな遠足へ行った時…

大森林の中に拠点を作っていたテロ組織が襲ってきたことで、俺は拉致されてしまった


テロ組織は子供をさらい、人身売買で集め、兵士として利用していた

そのため、たまたま狙われたのだ



「大丈夫だったの?」


「大丈夫だったから俺はここにいるの。それに、拉致されたのは一週間だけだったからね」


「怖くなかった?」


「怖かったけどさ、悪いことばかりじゃないんだ。いい出会いがあったからね」


俺は心配そうなピンクとソロンに答える

この子たちは、本当にええ子や…


「いい出会いって?」


「フォウルだよね」

フィーナが答えを引き継ぐ


マンティコアとの距離が開いたからか、フォウルはまた丸くなっている


「えっ、フォウルって大森林から来たの!?」

ピンクがフォウルを二度見する


「そうだよ、知らなかったんだ」


そんな話をしていると…



「よーし。あんたら、着いたよ!」


目の前に小高い丘が見えてきた

俺達は、その麓に車を止める


「車はここに置いて行くから、荷物を持ってね」


「この先、車は無理なのか?」


「ガタガタで、底を擦っちゃうんだって」


「悪路ってことか…」


アレタリル草原は、かなり平坦だった

だからこそ、舗装されていない道なき道を車で突っ切ることが出来たのだ


だが、ここから先は岩山や谷間の川などがあり、車では進めない



「よーし、出発!」

ソロンが元気に言う


「モンスターがいるかもしれないから、気を付けようね」


「そ、そうだった…」

ピンクがソロンを窘める


うむ、お姉ちゃんをしているな

微笑ましい



「それにしても、ラーズさ」


「何だよ、ミィ」


「意外とやる気だったよね、この宝探し」


「そうか?」


「何で心変わりしたのか言って」


「…」



ミィの提案は宝探し

なんと、宝の地図を手に入れたのだとか


かなり胡散臭かったが、話を聞いてみて驚いた

その宝の地図とは、約四百年ほど前のものだったからだ


約四百年前とは、天地歴三千六百年

最後の魔大戦である始源戦争の頃のこと


現在の龍神皇国にあるダンジョンに魔王が出現

当時、周辺に複数あった小国に攻め込んだ


当時の英雄たちが何とか魔王を討伐し、その後、疲弊した国々の間で戦争が勃発

最後には勇者と呼ばれた英雄が戦乱の覇者となり、龍神皇国の前身である龍神皇帝国を打ち立てた


その頃に作られた地図だったのだ



「発見されたのは、東区にある家に代々伝わっていたものが遺品整理の際に見つかったんだって」


「普通に凄い発見じゃないか」


「だから言ったでしょ」


「ミィが言うと…ちょっとだけ…」


「どういう意味だ!」



そんなわけで、これはちゃんとした考古学的な調査だった


俺の学部の必修科目に、文化人類学という講義がある


必修のため、絶対に落とせない講義なのだが、この単位は試験だけではもらえない

実施研修として、発掘や現地調査などのフィールドワークに参加してレポートを提出する必要がある


つまり、実施研修として認められるようなネタを自分で探して参加しなければいけないのだ


ちょうどいいやと、俺はこの宝探しを実施研修として認めてもらうために、担当のオーギュスト教授に話に行った

すると、なんと「その地図と入手経路を明らかにし、発見物が出てくれば大丈夫」とのお墨付きをもらえたのだ


フィールドワークのノルマを、一つ消化できるのは大きい

モチベは爆上がりだ


ちなみに、この実施研修は三年生の終わりまでに三回行わなければならない



人文学部の教授、オーギュスト教授

ノーマンの男性で結構な年齢だ


皆が、かなり厳しいと恐れているらしく、俺も緊張しながら会いに行った


「宝探しとフィールドワークを一緒にしないこと。全ての事柄をフィールドワークとしなさい」


「いいか? 発見には、現地の気候や環境、人に接することが必要。なぜなら、遺跡を作った人も同じ場所で生活をしていたからだ」


「書物や写真などの情報は、誰かの脳を通して得た情報。生の情報じゃない。つまり、本当の情報が欲しければ、インスピレーションが欲しければ、現地で生の情報を得なさい!」


「つまり、今すぐフィールドワーク! これだけよ!」


説明を続けるうちに、オーギュスト教授はだんだんと言葉に熱を帯びてきた

俺は、その熱意に押される


とりあえず、フィールドワークへの信念の強さだけは分かった


…この人から単位をもぎ取るのは大変そうだ

だから、この宝探しは何としても成功させ、実施研修として認めてもらいたい



……どうでもいいが、教授の口調、だんだんとおかしくなっていた気がするのは気のせいだろうか


ミィの宝探し 三章 第六話 ミィからの電話

ピンクとソロン 閑話3 夏休み

オーギュスト教授 二章 第二十六話 カフェ

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