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序章 第三話 騎士の狩り

用語説明w

立ち入り制限地区

モンスターの生息域であり、人類の支配権外の区域。安全性のために立ち入りが禁止され、騎士、軍、モンスターハンター資格を持つ者以外は特別許可が必要


騎士

闘氣(オーラ)を使うBランク以上の戦闘員。国家が保有するモンスター対策と国防の最終兵器であり、各国の騎士団にスカウトされてなる職業




「チチチチチ……」


どこからか、鳥の鳴き声が聞こえてくる



森林が広がる丘陵地帯を、ある一団が歩いている


「セフィリア様、間もなく目標ポイントです」


「分かりました。斥候二名は周囲の検索を」


「了解」


セフィ姉が指示をすると、男女の騎士が俺たちを追い抜いて走り去っていく



「それじゃあ、小休止」


「つ、疲れた…」


セフィ姉の言葉で、俺たちは地面に座り込む


ここは龍神皇国北区とファブル地区の間に広がる立ち入り制限地区

ここから北方に森林地帯が広がり、広範囲にモンスターが分布している


この一団は、セフィ姉が率いるプロの騎士の一隊

モンスターハントのために立ち入り制限地区に入っている


そして、そんなプロの騎士に同行しているのは、騎士学園を卒業した騎士の卵たち四人


俺とフィーナ

そして、騎士学園で同じパーティを組んでいたヤマトとミィだ


ヤマトは獣人で、龍神皇国の騎士団にスカウトされており、入団試験を受ける予定

ミィは魚人で、龍神皇国立騎士大学へ進学を目指している

卒業後は、龍神皇国騎士団へ幹部候補生として就職することになる


俺とフィーナは一般大学への進学希望で、同じ騎士の卵でも進路は大きく分かれた



「フィーナとラーズ、受験勉強は進んでる?」


「一気に進んだよ。…セフィ姉のおかげで」


「良かったじゃない。ラーズなんて、自分に甘いんだから」


「ミィだって同じだろ。推薦貰ったからって、試験で油断するなよ」


「しないわよ。騎士学園の名に泥は塗れないんだから」



ちなみに、セフィ姉が所属し、ヤマトとミィが就職を目指している龍神皇国騎士団はかなりの名門

規模や質はペアの中でもトップクラスだ


それだけ入団は狭き門であり、プロの騎士の中でも最難関だ



「セフィリア様!」


ドッゴォォォォォン!



激しい地響きと、土砂の破裂

何かが丘の近くで暴れ始めた


「あ、あれは…!」


「ま、まさか、ズメイ!?」


男性と女性の騎士が指す方向の丘の上には、頭を複数持つドラゴンが姿を現した



「グオォォォォォーーーーーン!!」


響く怒声



ズメイとは、三つの首を持つ異形型のドラゴン

その背に大きな翼を広げている



「飛んだわ、総員迎撃態勢!」

セフィ姉が叫ぶ


プロの騎士は五人

すぐさま、フォーメーションを組んで武器を抜く


五人中、四人が剣や杖を構えているが、一人は巨大なバスーカ砲を担いだ



「銃みたいな武器を使う人もいるんだね」

ミィが言う


プロの騎士とは、Bランク以上の実力を持つ戦闘員のこと

そして、そのほとんどが近接武器、又は杖を使っている


その理由は、Bランク以上の条件である闘氣(オーラ)の存在だ




バチバチバチッッ!


ズガガァァーーーーーーーーッ!



「ぐあぁぁぁぁっ!!」




一番先頭に走り出た騎士に対して、ズメイが雷属性のブレスを放出

上空から雷が叩きつけられた



ドッガァァァァァァァン!


「グギャァァァァァッ!」



バスーカ砲がズメイに直撃

バランスを崩してズメイが落下して来る



「ディフェンダー、前へ! 一名はコリントの救出を!」


セフィ姉が指示すると、二人の騎士が飛び出していった



雷属性のブレスとは電気エネルギーであり、人体に直撃すれば体内に熱傷を負い、心臓や脳神経が焼き切れて即死する

しかし、コリントと呼ばれた騎士は生きており、後方の杖を持った騎士の回復魔法で治療を受けている


なぜ死ななかったのか

その理由が、闘氣(オーラ)



闘氣(オーラ)


精神の力である精力(じんりょく)と肉体の力である氣力の合力、闘力を使った技能

・体内に満たすことで身体能力を強化し、筋力や耐久力を増強させる身体強化作用

・身体を覆うことで物理的な力を跳ね除ける、物理作用(バリア)


この二つの作用を持ち、更に、身体に身に付けた防具や武器を闘力で覆うことで、その硬度をアップさせることが出来る


しかし、肉体の力である氣力は、肉体と接した状態でないと維持できないため、身体から離れたものには作用し辛いという特徴がある

そのため、投射される物体に闘氣(オーラ)を作用させることは難しい



…これが、騎士が近接武器を使う理由だ

身体に身に付けた近接武器は、その頑強さを強化し、硬度によって高い攻撃力を得る

しかし、弾丸を射出する遠距離攻撃では闘氣(オーラ)のよる威力向上が見込めないのだ



「おああぁぁぁぁぁっ!!」


ドッガカカカッ!



