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十章 第三話 いつものバイト1

用語説明w


レイコ社長

ゴーストハンター資格を持つ有限会社クサナギ霊障警備の社長、ドワーフの女性で童顔だが年上。クサナギ流除霊術を修めた凄腕だが、社長の割に威厳と権限は少なめ


プリヤ

クサナギ霊障警備の社員、魔族の女性で営業、経理、交渉(恫喝)担当。スーツが似合うキャリアウーマンで実質の経営者(黒幕)


ピッキ

クサナギ霊障警備の社員、ノーマンの男性でシステム管理と運転、操縦担当。ゲーム感覚で情報端末や車、MEBを動かす。風貌は古のオタク、運転中以外はござる口調の人見知り


クサナギ霊障警備



「お疲れ様で―す」


久々にバイトに来た気がする

あの、やべーノスフェラトゥのインパクトが大きすぎたからだ


邪神も、よく分からん光の剣で封印された

霊障組織も完全に壊滅


ようやく日常が戻って来たのだ



「…ピッキさん、何やってるんですか?」


ピッキさんが、机の上にノート型情報端末を置いて何かやっている


「これはハッキングツールでござる」


「物理的に繋げるんですか?」


「そうでござる。端末に有線で繋げて、ネットワークに接続した情報をかすめ取るんでござる」


「またやべーことやってるんですね」


「誤解でござる。これは警察からの要請でござるよ」


「け、警察…?」


「そう、これは霊障組織の隠れ家にあった情報端末でござる。霊障組織で何人も逮捕、たくさんの証拠品の押収…」


「手が回らないから、ピッキさんが手伝っていると」


「理解が早いでござる」


「でも、警察から依頼なんて凄いですね」


「何度か、クラッキングで逮捕されたでござるからな。拙者の腕は知られてるでござるよ…」

ピッキさんが、照れながら言う


うん、この人も、ホフマンさんやビアンカさんと同じで、アンダーグラウンドを生きる人だ


「ピッキさんが作ってくれた、俺の研究室の通知ツール、助かってますよ」


「あんなの簡単でござる。大学のサーバーをちょこっと使わせてもらうだけでござるから」


「…大丈夫ですよね?」


「何がでござる?」


ピッキさんが、本当に何か分からないという顔をする

無邪気とも言う


大学の…他人のサーバーに、勝手にアクセスすることに疑問をもたない


この人も、伊達にここでバイトをしていない

遵法精神というものは持ち合わせていないのだ



「ほら、こっちだよ」


「ん?」


入口から、誰かが入って来た


「社長、おかえりでござる」


「ちょっと応接セット使うからね。さ、どうぞ」


レイコ社長が連れて来たのは、痩せた女性だった

どこかで見たことが…


「誰でござる?」


「霊障組織の構成員」


「…あっ! 思い出した、ノスフェラトゥの所にいた人だ!」


ノスフェラトゥがいた霊障組織の建物にいた女

レイコ社長が、見えるとか言ってた人だ



「霊障組織は、こういう人を集めてたんだよ」


「こういう人?」


「生まれつき、霊能力を持った人。数は少ないけど、たまにいるの」


「へー、凄いんですね」


「…」


痩せた女性が俯く

あれ、俺って何か変な事言った?



