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六章 第十八話 社会の裏側2

用語説明w


オールドホクブ:五発装填型のリボルバータイプのハンドガン。ホフマンが、あっちの業種の人からラーズのために仕入れた


ホフマン

クサナギ霊障警備の社員、魚人の男性で元ゲリラ兵の経歴を持つバウンティハンター。ゴツい体格と風貌で、見た目は完全にあっちの人。銃火器のプロでバウンティハンターの資格を持つ


ホフマンさんが外階段で応戦



ガウン!

ガン! ガン!


オートマチックの拳銃で撃ち返す



「ラーズ、援護しろ」


「ど、どうやって!?」


「奴が顔を出さないように、撃って牽制しろ」


「えっ、俺のオールドホクブ、五発しか…ちょっ、待っ…!」


俺が言い終わる前に、ホフマンさんが腰を落としながら階段を駆けあがって行く



仕方ねぇ!

とりあえず撃っとく!



ダァーン!


一発目!



残弾は必ず把握、数えながら撃て!

ホフマンさんの教えだ



「…っ!!」


ドォン!



上の階の壁のヘリで何かが動いた気がした

すかさず射撃!


その時には、もうホフマンさんが階段の上に到着



ガン!

ガン!

ガン!



オートマチック銃を撃ちながら、一気に走り込む


ダン!

ガン!


上にいた男とホフマンさんがもみ合う

お互いに銃を弾き、一発ずつ明後日の方向に射撃


俺は、援護のために慌てて階段を駆け上がる



ゴガッ!


ホフマンさんが左ストレートでぶん殴り、男が尻餅

右手に持っていた銃を構える



「動くな」


「…」



男が動きを止める


「銃を床に置け。そして、こちらに滑らせろ」


「…」


男が手に持った拳銃を置き、ホフマンさんの方に滑らせた



バキッ!


すかさず、ホフマンさんが男の顔面を思いっきり蹴り上げる

ブーツの爪先が男の鼻を潰し、歯が飛び散った



「ラーズ、こいつを見ておけ。変な動きをしたら撃っていい」


「え…」


「いいか、こいつは裏の人間だ。人を殺すことなんて何とも思っていねぇ、ためらわず撃て。一瞬でも遅れれば、死ぬのはお前だ」


「…っ!!」



俺は、血反吐を吐いて痙攣している男にオールドホクブを向ける


「撃鉄を上げておけ。すぐに撃てるようにな」


「は、はい…」



俺は、言われた通り撃鉄を上げる

それを見届けると、ホフマンさんはビルのドアを開けて中に入って行った



「…」


ヤバい、怖い



銃で撃たれた

当たってたら死んでいた


そういや、盗賊に襲われた時も銃を向けられた

だが、あの時はまだ会話する機会があった


こいつは、問答無用で撃って来た

簡単に俺達を殺そうとしやがったんだ



「うぅ…、痛ぇ……」


「動くな」



男が、身もだえしながら手を顔に持って行く



「は、歯が折れてるんだ…、これくらいいいだろ」


「動くな」



男が唾を吐き出す

真っ赤な血がドボドボと出ている



「なぁ…助けてくれよ…」


「は?」


「俺は命令されただけなんだ…。彼女を人質に取られてよ…。こんなこと、俺だって…」


「勝手な事言うなよ!」


この野郎、あれだけガンガン撃って来たくせに、よく助けろなんて言えるな!


「あのおっさんはプロっぽいけど、お前は違うんだろ? 頼むよ…、俺が帰らないと、彼女が…」


「…」


男が、シャツで血を拭う

そのシャツにもべっとりと血でシミができる



「うぅ…痛ぇ…、顎の骨も折れてるかもしれねぇ…。血が止まらねーんだ…」


「う、動くなって」


「病院に…、救急車を呼ばせてくれ…。もう金輪際、お前たちに関わらないって約束する…」


「…」


男は、震えながら血を拭っている

口と鼻から血がどんどんたれてくる


男が、真っ赤になったシャツから手を外し、その上に着ていたパーカーの背中側に手を伸ばす


「…おい、これを使え」


俺は、もっていたハンカチをポケットから出す

服で拭いたって、結局は血が垂れてくるだろう



「…」


男が顔を上げる

そして、背中側のパーカーを掴んでいた手を戻してきた



「なっ…!?」


なんと、その手には短めの銃が握られていた

猟銃を短くしたような、変な形の銃だ



ソードオフ・ショットガン


猟銃であるショットガンの銃身を短く切ったもの

銃身が短くなったことにより、弾が大きく拡散して命中精度と射程が著しく下がる

反面、携帯性が向上し、室内での戦闘にはきわめて有効な武器となる

猟銃の入手難度の低さも利点だ



こ、この野郎!


