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九章 第十一話 龍神皇国からの帰国

用語説明w


オーギュスト教授

トウデン大学人文学部の教授、文化人類学が専門。フィールドワークを重視しており、興奮するとお姉言葉になる。研究に熱く、ちょっとぶっ飛んでいる性格。文化人類学の単位は、人文学部の鬼門と呼ばれるほどに難関


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。柔道はシグノイア指定強化選手なるほどで、したたかな性格のヤワラちゃん


オーギュスト研究室



「疲れたっすね」

「ベッドが固くて眠れなかったわ」

「俺は、弁当がまずいのが…」


俺とアン、アルバロはダラダラと机に向っている


昨日、龍神皇国からシグノイアに戻って来た

本当は休みたいのだが、それぞれの研究をやらなければいけないため、研究室に出て来る羽目になった



「ブレ先輩とジャクリーン先輩は休みかぁ…」


「やっぱり、ペース配分が分かってるよね」


フィールドワーク中は作業が出来ない

そのため、事前にいつもよりも多く作業をしておかなければ滞ってしまう


俺は四千年前の記憶媒体を情報端末に接続し、ひたすらデータをコピーしていく


「そう言えば、ラーズ。フィーナちゃんは?」

アンが情報端末のディスプレイから顔を上げる


「龍神皇国の実家に行ったよ。フィーナは卒業研究が無いんだってさ」


「そうだったんだ。最終日、忙しくて全然話せなかったから…」


「オーギュスト教授とラングドン先生が、ギリギリまで遺跡論議をしてたからだよ」


興奮したおっさん二人のせいで、帰りの時間が無くなって修羅場になった

いい思い出だが、電車に乗り遅れそうで本気で焦った


「ラーズ、フィーナちゃんに謝っておいた方がいいぞ」


「え、何で?」


俺は、情報端末に向って難しい顔をしているアルバロを見る


「ラーズが穴に落ちていなくなった時、フィーナちゃんがめちゃくちゃ取り乱してたんだ」


「本当だよ。心配かけてさ」


「…」


「ラングドン先生が助けに行ってくれたから、フィーナちゃんは残ってたけど。本当に不安そうだったんだぜ」


「分かったよ。来週、また龍神皇国に戻るから、その時に言うよ」



ガチャッ…


「あ、オーギュスト教授」

「発掘作業、お疲れさまでした」



「三人共、よく頑張ってくれた。ラーズ」


「はい?」


俺は、手を止めて立ち上がる


「ラングドン先生とお会いできたのはラーズのおかげだ。ありがとう」


「いえ、そんな…」


「すばらしい話が出来た。実に楽しい時間だったわ!」


「ラングドン先生、本当にいい人で…。そう言ってもらえると嬉しいです」


「本当に、最高の研究者よ。偉人とか有名人、優秀な人は数いるけど、人柄まで出来ている人はそういないわ」


オーギュスト教授が女言葉になっている

ラングドン先生のことを気にいってくれたのだろう


恩師の良さが分かってもらえるのは、俺も嬉しい


「偉人や有名人も、いろいろな結果を残した凄い人ですからね。人柄まではしかたないんじゃないんですか?」


「何も凄くない。偉人なんて、結果を出したと言っても、ただやりたいことをやり切った人たちってだけだもの」


「そ、それは…」


「人のやることに凄いことなんてない。ただ、自分の道を突き詰めるだけ。ラーズの、今やっている作業もその一歩よ」


「はい、頑張ります」


オーギュスト教授は、講義があると言って研究室を出て行った


「あの人、元気だよな…」

「昨日まで、龍神皇国の山奥で土掘ってたんだぜ?」

「研究者にとっては、面白くて仕方なかったんじゃないかしら」


俺達三人の学部生は、疲れによる眠気に抗いながら、それぞれの作業に戻ったのだった




旧道場



ゴドー先輩が畳に寝っ転がり、ロンが着替えていた


「ざーす」


「お、帰って来たのか」


ロンが振り向く


「昨日、シグノイアに帰って来たよ」


「実家には帰ったのか?」


「いや、フィーナだけ。研究室でやることあるから、戻ってきた」


「大変なんだな、卒論」


「ロンだってあるだろ?」


「俺は前期で終わったぜ」


「な、なんだと…!?」


ロンは体育学部

人文学部と違って、卒業研究はない


課題に対して、論文を出せば終わりなのだとか

なんだか、負担が違いすぎる気がするんだが


