序章 第四話 特技(スキル)
用語説明w
フィーナ
ラーズの義理の妹で、飛び級で大学に進学。クレハナの王族であり、内戦から逃れるために王位を辞退して一般家庭に下った。騎士の卵でもあり、複数の魔法を使える。
セフィリア
龍神皇国の貴族ドルグネル家の若き当主。ドルグネル流剣術と槍術を修め、騎士としても活躍中。その長く美しい金髪から、金髪の龍神王と呼ばれているドラゴンエリート
「セフィリア様、あの四人はなかなかやりますね。まだ入団前なのに」
弓を担いだ、ドワーフの女性騎士が言う
「あの四人は、今年の卒業生のトップパーティだもの。ダンジョン踏破記録で、私と同じ学年記録を叩き出したのよ」
「えぇっ、あの騎士学園のダンジョンですか!?」
「そういえば、イージュンも騎士学園の…」
「私は、そんな凄い階層まで行けませんでしたけど」
そう言いながらも、イージュンは杖を持ったままズメイの動きから目を離さない
ルーキーたちが反撃を受けた際にフォローできる位置取りを、さりげなくキープしてるのだ
そして、それはセフィリアも同じ
水属性水流魔法でズメイの三つの頭を狙撃、時折、動きを止めてフォローしている
ビシュッッ!
ズッガァァァァァァァァァン!
「グギャァァァァァッ!!」
先にフィーナの複合魔法が発動
ズメイの一本の首の根元に直撃し、吹き飛ばす
首の一つが千切れ、ズメイが仰け反る
だが、他の二つが接近しているラーズを狙っていた
「へぇ、複合魔法かぁ。魔法版ビーム砲って感じかしら」
「チャージ時間の割に、威力は足りないかな」
「まだ騎士の卵なのよ、あの娘は? Bランクオーバーのモンスターに対してダメージ与えるんだかから充分でしょ」
騎士が使う技能とは三大元応力を使ったもの
魔法、特技、闘氣だ
三大元応力とは、魔力、輪力、闘力のこと
魔力とは、精力と霊力の合力で魔法の源の力
輪力とは、霊力と氣力の合力で特技の源の力
闘力とは、氣力と精力の合力で闘氣の源の力
そして、「三大元応力」の三つの力を作り出す、精力と氣力と霊力の三つの力を「三大基本作用力」と定義している
精力とは、精神の力であり、精神と魂を繋げる力
氣力とは、肉体の氣脈の力であり、肉体と魂を繋げる力
霊力とは、霊体の力であり、肉体と魂を繋げる力
そして、魔導法学に定義される人体とは、この「三大基本作用力」と「三大元応力」で表すことが出来る
魔導法学における人間の体とは、魂を中心に、肉体、霊体、精神の三重構造となっているのだ
「ラーズ、今だ!」
ヤマトが、渾身の闘氣で身体能力を強化
更に、第二チャクラを開放することで獣化能力を発現
獣のような容貌となり、その隆起した筋肉でズメイの足を掴む
突然の片足の抵抗に、ズメイが大きくバランスを崩した
このチャンスに、俺は全身全霊の一閃を放つ
魔法と特技、闘氣を剣に重ねた重属剣だ
ズドォォォォォッ!
