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五章 第二十五話 VS相撲2

用語説明w


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて東玉流総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる。龍形拳の名が知れ渡り黒髪龍と呼ばれている


アレックス

トウデン大学にやって来た留学生で、ドワーフの男性。ギアのテルミネト出身で、レスリング経験有りだがヘタレで心が折れやすい。東玉流総合空手部の後輩。


引っこ抜かれる

投げられたら終わりだ!


倒れたところを、相撲の体重で潰される

壁に押し付けられても終わり


正真正銘の土俵際



「…ぐあぁぁぁっ!?」


ここが勝負どころだ!



「バードンさん!?」


投げに入ったバードンが顔をゆがめた

それをみて、ホワイトタイガーの子分たちが何があったのかと目を見開く



「て、てめっ…!」


「おらぁっ!」



このままじゃ投げられる

パワーじゃ勝てない


だからこその、苦肉の策

汚い技、喧嘩技を仕掛けた



バードンのぶっとい人差し指と中指をまとめて掴み、手首側に落とす


合気道の小手返しならぬ、名付けて指固め返しって感じか



立ち関節技はパワーでは耐えられない

なぜなら、耐えたら関節がぶっ壊れるから


これなら出力は関係ない


指と手首を折るか、投げられるか

好きな方を選びやがれ!



ドッタァァッ!


激しい衝突音と共に、バードンが倒れる



指を守った、そりゃそうだろう

次だ!


小さくジャンプして、膝でバードンの腹に着地

その勢いで、顔面に拳を落とす



ゴッ!


拳が鼻にめり込む感触

だが、ここで終わらねえ



バキッ!


「ぐぉっ…!」



膝乗りの状態で、左フックの追撃


もう一発!



ドッ!


「うおっ!?」



バードンが腕を振り回す

膝立ちだった俺の身体を横に飛ばそうとする


くそ、力が強いんだよ!



バードンが起き上がろうとする

させるかよ!


俺はバードンの上体から首の辺りを跨いで、そのまま座り込む


「このっ、どけぇっ!」


バードンが仰向けの状態で俺の服を掴んで振り回す


その力で、上から引きずり降ろそうとする

まるでロデオの感覚だ



「ラーズ君!」


ケイト先輩の声が聞こえる



分かってますよ

曲がりなりにも、柔道強化選手のケイト先輩と稽古してるんだ


柔術の練習だってした

寝技経験のない相撲取りに、この状態で負けてたまるか



俺は腰を落として安定感を重視

その状態で、掴んでいる腕に体重を預けるようにバードンの頭の横に落としていく


バードンの右腕を万歳させるように地面に抑えつける

そのまま、手首を抑えながら肘を引き上げる


アームロックという関節技だ



「ぐっ…!」


バードンが肩関節を極められることに気が付いたのか

左手で自分の右手を掴む



相撲取りの身体は凄い

肩関節に柔軟性があり、体幹からのパワーがある


極めきれない



ゴッ!

ゴッ ゴッ


極められないなら次

フィジカルは圧倒的に負けている


だったら、どんどん戦法を変えていく



腕を守って、がら空きの顔面に鉄槌を落とす

何度も、何度も



「ぐぉぉっ!」


バードンが暴れる

だが、自分の右手を放した瞬間に、もう一度アームロック



おらおら

しっかり守らねーと肩関節ぶっ壊されるぞ?



「やるな、ラーズ。寝技でバードンに挑むか」


「相撲は倒れないのが大前提。転がってからの技術なんてやらないもんね」


「相撲の張り手と掴みは、拳よりも指を取りやすい。雑魚なりに、よく考えたじゃねーか」


「ラーズ先輩、稽古中もブツブツ考えてマシタ」


ラーズ陣営の四人が見守る

落ち着いているこっちと違って、ホワイトタイガー側はざわついている


「バ…バードンさん!」

「汚ねーぞ、男なら立って戦え!」

「まだまだ、何とか立って!」



そんな声援を聞きながら、俺はアームロックと鉄槌を繰り返す

さすがに、バードンも分かって来たのか


顔を守りながら腕を守る

俺の切り替えに対応してきた


そして、俺を上から引きずり落そうと暴れながら服を引っ張って来る



上に乗った場合、最初に殺すのは首

殺すというのは、動きを封じるという意味だ


首を使ったブリッジで、上に乗った相手を落としたり、振ったりするのがセオリー

首を封じれば、いくら手や足を使おうが、動ける可動域は限られる


俺はバードンの腕を放し、バードンの首の下に右足を差し込む


マウントポジションからの、上から三角締めだ

予想していなかったのか、がっちりと入る


このまま、絞めて落としてやる!