大型のタワーシールドを持った騎士が、ズメイの頭突きをガード

体重差は明らかなはずなのに、騎士は全く崩れずに攻撃を抑え込む



ゴシャッッ!


「ガァァァッッ」



騎士が、片手に持っていたメイスを叩きつける

その威力は高く、三つの内の一つの頭が地面に叩きつけられた



「す、すげぇ…!」


「ふふっ、さぁ、実習よ。四人で右側の頭を攻撃してみなさい」


「えっ!?」


俺たちは、セフィ姉を振り返る


「アーロンが抑えている今がチャンス。このチャンスを逃したら、討伐が終わっちゃうわよ?」


「…!?」



俺たちは、慌てて武器を取り出してズメイに走っていく


俺たちだって、騎士の卵だ

騎士学園でモンスターと戦って来た


プロの騎士相手にだって、負けるものか!



「ヤマト、ラーズ、前に! 最初に防御力を下げるから!」

ミィが言う


ミィは、俺たちのパーティのリーダーで司令塔だった

周りを見渡し、指示を出すことでパーティの実力を引き出すのだ



ドスッ!

ドスッ!


ボウガンで矢を射出

しかし、ただの矢ではない


この矢には文様が描かれており、魔法を付加できるようになっている

腰に付けた杖で雷属性軟化魔法を発動

これは分子の共有結合を一時的に弱める魔法


ボウガンに乗せて、ズメイの首の一つに撃ち込んでいく



ズガァッ!


「うおぉぉぉっ!!」



タワーシールドでズメイの尻尾をガードしたのはヤマト

近接攻撃と、敵の侵入を防ぐ壁役(タンク)であり、土属性が得意だ


土属性の特技(スキル)、ストーンアックスを叩きつけてズメイの鱗を抉りながら、攻撃を要所要所で防いでいく



「ヤマト、無理しないで!」


フィーナが魔法を発動



氣属性活力魔法


聖属性回復魔法は傷を塞ぐのが目的だが、こっちはスタミナの回復と疲労軽減の効能

人は力を入れ続ければ疲労で動けなくなるが、この魔法を使うことで活動時間を延ばすことが出来る



「ラーズ、ブレスが来るよ!」


ミィが叫び、水属性霧状魔法を発動

水蒸気のような靄がモクモクと発生


俺はすかさず杖を構えて風属性風流の魔法でズメイの方向に押し流す


そして、すぐにロングソードを構えて風属性の特技(スキル)を発動、身体の周りに風を集める

その風に、今度は杖で風属性魔法を発動、集めた風を身体の周りで回転させる



ブオォォォー――――ッ!!



俺の、騎士学園時代のオリジナル技、ドラゴンエッグ

魔法と特技(スキル)の合わせ技であり、風の噴出による高機動力と、風の殻による防御性能を持つ



バチバチバチッッ!


ズメイが雷属性ブレスを吐き出す

しかし、霧と風によって雷が放散し、威力が大幅に減衰



そこに、風を纏うドラゴンエッグで俺が突っ込む



「フィーナ!」


「うん!」


ミィの声で、フィーナが魔法を構成



あれは、フィーナのダブルマジックによる複合魔法

発動に時間が掛かるが、雷属性と火属性の魔力を併せて、熱線のように発射する高威力魔法だ



「俺も負けてられねぇ!」


俺は、風の特技(スキル)と魔法を、闘氣(オーラ)で覆う



フィーナが属性を重ねるのなら、俺は魔法と特技(スキル)闘氣(オーラ)を重ねる


俺の必殺剣、その名を重属剣という


異なるエネルギー、魔法の源である魔力、特技(スキル)の源である輪力、闘氣(オーラ)の源である闘力を剣に重ねて爆発させる、高威力攻撃


しかし、一発で動けなくなる、とてつもなく燃費の悪い爆発剣だ





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― 新着の感想 ―
[一言] ブックマークに追加ァ!!! いやぁ、ペース的に大学部分までやれるのか気にしてたんだよね! 見せてもらおうか、ラーズ君のキャンパスライフとやらを!!
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