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閑話10 授与式

用語説明w


始源戦争:龍神皇国の前身、龍神皇帝国が興るきっかけとなった、歴史上最後の魔大戦。ダンジョンより現れた魔王との戦いをきっかけとした、その後の国同士の戦乱から龍神皇帝国成立までの戦争


セフィリア

竜人の女性で龍神皇国の貴族ドルグネル家の若き当主。ドルグネル流武器術を修め、騎士としても活躍中。その長く美しい金髪から、金髪の龍神王と呼ばれているドラゴンエリート


龍神皇国 中央区

竜宮殿



大きな式典が行われている

これは、毎年の年末に行われる、国に貢献した者に対する表彰式だ



「ドルグネル家、セフィリア・ドルグネル」



名前を呼ばれ、美しく長い金髪を揺らしながら、一人の女性騎士が皇帝陛下の前に進み出る


ドルグネル家は今年、とてつもない躍進を果たした



その理由は、貴族の序列四位、メリュジンヌ家の犯罪を暴いたこと


ドルグネル家をハメるために、神らしきものの教団という犯罪組織と手を組んでいた

それだけではない、セフィリアの父であり、ドルグネル家の前当主、ジュリアノ・ドルグネルの暗殺を実行した


更に、数々の犯罪行為を暴いて見せた


メリュジンヌ家は、序列十位のツヴェルガン家とも結託して、シグノイアやハカルに工作を仕掛けていたことが判明

彼らを処罰するための証拠を明らかにした


その結果、ドルグネル家には、その功績と賠償が認められ、序列四位と十位の利権の大部分が譲渡されることとなったのだ


また、序列四位と十位の貴族は、龍神皇国の中でも上位の権力を誇る

よって、それに連なる下位の貴族達がたくさんいた


まずは、ドルグネル家を審議院に告訴していたヒュベイル

他にも、関連の貴族達は、御家解体を免ぜられる代わりに、多くの利権をドルグネル家に譲渡し、実質、ドルグネル家の傘下となったのだ


急速に勢力を拡大したドルグネル家は、カエサリル家に継ぐ、序列二位に躍り出ることとなった



「………今後の龍神皇国の守り手となるべく、この鎧を授ける」


皇帝陛下が宣言した


鎧にかけられていた布が取り払われる

すると、真紅の美しい甲冑が姿を見せた


周囲から、「ほぉ…」という感嘆の声が聞こえる



紅龍の怒り


四百年前の始源戦争の際、龍神皇国を建国した勇者が使っていた鎧

龍神皇国王家に伝わる伝説級の装備であり、国宝

かの魔王の攻撃も耐え抜いた、トンデモ性能を誇る



「セフィリアよ、着て見せてくれ」


「はい」


セフィリアは、装束の上から真紅の鎧を纏う

そして、愛剣である双剣「白宝双剣」を抜いた


白宝双剣とは、白竜の牙とオリハルコンを使ったドルグネル家の家宝だ



「はぅ…」


セフィリアの姿に、観客が見とれる



長い金髪

真紅の鎧

純白の双剣


遠くからでもわかる、美しい色彩のコントラスト

これぞ、正に英雄の姿であった



「セフィリアよ。それらの装備をスピリッツ装備となるまでに昇華させ、国のために尽くせ。大義であった」


「…」



セフィリアは、膝をついて頭を垂れる


会場内に、大きな拍手が巻き起こった




スピリッツ装備とは、持ち主と武器防具との間に絆が生まれた伝説の装備

ただの鉄の剣が、伝説級の装備に生まれ変わるほどだとか




・・・・・・




「セフィリアさん、お疲れ様。素晴らしい授与式だったわ」


「キリエさん、ありがとうございます」


序列一位の貴族、カエサリル家の当主、キリエがセフィリアに声をかける


「その鎧の他にも、何か貰ったんですって?」


「相変わらず、耳が早いですね」


セフィリアは、笑いながら書状を見せる


「…竜族の呪印?」


「はい。私が賜った龍族の強化紋章と対を成すものだそうです」


「ふーん…。それじゃあ、凄い効果があるんだ」


「いえ、それが…。性能は私の紋章に引けを取らないらしいのですが…」


「問題があるってこと?」


「はい。強い怒りに呑まれて、理性を失って暴れ回るようです」


「…そんなバーサーカートリガー、使えないじゃない」