「ケイト先輩がくれた過去のレポートのデータを参考にしたからな。すぐ終わったよ」


「ずりーよ」


「後は、来月にある消防庁の採用試験の対策だ」


ロンが、荷物から採用試験対策の本を取り出す

ちゃんと勉強しているらしい


「どこ受けるんだ?」


「龍神皇国とシグノイア、どっちも受けるつもりだ。どっちかは受かりたいぜ」


「そっか」


「ラーズは?」


「俺は就活続ける。それと、シグノイアの防衛軍を受けてみようと思ってさ」


「へー、防衛軍か」


「騎士学園の経験も生かせると思うし、人助けるのもいいかなって思ってさ」


「そっか」



俺とロンは、着替えると走りに行く

そして、帰ってくるとゴドー先輩が起きている頃だ


…この旧道場での生活も、もうすぐ終わり

そう思うと、少し寂しく感じる


もちろん、その前に…

東斗杯の本選と卒論が待ち受けている


そして、マフィアのツカサ・ファミリーや霊障組織なども…

裏社会からの魔の手も何とかしなければならない




武道館 柔道場



「そこだ、妥協すんな!」


「ぐおぉぉっ!」


俺は、ロンの腰に手を回す


よし、クラッチ成功!

このまま、倒し切る…!



ドッ…


ダメ押しで、左足をかけながら倒す



「ロン君、ガード!」


ケイト先輩が声をかける



ロンがすかさず反転


俺は、バックから首を取るフェイント


ロンが首を取られないために俺の右腕を取る



「しっ…!」


俺は、すかさずロンの頭の前に移動


右腕をロンの左肩口から右の脇に思いっきり差し入れる


脇の下で腕を組み、ロンの体を持ち上げるように横に反転


お互いが仰向けになるように転がる



「お、ラーズ君。アナコンダチョーク!」


「ラーズ、ロンの足をかけろ」



俺は、仰向けになりながらロンの状態を折りたたむように曲げる


そして、自分の足でロンの足を挟む


首を折り曲げながら締め上げる、アナコンダチョーク


さっき、ケイト先輩に教わった技だぜ!



「ぐぉぉぉっ…!」


ロンの口から苦悶の声が漏れる



返し方、分からねーだろ!


俺も分かんねー、なぜなら習ったばかりだからな!



パンパン…


ロンがついにタップ



俺は、すぐに手を放す


そして、お互いに仰向けで寝転がる


寝技を全力でやると、マジで疲れる


腕に力が入らない


だが、やった


寝技ならロンに勝てる


一つでも勝てるところがあるというのは、自信になるぜ



「くそー…。何だよ、今の」


ロンが恨めし気に睨む


「ケイト先輩に習ったんだ。寝技、面白い技がいっぱいあるよ」


「…確かに、知らないと極められるな。予想してなかったから、反応できなかった」


「それはあるかもな」



今日は、グラップリングの強化日

投げに組み、そして寝技を柔道部で集中して練習した


普段はロンやゴドー先輩、たまにケイト先輩とスパーリングをすることが多い

普段やらない柔道部の人とやると新鮮で、刺激になる



「それじゃあ、ロン君。行く?」


シャワーを終えて着替えると、ケイト先輩が待っていた


「もちろん。お願いします」


「ラーズ君は?」


「どこ行くんですか?」


「ロン君と飲みに行くの。一緒に行こうよ」


「行きます!」


ケイト先輩と飲めるの、久しぶりだ


「ラーズ、妹さんはいいのか?」


「フィーナ、龍神皇国の実家に帰ってるんだ。ファブル地区の遺跡発掘が終わって、そのまま」


「一緒に行ったんだっけか」


「いつ帰って来るの?」


ケイト先輩が振り返る


「来週、また実家に帰るんで、その時に一緒に帰ってきます」


「また行くのかよ、龍神皇国」


「親戚の姉さんに来てくれって誘われてさ。それより、今日の飲みは何なの?」


「私のゴドーの愚痴と、進路の相談。それと、ロン君を励ます会よ」


「お前ら、ケイトをあまり飲ますなよ」


そう言うと、ゴドー先輩はジムの練習に向った


「お疲れさまでした! …ロン、残念会って?」


「別れたんだよ。女と」


「マジで?」


「大マジ」


「だから、励ます会だよ」


「飲もう。そして、今度アルバロに合コン開かせよう」


「あーあ…、そうだなぁ…」


「ほらほら、早く行こう。喉かわいちゃった」


俺達は、ケイト先輩と居酒屋へ向かったのだった




ロンの彼女 八章 第十八話 不調

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