「…霊能力は、未熟だと制御ができないんだよ」

レイコ社長が、女性の肩に手を置く


「制御?」


「見たくもないものを見てしまったり、酷いとよくないものを呼び寄せてしまう」


「そ、そうなんですか…」


「人に黒い靄が付いていて、それを教えて上げたら気持ち悪がられる。そして、事故に遭ったら、私が変なこと言ったからだって言われて…、とかね」


「…」


「私も同じだった。でもね、私は助けられた。自分の霊能力と向き合う方法が手に入ったから」

レイコ社長が、痩せた女性に言う


「え…」


女性が顔を上げた


「クサナギ流の除霊術。そこで、自分の霊能力を活かす方法を教えて貰えた。私にしかできないことが出来るようになった。それが、今のこの仕事よ」


「…」


「せっかく、除霊組織の件は不起訴だったんだからさ。自分の力と向き合ってみない?」


「……」


「除霊術を使うまでじゃなくてもいい。見たくないものを見なくて済むように、そこまで訓練をしたらいいよ」


「…」


痩せた女性が頷く


「うん、決まりだね。どうする? クサナギ流じゃなくてもいいなら、家の側の霊能力系の訓練できる場所を探してみようか」


「…おねがいします……」


蚊の鳴くような声で、女性がお礼を言った




痩せた女性を、何人かの人が迎えに来た

そのまま、車に乗って去って行く


「…霊能力がある人は、ああやって悪い奴らに利用されることがあるんだよね」


レイコ社長が車を見送る


「利用って、何をされたんですか?」


「この世の良くないもの。悪霊とか、悪い縁、そう言ったものを引き寄せる餌にされていた」


「え…」


「この世の悪意を、人類社会の闇を見続ける。その気持ちが分かる?」


「それは…」


「人は、人が嫌だと思う気持ちに対して悪意って名付けてる。本当に醜くて、怖くて、気持ち悪いものを。あんなもの、自然界にはない。人間社会にしか、ね」


そう言って、レイコ社長は自分の手を撫でる


その手は、うっすらと線がたくさん入っている

何度も何度もナイフで切り付けて、図形や梵字を刻み、術を発動してきた


自分の身を削って作る痛々しい術

レイコ社長の、威力を引き上げる除霊術だ



…レイコ社長の過去

もしかしたら、さっきの女性と同じような経験をしてるんだろうか


聞いてみてもいいものだろうか



「ただいまー」


「お、お帰りでござる」


ピッキさんが、情報端末から顔を上げる

帰って来たのは、プリヤさんとビアンカさん、ホフマンさんだ



「あれ…」


そして、その後ろにはスーツの男性が二人

確か、公安の人だ



「終わったでござるよ、解析」


「速いですね、さすがです」


公安警察のスーツの男性が、ピッキさんから情報端末を受け取る

ロックが解かれ、ログインできるようになっていた



「さぁ、これからドンドンと依頼を受けて行くわよ! やっと、公安からも許可を得たわ!」

プリヤさんがガッツポーズ


「何を言ってるでござる?」


「だから、霊障組織は完全に壊滅。今回の事件の終息宣言が出たのよ。警察から」


「長かったな」

「多少危ない目にも遭ったしな」


ホフマンさんとビアンカさんが笑う


いやいや!

邪神に霊障組織の襲撃に、ノスフェラトゥ…


どこが多少だ!

危なすぎるだろ!



「でも、突然でしたね。霊障組織の壊滅」


「我々、公安も遊んでいたわけじゃないからね。その結果だよ」


公安の若い方の男が言う


「残念ながら、それだけじゃないけどな」


「ちょっと!」


もう一人の年配の男性が言い、公安の若い男の方が慌てた


「いいじゃないか。クサナギ霊障警備さんのおかげで、霊障組織を潰せたのは間違いないんだから」


「ですけど…」


「実はな。龍神皇国から情報提供があったんだ」


「龍神皇国?」


ホフマンさんが言う


「そうなんだよ。それで、奴らの拠点の場所が複数分かったんだ」


「あ、もちろん、俺達公安も把握はしてましたよ。ただ、把握してなかった場所の情報もあったってだけです」


公安の若い方が言い添える



「それで、ゴーストハンターとバウンティハンター、防衛軍にも要請して、一気に抑えられたんだ」


「お、そうだ。ラーズは防衛軍になるんだよな」

ビアンカさんがこっちを向く


「え、あ、はい。一応…」


大学を無事に卒業出来たらだけど


「へー、そうなの?」

公安の人が尋ねる


「採用試験には受かりまして」


「えっ、そうなの!?」

レイコ社長が入って来る


「はい、おかげさまで」


「この裏切り者!」


「喜んでくださいよ。採用試験を突破したんですから」


レイコ社長がプリプリしている


「採用試験くらいで、情けないことを言うんじゃないよ」


「ビアンカさん…、頑張ったんですよ、俺」


「あんたは、父親が放出したおたまじゃくしの、何億倍の受精倍率を突破して生まれて来たのよ? 採用試験の倍率ごときにびびって…」


「プリヤさん、セクハラチックな比喩はやめて下さい」


「はっ、社会人になろうとしているくせに、何をぬるいこと言ってるの。セクハラとパワハラは、躱し方と距離感が大事なのよ」


「いったい、何の話を…」


「あ、皆さん。うちから依頼が入りました」


「へ?」


公安の二人が、PITを操作する


「まいどー。警察からの依頼は大歓迎。取っぱぐれることがないし、恩に着せられるしね」


「プリヤさん、絶好調ですね」


「ラーズ、これから忙しくなるんだから、どんどんバイト来なさいよね!」


「俺、明後日からまた龍神皇国へ行くんですよ。研究室のフィールドワークで」


「遊んでばっかじゃない!」


「いや、行かないと卒業できなくなるんです!」


俺は、レイコ社長に言い返しながら、出発の準備のために二階へ駆け上がった




ピッキさんのツール 十章 第一話 研究室の様子

痩せた女 九章 第四十二話 封印ミッション2


毎日投稿と言いながら、昨日は投降しようとしてたら寝落ちしました…汗

と、言うわけで、本日二回目(昨日分)の投降となります!

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