「そうなんです。ですので、しばらくは国で保管してもらうことになりました」


強力でも、使えなければ意味はない


世界には禁止されている兵器が多く存在する

この呪印も、その類のものだろう


制御できない兵器など危険なだけ

制御できると思い込んでいる場合より、若干マシな程度だろう



「セフィリアさん。これからはどう動くの?」


「まずは足元を固めようと思っています」


「ドルグネル家の運営ということね」


「はい。そして、私自身の成長です」


「成長?」


キリエはセフィリアを見つめる


「龍神皇国所属の神龍ランク、金龍に師事することになりました」


「それは、まぁ…。早いことね」


龍神皇国には、ドラゴンの力を持つ者がいる

何種類も存在するが、その中でも特に強力なものが、皇帝の血筋である龍神王の血と、カエサリル家に代表されるカイザードラゴンの血だ


龍神王の力は皇帝の血筋であり、貴族の中にも血縁者がいる

ドルグネル家もその一つであり、セフィリアには色濃く発現した


しかし、これらドラゴンの力は人類にとっては異質

そのため、本物のドラゴンに教えを請い、力の制御を学ぶ必要があるのだ


龍神皇国は龍族と契約を結んでいる

龍の力と叡智を得る代わりに、皇国の支援を与えている


この契約は、四百年前の始源戦争の時代に、初代皇帝となった勇者がドラゴンの力を借りて国を統一したことに遡る


その時に育まれた絆から、龍神皇国はドラゴンを友とし、今もなお、お互いの交流が成り立っているのだ


金竜は、美しい黄金の鬣を持つ東洋龍

龍神皇国の友好的なドラゴンの中でも最上級の力を持つ



「それじゃあ、私はそろそろ失礼するわ。また、お茶をしましょうね」


「はい」


セフィリアは、キリエの後姿を見つめる



義兄弟の契り


カエサリル家のピンク

皇帝の孫であり皇太子であるソロン


セフィリアと共に、この三人は新世代の龍神皇国のドラゴンエリートとして注目されている



ドラゴンの力は強力だ


力に目覚めることが出来れば、大きな戦力となる



ドラゴンとは二面性を持つ

それは、誇りと闘争


縄張りをつくり、その土地を守護する

それが誇り


敵に対して、その牙と爪で喰らい付く

それが闘争


守護と破壊を司る存在なのだ


この特性のことを、アライメントと呼ぶ

ドラゴンのアライメントは、誇りと闘争の二つがあるのだ



また、ドラゴンは、身体特徴で四つに分類できる

蛇型の東洋型、トカゲ型の西洋型、そして、多頭タイプなどの異形型、宝玉を作り出す宝珠型だ


ここから、更に骨格構造で震竜や飛竜、水竜、顎竜、獣竜などの種に分類される



そして、各ドラゴンの分類として、二つのランクがある


一つ目が成長度に応じたランク


幼竜

子竜

成竜

角竜

老竜

古竜


次に、能力に応じたランク


牙竜

属性竜

知能竜

竜王

神竜

極竜


この二つのランクの最高位は、古極竜(エンシェント・マスタードラゴン)であり、高次元生命体である神にも等しい力を持つという伝説のドラゴンだ



セフィリアが教えを受ける金龍は、神竜ランク

Aランクを超える戦闘ランクであり、もし人類に牙を剝いたならば、間違いなく魔王と呼ばれる存在となる


それほどの力を持っているのだ

仮にこれが、極竜(エンシェント・ドラゴン)ランクだった場合は、人類の絶滅は避けられないだろう



「神龍ランク…、どれほどのものなのかしら」


セフィリアは呟く



超常的な存在に出会える

いい土産話にはなるだろう


ラーズやフィーナに話してあげるのが楽しみだ



「…そう言えば、ラーズの就職先はどうなったのかしら?」


ラーズを騎士団の事務職に誘ったのに、返事をくれない

来てくれると思っていたのに


セフィリアは、自らの修行の準備をしながら、ラーズの進路に気を揉んでいた




竜宮殿 九章 第十二話 セフィリアの受賞1

龍族の強化紋章 九章 第十三話 セフィリアの受賞2

ピンク、ソロン 閑話3 夏休み


九章完結です

読んで頂きありがとうございます!

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