二章 第九話 勃発
用語説明w
ロン
黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる
ゴドー
鬼のゴドーの異名を持つ獣人男性。ケイト先輩の一年先輩だったが、留年して同期になった。好戦的な性格で、体格とセンスにも優れる。その実力はプロの格闘家を並み
ケイト
茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。したたかな性格のヤワラちゃん
「おはよ」
「おーう。今日、部活行くだろ?」
「行くよ。行かないとゴドー先輩にやられるって」
今日から部活やサークル活動が開始
だが、学生の本分は勉学
俺はロンと授業へ
同じ授業を取ってるのはいい
今日は必修科目も無いので、終わったらそのまま部活へ行こう
俺達は学食に寄って昼食を食べた後、空手部の旧道場へ向う
初稽古か、ちょっと緊張する
「なぁ、ロン。各闘技の練習って何をやるんだ?」
「うん? 流派によって全然違うから、なんともなぁ。空手なら形やシャドー、ミット打ちやスパーリングじゃないか」
「スパーって殴り合いだろ?」
「いきなりスパーはないって。大丈夫だろ」
俺達は話しながら歩く
今日は、午前中だけの授業が多いのか
他の部活の人達が思ったりいる
武道館に向かっているので、あの人たちも各闘技系の部活なのだろう
「…」
「わっ、何だよ、ロン」
キョロキョロしていたら、ロンが止まったことに気づかず、ぶつかってしまう
抗議の声を上げると、ロンが眼前を睨んでいた
「あ、入学式の…」
目の前には三人の男
全員が筋肉ムキムキ、ゴツい大胸筋と太っとい二の腕を持つ
ロンが入学式初日にぶん殴られていた先輩達だ
「見つけたぜ、ガキ共。あの時は運悪く逃げられたが、今日はそうはいかねぇ」
「ちょっ…」
三人が俺達を囲むように動く
やっぱり何なんだ、この大学!
血の気多すぎるだろ、世紀末か!?
ドガッ!
「がっ…!」
ロンがぶん殴られて、壁まで後ずさる
「ロンっ!?」
「人の心配している場合かよ」
「いや、待っ…」
ゴガッッ!
「…っ!?」
今度は俺がぶん殴られて、壁際に吹き飛ばされる
「あの時はやってくれたなぁ」
「また人数を集めたんですか、先輩」
殴られてる癖に、ロンは先輩を睨み返す
お前、何でいつも喧嘩を買っちゃうんだよ!?
「一年にやられたとあっちゃ、舐められちまうからな」
「しっかりと詫びを入れて、慰謝料を少し置いて行け」
「それで許してやるよ」
「何で俺達がそんなことをしなくちゃいけないんすか?」
「…まだ教育が足りねえか」
「そもそも、あんたらが嫌がる一年の女子にしつこく絡んでたからでしょう」
「え?」
そうだったの?
だから、あの時ロンが殴られてたの?
「…何だよ、その眼は」
ロンが俺に言う
「ロンが勝手に先輩たちに喧嘩を売ったんだと思ってた」
「するわけねーだろ! 何で俺が自分から喧嘩しなきゃいけないんだよ!」
「ロン、喧嘩っ早いじゃん」
「どこがだ! 俺は紳士だ」
「おいおい、ごちゃごちゃ話してるなんて余裕じゃねーか」
三人の先輩たちが、俺達を睨みつける
「…先輩たち、ガタイいいっすね。何かやってるんですか?」
「俺たちはボディビル部だ」
「この筋肉を見れば分かるだろう」
一人が、力こぶを見せつけてくる
「お前ら、後輩には強気だな」
「え?」
振り返ると、道着のゴドー先輩が立っていた
「お、お前、ゴドー!?」
「…ったく、遅いと思ったら、こんなところで油売ってやがったのか。後で、拳立て百回だ」
ゴドー先輩が俺達を睨みつける
「す、すいません…」
「お前、こいつらと関係あんのか?」
「うちの新入部員だ」
「新入部員だと?」
ボディビル部の先輩たちが絶句する
「俺達は、先輩として後輩を教育してただけだぞ!」
「そうだ、お前は関係ねぇ」
