表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/374

三章 第五話 アパートの除霊2

用語説明w


レイコ社長

ゴーストハンター資格を持つ有限会社クサナギ霊障警備の社長、ドワーフの女性で童顔だが年上。クサナギ流除霊術を修めた凄腕だが、社長の割に威厳と権限は少なめ


ホフマン

クサナギ霊障警備の社員、魚人の男性で元ゲリラ兵の経歴を持つバウンティハンター。ゴツい体格と風貌で、見た目は完全にあっちの人。銃火器のプロでバウンティハンターの資格を持つ


ビアンカ

クサナギ霊障警備の社員、ダークエルフの女性で元軍人、圧縮空気を推進力として利用するホバーブーツという変わった装備を使う。武器はククリナイフとハンドガン


ドアを開けて中へ突入

その瞬間、肌に刺激を感じた


「待て!」


くぐもった声

ガスマスクをしたホフマンさんだ



部屋の中の空気がグルグルと回転している

自然には起こり得ない現象、悪霊の力によるものだろう


「毒ガスが混じった空気を悪霊が操ってる。厄介だね」

レイコ社長が言う



これは、ポルターガイストで気体を動かしているのか

どちらかと言うと、風属性の魔術に近そうだ




魔術


魔力を使って引き起こす超常現象のこと

魔法も魔力を使っているので、広義では魔術の一種となる


魔法は、プログラムのように決まった術式を構築し、魔力を効率よく発生現象のエネルギーや質量に替える

威力は高いが、発動に時間がかかる


魔術は、決まった術式を使わない

そのため、使用魔力に対してエネルギーや質量への変換量が少ない

しかし、発動は早い


また、魔力は応用力があり、金属に魔力を練り込んだり、製薬に魔力を込めたりと、鍛冶や薬学の職人にも使われる


モンスターやゴーストが無意識に使う魔力の使い方も決まった術式ではないため、魔術に属するものとなる




「ダメです、まだ濃度が!」


俺が持たされたガス検知器がピーピー鳴る

表示濃度はガッツリ危険値だ


ヤベーぞ、皮膚が!


騎士ではない俺は、防御魔法もない

風魔法も使えないから吹き飛ばすこともできない


どうすればいい?



「あっ、ホフマンさん、土壁の魔石は!? 毒ガスをせき止めれば…」



「それじゃあ、ドアを開けた意味がない。それよりも頭を使え」


「え?」


「人類の強さは魔法があったからじゃない。魔法を利用する頭があったからだ」


そう言いながら、ホフマンさん取り出したもの

それはパチンコだった


ハンティング用のゴツいスリング、威力がありそうだ



ガチャン!


ホフマンさんが、突き当りの部屋の窓をパチンコ玉で割る



「送風機を頼む」


「はい!」


俺は消防隊員からでっかい業務用の扇風機を借りる

そして、スイッチをオン



ブオォォォーーーーー!


