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九章 第三十四話 B-1 その7

用語説明w


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて東玉流総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる。龍形拳の名が知れ渡り黒髪龍と呼ばれている


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。柔道はシグノイア指定強化選手なるほどで、したたかな性格のヤワラちゃん


アレックス

トウデン大学にやって来た留学生で、ドワーフの男性。ギアのテルミネト出身で、レスリング経験有りだがヘタレで心が折れやすい。東玉流総合空手部の後輩


「ロン、何言ってるんだよ!」


「ラーズ。いい機会だ、だろ?」


ロンが俺の顔を見る


「…」


「やろうぜ、今日」


「で、でも…。何も、今じゃなくたっていいだろ。ツカサ・ファミリーの件だって、何も終わってないんだから」


「やりたいんだ、俺が。お前と」


「…」


「ムカつくけど、強くなったよ。ラーズは」


「それは、ロンだって同じだろ」


「本気で、妥協無くやりたい。今日以外に、できると思うか?」


「それは…」


俺達は卒業する

それぞれの就職先に進む


東斗杯という舞台を失った俺達に、ガチでぶつかれる場所はない


道場での稽古じゃない

本気で、プライドをかけてやれる場所


真剣に、忖度なしにぶつかり合える機会

ロンは、そのことを言っているのだ



「…俺は、右回りに進む。次に会ったら、やろうぜ」


「…」


「それまで、負けるなよ」


「ロン…」


急にスイッチの入ったロン

俺は、ゴドー先輩とケイト先輩を振り返る



「仕方ねーな。ケイト、ロンについて行け」


「…分かった。本当、男ってバカよね」


いや、止めないんですか?

…止められないんですね、先輩でも



ロンが、振り返らずに教室を出て行く


それに、ケイト先輩がついて行く

教室を出る際に、俺の顔を見て小さく頷いた




廊下で、ロンが振り返る


「…ケイト先輩、すみません。急に勝手なこと言って」


「まぁ、気持ちはほんの少しだけ分かるよ。本当に、少しだけど」


「…」


「ラーズ君、強かったもんね。相手の東玉流の人も強かったのに」


「嫉妬したんですよ、俺。だから、いい機会だなって。今日なら、本気でラーズを殴れると思うんです」


「男の子って、難しいよねぇ」


ロンとケイトは、二人して歩いて行く

すると、前から別の闘技者が歩いてきた



「あっ、お前!」


「やっと見つけマシタ、ロン先輩!」


「えっ、アレックス君!?」


「ケイト先輩、相変わらず魅力的デス」


「お前、何やってるんだ、こんなところで!」


「もちろん、参戦したんデスヨ。サプライズで皆さんを驚かせようと思ッテ」


「アレックス君、マフィアのイベントに気軽に参加しちゃダメじゃない」

ケイト先輩の表情が変わる


「ア、イヤ、ソノ…。でも、こうでもしないと、ロン先輩にちゃんと挑めないと思ってデスネ…」


「どういう意味だ?」


「だって、ロン先輩、優しいカラ…。本気でやって欲しくテ」


「…」


ロンは黙ってしまう


だって、ラーズと本気でやるために、さっき別行動したばかりだから

アレックスと、全く同じ動機だったからだ



「だからって…」


「ケイト先輩、俺、やりますよ。アレックスの気持ち、少しわかるし」


「ロン君…」


「ただ、後で思いっきり怒鳴り散らしてください。マフィアのシノギに簡単に乗りやがって」


「ヒィッ…、何も言えまセン! ゴメンナサイ!」


「もー、しょうがないね。でも、アレックス君。ラーズ君とはやらなくていいの?」


「…ラーズ先輩には、入部初日にボコボコにされましたカラ」

アレックスは遠い目をする


入部初日、調子に乗って、頭突きした瞬間にラーズ先輩がキレた


めちゃくちゃ怖かった

目がイッていた

このまま殺されるんじゃないかと思った


でも、話したら普通の人

気軽に話せる先輩だった



「双竜コンビ、お二人に真剣に挑ム! それが、私のトウデン大でのケジメです!」


アレックスが構える


「来いよ」


ロンも、そのまま拳を顔の前に上げる



教室に入ることもない

そのまま、廊下で勃発した先輩・後輩対決


ケイトは、少し下がって見守る



「…」

「…」


互いに、間合いを測る



アレックスは、タックルの姿勢

同時に、拳で殴る準備もできている


ロンは左前のオーソドックス

だが、そこから足を進めれば武術を繰り出す構えに変化する



「………っ!!」


アレックスが、拳と視線を動かした瞬間、超低空ロングタックル



ロンがギリギリで反応するが、遅い

腰に腕を回したアレックス


それほどの、渾身のタックルだった


しっかりとロンの腰を引き付けたアレックス

そのまま、ロンを仰向けに倒す


テイクダウンに…



ドシャッ…


「…っ!?」



今度はアレックスが目を身開く


ロンが仰向けに倒れながら、アレックスの上体を掴んで背面方向にぶん投げた



柔道版スープレックス、俵返し

れっきとした柔道の投げ技だ


お互いに仰向けになったと思いきや、ロンはその勢いのまま後転


膝をアレックスの上に落とし、マウントポジションに



ドスッ!