「確かにそうだな」
焦りながら言う先輩の言葉に、ゴドー先輩が頷く
「だったら…」
あからさまにホッとする先輩
やっぱりゴドー先輩、怖がられてるんだな
「だが」
「…っ!?」
「こいつらも東玉流総合空手部の一員だ。喧嘩で負けたじゃすまされねぇ」
「だ、だったらどうするんだよ。まさか、お前が…」
先輩たちが震え始める
おいおい、そんなにゴドー先輩が怖いのかよ
「勘違いするな、やるのはそいつ等だ。ただし、一週間後にな」
「一週間?」
「お前らだって、入学ホヤホヤの素人をボコったって面白くねぇだろ。逆に言や、お前らごとき一週間で倒せるようにしてやるってことだ」
ゴドー先輩がニィィと口角を上げる
うわぁ、あそこまで挑発に特化した笑顔、初めて見た
「…バ、馬鹿にしやがって!」
「嫌なら、俺とここで三対一だ」
「…!」
先輩達は、一度思いっきり握り込んだ拳を開く
あ、ゴドー先輩とは喧嘩したくないんだ
「い、いいだろう。そこまで言うならやってやるよ!」
「そんな細っこいガキ、俺達の敵じゃねー!」
「逃げるなよ!」
「よし、決まりだ。一週間後の昼に旧道場に来い」
そう言って、ゴドー先輩は先輩達を追い払った
・・・・・・
「ちょっと待ってくださいよ!」
「ロンはともかく、俺までタイマンって!」
「…待て、何で俺はいいんだ?」
「だって、ロンは格闘技やってたんだろ。俺と違って」
「ラーズだっていいパンチ持ってたじゃねーか」
「あんなの、素人に毛の生えた…」
ゴガッ
ドゴッ
「 「…っ!!」 」
突然、降ってきた拳の二連発
その拳は岩のように硬かった
「ちょっ、ゴドー先輩痛いっす…」
「シャレになんねぇ…マジで痛い…」
「このバカ共。うちの部に入ったくせに、あんな雑魚共にやられてんじゃねぇ!」
「そんなこと言ったって、あいつら筋肉凄いし…」
「三人もいたんですよ?」
「筋肉だけで喧嘩ができるか。それに、こっちも二人いただろうが、三人ぐらい余裕だ」
「ロンと違って、俺は素人なんですから無理ありますよ」
「ともかく! これから一週間、鍛えてやる。覚悟しとけよ」
そう言って、鬼のような笑顔を見せるゴドー先輩
俺とロンは、黙って頷くしかできなかった
・・・・・・
「へー、あの時の。戦うんだ」
ケイト先輩が言う
「こいつらのデビュー戦だ」
ゴドー先輩が、竹刀を肩に担ぎながら答える
「…」
「ぐっ…」
「あいつら、評判悪いもんね。新入生とか弱い人を狙ったりさ」
「興味ねーな。小物のことなんてよ」
そんな二人の会話は、俺達の耳から入っては抜けていく
通称、右から左ってやつだ
なぜなら、俺達は拳を握って腕立て伏せをさせられている
空手名物の拳立て伏せというらしい
拳は痛いし、腕立ては辛いし
拷問か!
「おら、さっさとやれよ。稽古できねーだろ」
「…!」
これ、稽古でさえないの!?
「一週間であいつらをボコボコするんだそ。こんな事やってて、すぐに強くなるかって」
いや、あんたが勝手に約束したんでしょうが!
心で、ロンと二人で抗議
だが、口にする勇気はない
絶対、竹刀で殴られるから
「頑張って、二人共。私、強い人が好きなんだぁ」
「…!」
俺とロンがピクリと反応
「私も柔道やってるからわかるけど、強い人って凄く努力してるんだよね」
「…」
「そして、たくさん考えてる。勝つためにね」
「…」
「おら、さっきから動いてねーじゃねーか」
「ひぃ…」
「も、無理っす…」
「ったく、情けねぇ。おい、ケイト」
「何?」
「これから、こいつらに一週間で喧嘩対策を叩き込む。お前も手伝え」
「柔道ってこと?」
「そんなところだ。こいつらは別々で仕込む。俺達を舐めたらどうなるか、しっかり教えてやるぜ」
ゴドー先輩のの悪い笑顔
だが、俺とロンは床でへばっていて気が付かなかった
ロンを殴った先輩達 一章 第十七話 入学式1