「よし!」



送風機の風が硫化水素ガスを押し込み、パチンコで割れた窓から押し出して行く



「ラーズ、霊視ゴーグルを付けろ」


「はい!」



俺は霊視ゴーグルを装着


すると、廊下中程の右側の扉から、ぼやけた何かがせり出しているのが見える



霊視ゴーグル


霊力の密度である霊圧を、視覚情報として現実の風景に重ねる、拡張現実と呼ばれる機能を持ったゴーグル


霊圧とは霊力が高い密度を持った場所であり、つまりは霊的質量を持つ場所

要はゴーストの霊体が見えるようになるのだ




…いる


あの扉の中から体を乗り出している

物体を透過する霊体らしい挙動だ


俺は小型杖を突き出す

装填してるのは祓いの魔石


同時にレイコ社長が霊札を突き出すと、悪霊がビクッとする



「…!」


近づくな

そう言うように腕を振るう



そこまで強い悪霊ではなさそうだ

ただ、硫化水素は厄介だ


これなら霊札で吹き飛ばし、強制成仏させて終われそうだ




「ハバムフ!」


突然の声に、悪霊が驚いた仕草を見せる



俺が振り返ると、涙を溜めた女性が立っていた


「ハバフム…!」

もう一度、女性が声を絞り出す


すると、その声から逃げ出すかのように、悪霊が右の部屋へと引っ込んでいく



「…あの横の部屋だね。扉を開けよう」

レイコ社長が言う


「暴れるかもしれなくないですか?」


「大丈夫、あの人の声で悪霊の悪意が弱まったから」


「社長、了解だ」


俺とホフマンさんが先行

廊下の半ばにある扉に手をかける



「ん? 開かない…」


「何かつっかえてるな」



無理矢理力を入れる

すると…



バリバリ…


ドアの向こう側から、何かが剥がれる音がする



「目張りか…」


その向こうは脱衣所となっていた

ドアは、内側から隙間を埋めるようにガムテープが貼られていた


その奥の風呂の扉にも内側からガムテープが貼られている


そして、風呂の扉には張り紙が


『毒ガスで自殺します。危険ですので入らないで』

と書かれている




「…送風機を持って来てくれ」


「分かりました」


俺は送風機を持って来て、脱衣所から風を送る


ホフマンさんが脱衣所の窓を全開

目張りされた浴室の扉を力でテープを剥がして開ける



「…」


浴室の床には、バケツが置かれていた


その中の液体から、卵の腐った匂いがする

これが硫化水素の発生源か


ホフマンさんが浴室の窓を開け、床に置かれたバケツを倒して液体を流す

そして、蛇口から水を出して排水口へ流していく



「このバケツで洗剤を混ぜたな。硫黄系と塩酸系の洗剤だ」


バケツの横には二種類の洗剤の容器が置かれている


混ぜるな危険の洗剤を混合

硫化水素発生させての自殺手法だ



換気もできたことで、すでにガスは薄まりつつある


…空の浴槽には、一人の男性が横になっている

悪霊は、すでに力を失い静かに佇んでいる


「自分の死体を見せたくなかったのね」

レイコ社長が、佇んでいる悪霊に目をやる


霊力を持つレイコ社長には、悪霊の霊体が見えている


「硫化水素が危ないから、人を近づけたくなかったのかもな」

ホフマンさんが、貼られていた紙を見せる



「ハバムフ…、バカな子……。一人で悩んで…一人で苦しんで……」


この女性は、この悪霊の母親だった


連絡が取れなくなり、息子のアパートにやって来たらしい

悩んでいる様子があったので、心配をしていたようだ



「助けてあげられなかった…、苦しんでいたのに。こんなに、死んでまで暴れるほど苦しかったのに…。もういいんだよ、ゆっくりと休んでおくれ…」


そう言って、消防隊員が止めるのも聞かずに息子の頭を撫でる女性

その様子を見て、悪霊は静かに消えて行った



「…本当はね、全ての悪霊に納得してもらって、自分から成仏してもらうのが理想なんだよ」


「そうですね」


今回の除霊で思った

倒せばいいってもんじゃない


死んだとしても…

その心を救うことはできるのだから



「霊札を使わなければ、利益も上がるしね」


「…社長、台無しだ」


「台無しです」


帰りの車の中で、俺とホフマンさんはレイコ社長を窘めてやった




・・・・・・




クサナギ霊障警備



俺が帰り支度をしていると…


「ラーズ、ホバーブーツは乗れるようになったのか?」

ホフマンさんが尋ねる


「全然ですよ…。あの靴、すぐに転ぶんですから」


俺はビアンカさんの指導で、何度かホバーブーツを使っている

だが、扱いがめちゃくちゃ難しい


ホバーで靴底が浮き上がった瞬間に吹き飛ぶ

動いていても、ちょっとバランスを崩すとすっころぶ


まともに進むこともできない



「ラーズは凄いな」


「何がですか? 俺、少しも乗れるようになっていませんよ」


「ビアンカの訓練を続けていることがさ」


「…」


「人格がかわるだろう?」


「ホフマンさんもやったんですか?」


「俺だけじゃない、社長とプリヤもだ。ピッキはやらなかったが、あれは草食動物の本能だろうな」


「分かる気がします」


「あいつ、ホバーブーツのことになると口スイッチが入ってなぁ…」


「はい…」



ビアンカさんは元軍人

ホバーブーツを使う特殊部隊にいたらしい


そのせいか、ホバーブーツに乗ると性格が変わる



「このクソ虫が! お前の仕事は何だ!?」


「は、はい! ホバーブーツに乗ることです!」


「そう思うならやってみろ! そんな程度の血反吐の量で出来るのか!?」


「す、すみません! ビアンカ師匠!」


「今度弱気な顔を見せてみろ、ママのおっぱいの所まで引きずって連れて行ってやる! 分かったか!」


「はい!」



ビアンカ師匠の指導の下、俺はひたすらホバーブーツで行ったり来たり


「さっさと行け!」



「ギャアァァァァッ」


ゴガッ!



そのまま壁に激突したり、遠心力で吹き飛んだり

何度も怪我をする羽目になっている


「ラーズがホバーブーツを使えるようになったらいいよね」


「本当よ。いい戦力になるわぁ、早くマスターしてね」


「ラーズくらいだよ、軍人モードのビアンカについて行けるの」


「…」


他人事のようなレイコ社長とプリヤさん



ホバーブーツが凄いのは分かる

でも…しばらく無理っす


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