背中に仕込んだホルスターに、この短い銃を持ってやがったんだ

血を拭うと見せかけて、銃を掴む隙を狙ってやがった!



明らかに反応が遅れた

ホフマンさんの言う通り、俺は隙を見せて撃たれる羽目になっちまったんだ…!



ガゥン!


「…!」



終わった

その恐怖で、俺はぎゅっと目を閉じる


射撃音が響く

火薬の匂いが、いやに鼻につく


「…」


だが、痛みが来ない

なんだ、俺はまだ生きているのか?



恐る恐る目を開けると、視界の先にはホフマンさんが立っている

そして、目の前には手から血を流して震えている男が横になっていた


「あれ?」


「すぐに撃てと言っただろう」


「…ホフマンさん!?」


「ショットガンは弾をばら撒く。撃たれてたら終わってたぞ」


「あ…す、すみません…。いや、無理! なんなのこれ!? 殺し合い、無理!」


「腹をくくれ。これがバウンティハンターの世界だ」


「も、もう嫌だ…!」



ゴーストハンターの世界もヤベーと思ってた

悪霊は怖いし、簡単に人を殺してくるから


でも、バウンティハンターはもっと怖い

悪霊は、何かに取り憑いたり呪ったりと、人に害をなすのにワンステップある


だが、悪い人間ってのは、引き金を引くだけで人を殺せちゃうんだ!



ドボッ…


「げはっ……!」



ホフマンさんが、男の腹をブーツで蹴り上げる


「選択肢をやる。知ってることを素直に吐くか、吐くまで苦しむか、だ」


「お、俺は何も…」



ゴキッ…


「……ぴぎゅがぁぁぁぁっっ!?!?」



男が悲鳴を上げる


何を…

あ、ホフマンさんが男の指を握ってる


多分、折ったんだ…

怖い…



「ここにきて、何を狙った?」


「し、知ら…、俺は頼まれただけ…」


「分かってるぜ、ボーイ。今日はとことん付き合ってやる。いいか、俺が知りたいことが出てくるまで、とことんな」


「ぎゅががぁぁぁぁぁぁっ……!?」



その後、俺はマンションのドアを閉める

ホフマンさんは、男を奥の部屋に連れて行った


しばらく、男の悲鳴が聞こえる


だが、ほんの五分ほどだろうか

何も聞こえなくなった




・・・・・・




その後、男とホフマンさんが肩を組んで部屋から出て来た


「あの…?」


組んでるという言い方には語弊がある

ホフマンさんが一方的に男の肩に手を回している感じか



「車に乗るぞ」


「あの、なじみの情報屋さんは?」


確か、俺達は情報屋に会いに来たはずだ



「こんな商売をやってるんだ、仕方ないさ」


「…っ!?」


「だが、ケジメは取らせる」


「ひっ…」


ホフマンさんが、男を強引に揺さぶった



…つまり、この男が情報屋をすでに〇していたってこと?

怖いんだけど!


本当に、もう嫌だ

早く帰りたい…!




「乗れ」


ホフマンさんは、男を車の後部座席に乗せると、手錠のようなものを手に付けた


「ど、どこに行くんですか?」


「こいつが快く教えてくれた、雇い主の所だ」


「…!」



ホフマンさんが車を出発させる


向かった先は、カルメア市の南にある港、カルメア港

漁船と貨物船が止まる港だ


俺達は、港に近い道路脇に車を停めた



「よし、ここで暗くなるまで待つ。ここはトラックの運ちゃん達が時間潰しでよく路駐している場所だ。車が止まっていても怪しまれない」


「詳しいんですね」


俺達は、コンビニで買ったパンとコーヒーで腹ごしらえをする



「あの…」


俺はホフマンさんに目線で尋ねる

後ろのこいつ、飯どうしますかって


「気にするな。一つだけ頼みごとをした。それが終われば解放するから、飯でもなんでも好きにすればいい」


「な、何をしに行くんですか? いや、そもそも、どうして町中で銃撃戦が!?」


「このカルメア市は、カツシの町が近い。前のハカルとの戦争の時にカツシの町が焼け野原になってな、いろいろな人間がこのカルメア港の周辺に移住したんだ。そのゴタゴタでマフィアが台頭し、新カツシの町の復興の物流などに介入して力を付けたことで、この辺りの治安は最悪になったんだ」


「そ、そうだったんですか…」


「今では復興も落ち着き、警察も入って来てマシになったがな。この辺りは、最後に残ったよくないエリアだな。無防備で歩いてると、面白い体験ができるぜ」


「い、嫌すぎます!」



俺達は、後ろで痛みに呻いている男の声を聴きながら、暗くなるのを待った



盗賊 四章 第十三話 実施研修2

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