表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

361/364

終章 第一話 卒業式

用語説明w


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて東玉流総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる。龍形拳の名が知れ渡り黒髪龍と呼ばれている。


ゴドー

鬼のゴドーの異名を持つ獣人男性で空手部の先輩。ケイト先輩の一年先輩だったが、留年して同期になった。好戦的な性格で、体格とセンスにも優れる。ついにプロデビューを果たしたが、訳有って電撃引退した


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。柔道はシグノイア指定強化選手なるほどで、したたかな性格のヤワラちゃん


「おはようございます」


「あら、フィーナちゃん。かわいい」


カエデさんが、サクラちゃんと一緒に俺とフィーナを見送ってくれる



今日は、俺とフィーナの大学の卒業式

たまたま、同じ日だったのだ


フィーナは美容院に行き、大人なスーツを着ている


ドレスとか、そういうのを着ればいいのにと言ったのだが、クレハナの成人式でどうせ着るからと言って首を横に振った



「ラーズ君も決まってるわよ。行ってらっしゃい」


「ありがとうございます」

「行ってきます」


「あいあーい」


サクラちゃんが手を振ってくれた



「それじゃあな」


「うん、後で」


俺は駅でフィーナと別れ、大学へと向かう




オーギュスト研究室



「お世話になりました」


「卒研、頑張ったね」

「お疲れ様」


俺とアン、アルバロが卒業の挨拶

ブレ先輩とジャクリーン先輩がねぎらってくれる



「アンも挨拶するんだ。研究室に残るのに」


「ケジメよ」


「俺、留年しなかったのは奇跡だ…」

アルバロが感激している



「アンは来年もよろしく頼む。ラーズとアルバロは、よくやってくれた」


「教授、ありがとうございました」


「考古学は、いつでも学ぶことができる。仕事の合間に、興味があることを調べてみなさい」


「はい」

「はい…」


俺は、アルバロは絶対に調べたりしないだろうなと思いながらも頷いた



「ラーズが見つけた古代文字のファイルは解読に出した。結果は数年待ちだから、気長に待っていなさい。連絡しよう」


「ありがとうございます。どんなことが書いてあるのか、楽しみですね」


「そうなのよ! 四千年前の人間が作ったファイル! 当時の人の考え! 技術! 文学! 可能性は無限大…!」


オーギュスト教授にスイッチが入る


研究室、やり切ったな

この光景も見納めかぁ…




・・・・・・




旧道場



「さぁ、やるか」


「二人共、本当にいいの? 卒業式に出ないで」


ケイト先輩が呆れたように言う

その前で、ゴドー先輩が拳をバキバキする



「ラーズ、覚悟はいいか?」


「最後のチャンスだからな」


俺とロンは頷き合う

俺達は卒業式さぼって、旧道場の稽古納めだ



「それじゃあ、俺からお願いします」


ロンが中央に出て、ゴドー先輩と対峙する


「よし、来い」


「本気ですからね」


「させてみな」


俺達は頼んだ

最後に、本気を見せて欲しいと



「それじゃあ、始め!」

ケイト先輩が言う


その瞬間、ロンが固まる



「…!」


そして、ゴドー先輩が動いていないのに、少し後退った



分かる、雰囲気が変わった

マジで気圧される



ドンッ!


「…っ!!」



刻み突き

空手のジャブをロンがガードした


その手を掴んで、ロンが龍形拳の腿法に…



「あ…」


ゴドー先輩が右の拳を握っている



ズドッッ!


長身のゴドー先輩のチョッピングライト

振り下ろしのフルスイングが、斜め下に突き刺さる



ドゴォッ!!


「がっ…!?」



ロンが床に叩きつけられる


…一撃


ガードしてようが関係ないパワー

だが、これはただの腕力じゃない


全身の力を収束させて、カウンターに出ようとしたドンピシャのタイミングで振り下ろす

高等技術と観察力のなせる技だ



「ぐお…」


ロンが仰向けでもがく



「ロン、無理すんな。次は俺だ」


俺はロンを下がらせて、ゴドー先輩の前に立つ



「ケイト」


「はいはい。…始め!」



ケイト先輩の声で、俺は飛び出す

だって、対峙してたって気圧されるだけだ


ワン・ツーから沈み込み、右足を踏み込んでの右フック!



ズドッ!


「…っ!?」



とんでもない膝が突き刺さる



ドガァッ!!


「…っ!?」



続けて、右のハイを振り切られる



吹き飛ばされ、壁に叩きつけられてバウンド

転がりながら、ゴドー先輩の前に戻ってきた



「さっさと立て」


「む、無理です…」



天井がグルグル回っている

え、俺、死んでないよね?



