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四章 第三十一話 恥ずかしがり屋の悪霊2

用語説明w


ピッキ

クサナギ霊障警備の社員、ノーマンの男性でシステム管理と運転、操縦担当。ゲーム感覚で情報端末や車、MEBを動かす。風貌は古のオタク、運転中以外はござる口調の人見知り


呪われたアナルプラグ


恥ずかしがり屋の悪霊をレベルアップさせる力を持つ呪物


悲しいことに、全てを納得してサッパリと亡くなれる人は数えるほど

ほとんどの人は、何かしらの心残りがある


例えば、情報端末内のエロデータ

メモっていたポエム

ハマっていたアニメグッズのコレクション


捨てるには惜しいが、人には絶対に知られたくない

そんな物は誰にだってある


この呪いのアナルプラグは、そんな当たり前の心残りを悪霊に昇華させてしまう力を持つ



「何かあったか?」


「うーん。テーブルの上のノート型情報端末。それと、こっちの日記類ですかね」


俺はホフマンさんに答えて、ノートやレシートなどをテーブルに置く



「情報端末はピッキにやらせよ。私は、プリヤと依頼主に連絡してくるね」

そう言って、レイコ社長は部屋を出て行った


外の車で待っていたピッキさんが、汗だくになって部屋に上がってきた


「ピッキさん、このノート型情報端末です」


「あっつい部屋でござるな」


ピッキさんが情報端末の前であぐらをかく



「ラーズ。俺たちはこっちをやっつけちまおう」


「はい」


ホフマンさんと俺は、日記帳とノート、レシートや領収証などの山に挑む



ピッキさんは、情報端末に自分のPITを繋げて操作を始めた


「ホフマンさん、運転だけでなく情報端末も得意なんですね」


「どっちかと言うと、こっちが本業だな。重度の中毒ゲーマーだ」



ピッキさんは、ゲーム感覚で全ての機器を扱える


情報端末の解析やクラックも得意

レーシングゲーム仕様で公道を爆走、格闘ゲーム感覚でMEBでプロレス技を繰り出す


え、この人、結構ヤバくね?



「うーむ。購入記録や検索履歴には出てこないでござるな」

ピッキさんが言う


「調べるの早いですね」


「個人用AIで解析ツールを走らせれば一発でござる」

ピッキさんが言う画面を見ながら言う


得意分野でのピッキさん集中力は凄い



個人用AI


一般的に使用されている、万人が使えるAIサービスと違い、個人の使用に特化されたAIのこと

一般的なAIと対比して個人用AIと呼ぶ


個人の趣味嗜好、癖や思考タイプ、性格などに対応して、適切な補助を行う執事のようなAI

当然、このAIはプライバシーを多く保有することとなり、その安全性も保証する特別仕様だ


ゴーゴレ、シェリー、トリガのAI大手三社が有名で、性能はいいが百万ゴルド以上の金額が必要となる

だが、値段と相応の利便性がある商品だ



「ラーズ、ホフマン。今年の五月の日記か、メモはないでござるか?」


「五月? あるぞ」

ホフマンさんが日記を持ち上げる


「SNSの削除済みメッセージに、取引のやり取りがあるでござる」


「やり取り?」


「添付された写真データは期限切れで削除されてしまっているが、ほぼ間違いなく、その呪物でござるな」


「お、日記にも書いてあるぞ」


ホフマンさんが日記の一文を読み上げる



『貴重なアレが手に入る。まさか、石でできたものがあるなんて。一体いつの時代のものなのだろう。早く触りたい使いたい。コレクター仲間に自慢するのが楽しみだ』


「…」


『ついに手に入れた。たまらない。美しい。歴史を感じる……以下略……使ってみたが、痛すぎる。ザラザラが引っかかり、上級者向けで……以下略……まだそこまでには至れていない』