「ぐほっ…」



衝撃で息が止まったアレックス


その時、目にに入ったのは、ロンが拳を振り上げている姿だった




「…大丈夫、アレックス君」


「ウ…」


しばらくすると、アレックスは目を覚ました


「いいタックルだったが、まだまだだな」


「…完敗デスネ」


アレックスは胡坐をかく


「このB-1が終わったら、ラーメン行こうぜ。お前も来るだろ?」


「…私の留学は終わりマシタ。もう、別の道デス。またいつか会いまショウ」

アレックスが、少し寂しそうに言う


「そうか…」

そんな、アレックスの気持ちを汲み取るロン


「えー、行こうよ、アレックス君。せっかく会えたのに!」

だが、ケイトはアレックスの腕を掴む


「………仕方ないので、行きマスー」



「お前、何も変わってないな。この野郎」


ゴキッ!



「痛イ! 酷イ!」


アレックスは、頭をさすりながら立ち上がった




・・・・・・




観戦者タフマンは、ため息をついた


この興奮が、あと少しで終わってしまう…


今年のB-1はいい

とてつもない熱戦の数々


残り少なくなった闘技者

その試合を見過ごさないように、必死にモニターをチェックする



「…お前がブラックマンバか」

ユースフが、バキバキと拳を流しながら言う


「なんだ、テメーは。…空手キッド? だせーファイターネームだな」


「空手じゃ結果を残せなかったらしいな。ひがみかよ」


「そういうテメーは、過去の栄光に縋ってるだけか」


「そりゃお前だろ。クソみてーなチームの猿山の大将」


「ムカつく小僧だ」


空手キッド・ユースフ

ブラックマンバ


奇しくも、白髪竜ラーズに負けたことのある二人

そして、どちらもリベンジを狙って参戦している



「オラァッ!」


小柄なユースフが飛び込んで正拳のワン・ツー



被弾しながらも、ブラックマンバがユースフの服を掴む


「うおぉぉっ!」


払い腰に入るブラックマンバ

体格差もあり、このまま引っこ抜く



ゴキッ…


「コヒュッ…」



嫌な音が響いた

ブラックマンバが視線を落とすと、ユースフの肘が胸の側面にめり込んでいる


肋骨は、側面からの衝撃に弱い

驚くほど簡単に折れてしまう



ビシッ!


ゴッ!


ローから、ストレート



ブラックマンバが、たまらずに後退る


ユースフが飛び込み、追撃



ゴガッ!


だが、突きを受けながらブラックマンバが殴り返す



そのまま、襟を取って締める

そして、壁に叩きつける



「オラァッ!」


ゴッ!


「がっ…!?」



しかし、ユースフが頭突き


緩んだ手を振り払った



ゴギャッ!


「…っ!!」



そして、至近距離からのハイキック


思わず崩れるブラックマンバ

その顔面をサッカーボールキック



「ふん…、舐めんなよ」


ぶっ倒れたブラックマンバを見下ろすユースフ



不良対決の軍配が上がった



「なかなか熱い戦いだったな…」


観戦者タフマンが仰け反る



プライドと殺る気のぶつかり合いは、やはりいい


「闘技者、及び観戦者の皆さんにお知らせします」


突然入るアナウンス


「B-1のベスト・エイトが出揃いました。これより、頂上決戦を行います。直ちに体育館へと移動してください。繰り返します、直ちに体育館へと……」


B-1もクライマックス

一気に人数が減った


最後の戦いが始まる




・・・・・・




体育館



「ロン!」


「ラーズ…」


ロンと出会ってしまった


「え、お前、アレックス!?」


「私は、さっきロン先輩に負けました。もう観戦者デース」


「はい?」


意外な再会



「あ、見つけた! 白髪竜!」


「へ?」


「てめー、カルメア市でのタイマン、忘れてねーぞ! リベンジだ、受けろ!」


ユースフが、俺に食って掛かる



「ゴドー、やっと見つけたぜ」


「パスケス…」


ゴドー先輩とパスケスが睨み合う



「これが、残っている全員か」


カリスマ喧嘩師


「白髪竜、取られているじゃねーか」


相撲のバードン


「…」


そして、黒い服の男



残っている八人が体育館に揃った





※B-1 闘技者数 現在八人


ブラックマンバ 四章 第二十三話 決戦ブラックマンバ1

ユースフ 二章 第三十一話 合宿免許3

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