「はい、お疲れ様」


「ありがとうございます…」


ケイト先輩にスポーツドリンクを貰う


「くそー…。結局、手も足も出なかった…」


「やっぱ、伊達にKAWANAKAJIMAのチャンピオンをぶっ飛ばしてないよなぁ」


「俺達の攻撃、全部見られてた…」


「割り込まれて、攻撃をかぶせられるんだ。あんなの、どうしようもないぜ」


「二人共、卒業式の日によくやるよね」

ケイト先輩が、完全に呆れている



「…ゴドー先輩、どこまで強くなる気ですか?」


「この四年間で、ゴドー先輩との圧倒的な差だけは理解できるようになりましたよ」


俺とロンが尋ねる



「アホ、今の俺なんでまだまだだ。もっともっと上…、国内チャンピオンなんかよりさらに上の強さを手に入れる。そんな達人の一人と、お前らもやっただろう」


「…カリスマですか」


あいつ、強かった

俺とロンは簡単にやられた


ゴドー先輩も負けたらしいが、それが信じられない



「だが、俺が思う達人ってのはタンドー先生みたいな人だ。武術家としても、指導者としても、高みにいる」


「いい人ですもんね」


タンドー先生

ゴドー先輩の恩師だ


「俺は、まだ自分の実力に納得していねぇ。カリスマやタンドー先生を超える達人を目指す。しかも、その達人の中でも、ほんの一部しか行けない境地、到達者ってやつだ」


「…」


「お前たちが格闘技を続けていれば、また俺と道が交わることもあるだろうからな。その時は、またやろうぜ」


「次、会った時は負けませんよ」

「俺もっす」



あぁ…、俺達の空手部が終わってしまう

本当に、これで終わりだ



「ゴドー。東玉流総合空手部の締めだよ。最後に、何かいいことを言いなよ」

ケイト先輩が無茶振り


だが、ゴドー先輩は俺達の方を向いた


「これから社会に出るお前らに、俺が昔、道場で言われた言葉を送っておく」


そう言うと、ゴドー先輩が続ける


「自分が一番だと信じない限り、チャンピオンにはなれない。自分が一番でないなら、一番のふりをしろ。…あるボクシングチャンピオンの言葉だそうだ」


「…はい」

「ありがとうございます」



一番の振りをしてでも、挑戦する

そういう意味だと、俺は解釈する


俺は出来る

そう思い込んで、防衛軍に飛び込む



「それじゃあ、最後に写真を撮るよ。アレックス君に送ってあげるの」


「写真をですか?」


「うん。あと、今日の二人の試合も」


「な、何でですか!?」


これ以上ない程ぶっ飛ばされたのに!


「アレックス君、ロン君とラーズ君の試合を見れなかったことを嘆いていたの。それで、せめて今日のやつは送ってあげようと思って」


俺達は、道場の神棚の前で四人で写真を撮る



「あーあ…、旧道場も取り壊しか…」

「次の武部会、どこでやるんだろうな」


そんな声が外から聞こえた



「よし、後は頼むぞ」

「また会おうね!」


「はい。ありがとうございました!」

「お元気で!」


俺とロンは、ゴドー先輩とケイト先輩を見送る

今日、二人で惑星ギアに引っ越してしまうのだ



…ゴドー先輩の強さを見て憧れました

あれが格闘技を始めたきっかけです


…ケイト先輩を助けられた時

抱きつかれて感謝されたとき

あの時から、俺は格闘技にのめり込んだのだと思います


ありがとうございました

俺とロンは、二人の後姿に頭を下げた



…旧道場の神棚などを片付け、大学側に神社に返してくれるようにお願いする

そして、四年間の感謝を込めて、二人で掃除した


「さぁ、行くか」


「今日は、魚魚(うおうお)以外に選択肢ないよな」



俺とロンは、最後の飲み会へ

ロンも明日、龍神皇国の実家に引っ越しだ


何度となく通った居酒屋、魚魚(うおうお)も今日が飲み納めだ



「ラーズ、しっかりやれよ」


「ロンこそ」


「いつか、なりたいよな。達人に」


「遠いよな…。だって、ゴドー先輩もまだ達人じゃないんだろ?」


「その達人の中で、何人が到達者ってのになれるんだ?」


「それまで、格闘技続けてるといいよなぁ」


「…」


俺は、ロンとジョッキをぶつける



「とりあえず、お互いに頑張ろうぜ」


「そうだな」


ロンは消防学校

俺は防衛軍学校


最初は職業学校に入る



飲めるのは今日が最後


俺とロンは、遅くまで飲み明かしたのだった





古代文字のファイル 十章 第十六話 卒業研究4

タンドー先生 七章 第三十九話 昇段審査

達人、到達者 九章 第三十八話 B-1 その11

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