「使用感の部分はお腹いっぱいです。でも、とりあえず買った日はわかりましたね」


「そうだな。後はレイコ社長にぶん投げよう。ピッキ、データをまとめておいてくれ」


「分かったでござる」


「呪いのアナルプラグを買った日が分かって、どうするんですか?」


「こんな危険品を売った奴を警察が探すんだろ」


「あ、なるほど」



前に、中学生にやべー召喚術の本を売ったやつがいたな

アレと同じか




・・・・・・




「それじゃあ、よろしくお願いします」


「はい。失礼します」


レイコ社長とプリヤさんが、スーツの男性と挨拶をする

この人は警察で、今回の呪いのアナルプラグと、その購入データを渡したのだ



「警察は何だって?」

ホフマンさんが聞く


「やっぱり、このアナルプラグ関係は組織性があるだろうって。他にも、危険な呪物を売られて霊障が引き起こされる事件が頻発してるんみたい」


「そんなことして、何の利益があるのかしら」

プリヤさんが首を傾げる


「さぁね。でも、呪物を複数手に入れてるっていうのが怖い」


「呪物がそんなに数多くあるはずないからな」



呪物とは、魔属性の魔力や瘴気が蓄積した物

様々な効果が得られるが、デメリットも大きい


その一つが、魔属性による霊体への影響だ


魔属性は生命力を下げる属性で、生命属性の一つ

相克に、生命力を上げる聖属性がある


当然、霊体を魔属性が侵食するので健康に悪い


更に、魔属性に念が込められたり、一定以上の蓄積値となれば呪いという状態異常が発症する



「結局、あのアナルプラグは何だったんですかね。石で作って、わざわざ呪いをかけるなんて…」


アナルプラグで人を呪おうなんて、尻の穴に親でも殺されたんだろうか


「あれ、本来はアナルプラグじゃないと思うよ。ああいう形のモニュメントというか、お守りというか、それを勝手にアナルプラグ使ったんだと思う」


「罰が当たりそう」


「まぁ、本人は、そう言われて信じただけだから。そして、死んでからの念が魔属性によって活性化されたってことだね」



生物の生命力を数値にすれば、それはプラスの値となる

そして、怪我や病気、寿命など理由で生命力が減り、ゼロになれば、それは死という状態だ


では、霊体だけが抜け出た幽霊や悪霊の状態は何なのか

それが、アンデッドという状態だ


アンデッドとは、生命力がゼロ、つまり死という状態からの更に生命力が下がり、マイナスの値になった状態


だからこそ、生命力をさらにマイナスにする魔属性に干渉されると、マイナスの生命力の値が大きくなって活性化してしまう


除霊とは、マイナスに触れた生命力にプラスの力を与えてゼロ、すなわち死の状態に戻すことなのだ



「帰ったぞ」


「お帰り、ビアンカ」


「ふぅ、暑かった。お、ラーズ、戻っていたのか」


「はい。さっき現場が終わったので」


「それなら、ホバーブーツを履け。訓練をするぞ」


「え、今からですか!? さっき脱いだばかりなのに…。はい、すぐ準備します」


ビアンカさんのこめかみに青筋が浮かび、俺はすぐに前言撤回


二階へと上がる



「今日は遠出するぞ。カートリッジの予備を持っていけ」


「ど、どこまで行くんですか?」


「海沿いまで足を伸ばそう。ラーズも、だんだんと転ばなくなってきたからな」


「いや、普通に吹っ飛びますけど!」



俺はプロテクターを付けて完全装備


日差しが暑い…

早く走って風を浴びたい…



「よし、行くぞ。車がいるから、ゆっくりでいい。今日は訓練だから信号も守れよ」


「わかりました」


「二人共いってらっしゃい」

「現場が終わったばっかりなのに元気だね」


プリヤさんとレイコ社長が見送る


うん、俺が断れないの分かってて言ってやがるな


「ラーズ、今度は銃の練習をしに行こう」

「運転なら教えるでござる」


ホフマンさんとピッキさんが言う



ブオォォォッ


俺とビアンカさんは、海へ向かってホバーブーツを飛ばす



風が気持ちいい


吹っ飛ぶし転ぶけど、ホバーブーツは乗れるようになれば結構面白い


俺たちはホバーブーツのドライブを楽しんだのだった




「それで、どうするのよ、社長」

プリヤが尋ねる


「うちじゃ無理だよ。ラーズ入れても六人しかいないんだから」


「組織的に霊障を起こしてる奴らの調査ねぇ…。ま、小規模零細企業に頼むことではないわよね。公安も」


「だから、零細は余計だ!」


組織的な霊障犯罪…

めんどくさいことにならなければいいと、社員一同は思ったのだった


召喚術の本 三章 第三十四話 召喚術3

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