「うがぁぁぁっ!!!」


「何っ!?」



がっちりと絞めたと思った瞬間、バードンが暴れる

身体を横回転、反転させて俺を下にした


ぐぉぉっ、上になられると重い!

だが、このまま決めてやる



ゴガッ!


「…っ!?」



足で絞められたまま、バードンが真横に拳をフルスイング

直撃して、目の前が一瞬、真っ白になる


その隙に、バードンが俺の横に足を踏み出した



やべぇっ、立たれる!


バードンのパワーだと、俺の身体くらい持ち上がる

頭上から叩きつけられるバスターを喰らえば、間違いなく一発KOだ


体重を浴びせられたら、下手すると死ぬ

しかも、下はアスファルトだ



「しっ…!」


ビキッ!



俺は、バードンが立ち上がると同時に、腕を掴む

そして、背筋で思いっきり反る


三角締めからの、全力の腕十字だ



「…っ!!」


バードンの表情が一瞬、歪んだ



俺は三角締めを諦めて、足を放す

地面に落ち、すぐに転がって立ち上がる


バードンの追撃は無かった


くそっ、なんて太い首なんだ

全然、締めが決まらなかった



「うおー! バードンさん、ここから!」

「立った! 白髪竜、終わったな!」

「ぶちかましでやっちまってください!」



バードンが沈み込む

ぶちかましか


だが、右腕をだらんとしている

筋が伸びたか? 痛めてるかもしれない



ゴッ!


突っ込んでくる



ガードするが、さっきほど威力は無い


「おらぁっ!」


全力のインローを返す



だが、バードンはローを受けながらも組み付いて来た


「ぐあぁぁっ!?」


俺の右腕をわきに抱え、その状態で俺の右ひじが搾り上げる


相撲の立ち関節、かんぬきか!



俺は慌てて右腕を捻る

肘先が下を向くようにして、バードンの肩を掴む


その状態で、左腕でバードンの後頭部を取って首相撲に



ブォン!


「うおぉぉっ!?」



だが、出力が違う

振り回されて、投げられる


飛ばされるが、何とか足から着地した

転がされたら危ない



「…右腕、大丈夫か?」

俺は、息を整えながら尋ねる


「大したことねーな」


「片腕じゃなかったら、今のは完全に極められてた」


「勝った気でいるんじゃねーぞ!」


バードンが左腕での張り手


俺は右腕で全力で弾く

空手の外回し受け


ガードじゃない

横方向の力をぶつける


そのまま、後ろの右足を踏み出してタックルに

もう一度寝かしたい!



「二度と倒されるか!」


太腿に組み付いた俺を、がっちりと受け止める

びくともしねー!



バードンが真上から左の張り手を振り下ろす


飛び退いた俺のすぐ横を、その手が通り過ぎた

その風の音で、ヒヤッとする


後頭部に喰らったら、下手すると一発KO

安易に行くな、しっかりと狙え



「ラーズの奴、タックルや柔道技の時は右足から踏み出してるんだな」

ロンが見守りながら言う


「組み技は利き手が前の構えですからネー」


「柔道と空手、上手く使い分けてる」


「逆手の技が苦手なだけだろうよ」


ゴドーが言う通り、ラーズは投げ技は右前の技しかできない

柔道の大腰や体落としは、右手前でしか練習していない

逆手の左手での技が出来ないのだ


そのため、左足前の時は打撃

組み技は、後足の右から踏み込んで右足を前に出す


ナチュラルなスイッチをすることで、打撃と組み技を使い分けているのだ



「バードンさん!」


ホワイトタイガーが叫ぶ



バードンが肩で息をしている


「お、やっとスタミナが切れたか」

ゴドーがニヤリとする


相撲の試合は一瞬で終わる

ぶつかり合い、その瞬間に全てを賭けるからだ


空手やボクシングのように、数分間戦い続けるという競技ではない

体型的にも、スタミナを重視していないのだ



「なれない寝技でも、大分削ってたしね」

「スタミナは使わせましたよね」


ケイト先輩とロンが言う


「ラーズ先輩、終わらせマショウ!」


俺は、アレックスの声で前に出る



バチィッ!


思いっきり、インロー

すでに、バードンの膝裏は真っ赤に腫れあがっている



がにまたで開く相撲の構え

脛が外に向くため、今回は当てやすいインローを重点的に稽古してきた



バチィッ!


「ぐぉっ…」



前に出た瞬間にローを合わせる

踏ん張りが効かず、よろけたバードンが前に手を突く



「アァァッ!」


その瞬間に、俺はバードンの顔面を蹴り抜いた



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