「グギャァァァァァッ!!」
一直線に衝撃が突き抜け、ズメイの一本の首が吹き飛ぶ
フィーナが破壊した首と合わせて二本を失ったズメイが激しく転倒した
「…!!」
「ラーズ!」
「フィーナも下がれ!」
ヤマトとミィが俺とフィーナの前に立つ
フィーナは一時的な魔力欠乏症状が出ている
俺も、重属剣の発動によって体内のエネルギーを喪失、闘氣もまともに纏えない疲労に襲われた
そして、ズメイは唯一残った最後の首が身体を操り、再度起き上がって俺たちに牙を剥きだした
「やるじゃないか。よし、次は俺たちの出番だな」
先ほど、ロケットランチャーを撃ち込んだ騎士が前に出る
「おい、獣化の小僧、まだ動けるだろ? お前も手伝えよ」
「は、はい!」
「あなたは私と。狙撃、やりましょ」
「よろしくお願いします!」
ヤマトとミィは、ぞれぞれ前衛と後衛の騎士に連れられて行く
ズメイを仕留めるための手伝いをさせてもらえるみたいだ
「動かないで。私の魔力を分けてあげるから」
「あ、ありがとうございます…」
そして、フィーナは魔法使いのイージュンに魔力を分けてもらいながら魔法発動を手伝いに行った
「…」
俺だけが、その場に残される
すでに、五人の騎士と戻って来ていた二人の斥候がズメイを包囲していた
「ラーズは少し休みなさい。重属剣の疲労は、ただの疲労じゃない。生命維持のためのエネルギーを使い切っている危険な症状よ」
「う、うん…」
セフィ姉が、俺に氣属性活力魔法を発動
俺の疲労を軽減してくれる
「失敗したわ。まさか、地中で寝ていたドラゴンを起こしちゃうなんて、ね」
セフィ姉がため息をつく
「ズメイのこと?」
「ええ、そうよ。おそらく、私が近づいたことで起こしちゃったのでしょうね」
「セフィ姉が近づいたらって、どういう意味?」
「私は、龍神王の血を持っていて、龍の氣力を持っているわ。ズメイは、同族に縄張りに入られたと勘違いして襲って来たのでしょうね」
「…!」
セフィ姉は、龍神皇国でも注目されているドラゴンエリート
龍神皇国の起源である初代皇帝が、竜族から受け取ったとされる力が龍神王の血脈であり、その血を色濃く受け継いでいるのだ
龍神王とカイザードラゴンの力は、数ある竜族の力の中でも特に強力だ
「グオォォォ!」
ズメイの尻尾の先端が切断された
大型のバトルアックスを軽々と振り回し、ロケットランチャー使いの騎士が叩き切ったのだ
その刃の先には炎が纏われている
「す、凄ぇ…」
「ヤマトといったな。特技は、属性効果と身体強化の両方を併用するのが基本だ、覚えておけ」
特技とは、肉体の力である氣力と霊体の力である霊力の合力、輪力を使った技能
魔法ほど広範囲な効果は少ないが、破壊力のある属性近接攻撃と身体能力を単純に強化する身体強化技能があり、魔法よりも発動が早いという特徴がある
モンスターも、一瞬だけ筋肉を増強してのタックルや、腕力を強化しての投石などで輪力を使ってくる場合があり、人類を死傷させるのに十分な威力を持つ
更に、属性を纏った近接攻撃は、炎や雷を纏うことで凶悪な攻撃となり、その最たるものはドラゴンのブレスだ
「あの騎士はイディ。ロケットランチャーや銃が好きな変わり者なんだけど、近接攻撃では火属性の特技を好むわ。炎の斬撃は火炎斬りね」
イディと呼ばれた騎士の攻撃によって、ズメイの横っ腹がざっくりと斬れる
火炎斬りの熱によって傷口がただれて白い湯気が立ち上がる
「あの鎧って…」
「イディの鎧はパワードアーマー。内部動力によって背中側にアームが付いていて、両手の他にもう一つ武器を使えるのよ」
「そ、そうなんだ」
パワードアーマーとは、動力を持った鎧のこと
通常はモーターなどによって筋力を強化し、車でさえ持ち上げられる力を発揮する
しかし、プロの騎士は闘氣によって、そこらのモーターよりも強い筋力を得ることが出来る
そのため、イディは単純に腕の数を増やすためにパワードアーマーを使っているようだ
アームにロケットランチャーや大口径のバスーカ砲を装備して遠距離攻撃に使っている
「イディは元軍人で、後から闘氣に目覚めたの。その軍人の経験を生かして、騎士になった今でも銃火器を取り入れているのね」
ぞんなイディの脇では、我が学友が果敢に斧を振り下ろしている
ヤマトは土属性の輪力を使って質量を持つ石のような固体を物質化
ストーンアックスを叩きつけてズメイの鱗を削っていく
「ヤマト、下がれ!」
ゴッガァァァァァァァン!
ズメイが牙を振り下ろそうとした瞬間、イディの背中のアームが持っていたロケットランチャーが発射
ズメイの胸辺りで爆発を起こす
狙われていたヤマトを助け、かつカウンターをぶち込んで体制を崩したのだ
その時、弓使いと魔法使いの騎士が、それぞれミィとフィーナを伴って動き出していた




