説話 ですペア
ですペア
デスティネーション ペアの略
行き着いたペア、究極のペア、一つになるペアという意味だ
例えば、連星となった星々…
例えば、融合した文明…
例えば、出会った科学と魔法…
例えば、運命の番…
ですペアとは、行き着き、出会う
そして、対となり、一つとなるべき番のことなのだ
ここは、科学と魔法が一つとなり、混ぜて煮こまれたような世界
銀河の中に無数に存在する恒星
その恒星を太陽と呼び、太陽系と呼ばれる惑星系を構成している
そして、この太陽系の第三惑星は、ペアと呼ばれる二連星
惑星ウルと惑星ギアが、互いの重力で相互に周回しながら太陽を公転している
ウルとギアはそれぞれが生物圏を持ち、お互いの人類が行き交うことで、ペアとして一つの文明を作り上げている
惑星ウル発祥の魔導法学から成る魔法文明
惑星ギア発祥の科学から成る物質文明
現在のペアは、この二つの文明が高度に融合した魔法科学文明が発展している
このペアで使われている暦は「天地暦」
これは、ペアが構成された歴史的出来事を起算点として作られた暦
現在は天地暦四千年を数える
この歴史的出来事とは、ペアが構成されるという天体現象のことだ
約四千年前、ペアが誕生した頃
惑星ギアの人類は絶滅の危機に瀕していた
物質文明が崩壊しかけていたのだ
その理由は戦争
しかし、人類同士の単なる戦いではない
人類の存亡を駆けた生存闘争だ
そして、その戦いに物質文明は敗北しかけていたのだ
その相手とは、まるで「神」
現在では、高次元生命体と呼ばれることもある存在
しかし、それは人類に牙を剥く存在であった
当時の人類は、その存在を神と呼ぶことができなかった
なぜなら、信仰の全てを否定されることになるから
神という呼称は、人類の守り手でなければならなかったから
そのため、当時の人類は敵対する存在を「神らしきもの」と呼称
神の姿と力を真似た、まがいものと断定したのだ
しかし、神らしきものは強かった
原理不明の力が物質文明を破壊し、核爆弾をものともせずに都市を破壊して移動していく
惑星ギアの人類は涙を流した
ここで歴史が潰えることに
幼き次世代の子供達を守ることが出来ないことに
…しかし、その時
奇跡が起こった
ただの奇跡ではない
人類を救った奇跡だ
突如、ギア直近に巨大な重力源が発生
空間が歪み、ギアと同程度の質量を持つ、惑星ウルが出現したのだ
ギアとウルは、重力によってお互いに周回を開始
出会った二つの惑星は二連星となり、ペアが誕生した
…惑星ウルがどこから現れたのかは分からない
しかし、神らしきものが惑星ウルへと攻撃目標を移したことで、惑星ギアの人類の寿命が少しだけ伸びる結果となった
惑星ウルにも人類が存在しており、ギアの物質文明と同程度の文明を持っていた
惑星ギアと惑星ウルの人類は、すぐさま邂逅を果たす
生き残るために、否応なくお互いの力を合わせることとなった
物質文明を発展させた惑星ギアとは違い、惑星ウルは魔導法学を発展させた魔法文明を擁していた
魔導法学を理解することで、神らしきものの正体不明の力が、現代でいう魔力と呼ばれるエネルギーであることが解明される
魔力を使う存在に対しては、魔導法学のエネルギーである魔力や輪力、闘力、いわゆる「三大元応力」でダメージを与えられることが判明
しかし、これらは生命体の魂を中心とする力
高次元生命体に対して、あまりに矮小な存在である人類の魂の力では対抗が出来ない
そこで、物質文明が有する原子力発電に白羽の矢が立った
この時代の科学者と魔導士が必死に理論を構築
二つの文明が融合する最初の一歩、魔力・電力相互変換理論が完成した
神らしきものと、二つの惑星のそれぞれの人類
その決戦の地は、惑星ギアの「ポイント1192」
人類の未来を駆けた戦いは熾烈を極めた
多くの英雄が帰らぬ人となり、ウルとギアの両軍、ペアの全軍事力の六十パーセント以上が喪失
しかし、ギアの全電力を束ねて集める「ヤ○マ作戦」というありふれた名前の作戦を実行
惑星レベルの魔力総量を一瞬とはいえ実現、対神らしきものの封印術式を発動
目標である神らしきものを半永久的に封印することに成功した
…ペアの人類はこの時、自らの未来を勝ち取ったのだ
後に終末戦争アポカリプスと呼ばれるようになった、神らしきものとの戦いの時代
人類が生き残るきっかけとなった、惑星ギアとウルの邂逅
二連星ペアの誕生
この奇跡のような出来事を忘れないため、後年、この年を天地歴元年と定められた
そう
惑星ウルと惑星ギアの出会い
それぞれの人類の出会い
物質文明と魔法文明の出会い
それらは、まるで惑星、人類、文明の「ですペア」の誕生であった