一章 第一話 受験勉強
用語説明w
フィーナ
ノーマンで黒髪、赤目の女子。ラーズの義理の妹で、飛び級で大学に進学。クレハナの王族であり、内戦から逃れるために王位を辞退して一般家庭に下った。騎士の卵でもあり、複数の魔法を使える。
「いい時代になったなぁ」
「そうだね」
俺とフィーナは、並んでダイニングテーブルに座る
オンラインで予備校の授業を受けているのだ
俺は微積分と線形代数が苦手で、絶賛苦戦中だ
「次はモンスター学だけど、見る? 戦闘ランクの授業みたいだよ」
「さすがに、俺達はわかるだろ」
俺達は騎士学園でプロの騎士を目指して来た
プロの騎士の相手は、ほとんどの場合が強力なモンスター
多種多様、強さも様々で、戦闘力以外に厄介な特技を持つものもいる
つまり、知識が重要なのだ
その厄介さは一概には言えない
しかし、モンスターの討伐難度を表す指標として戦闘ランクというものが設定されている
受験に必要な知識としては、人類にとって必要な七種類だ
Sランク 宇宙戦艦
Aランク 老竜
Bランク 闘氣を使う戦闘員
Cランク 戦車の戦闘力
Dランク 武装歩兵の一部隊
Eランク 銃火器や範囲魔法などの武装戦闘員
Fランク 一般成人男性の素手での戦闘力
ちなみに、この七種類より上のランクも存在はする
SSランクには、通称神や魔神と呼ばれる高次元生命体などのランク
終末戦争アポカリプスの際に人類を追い込んだ、神らしきものもこのランクだ
更にSSSランクとして、惑星を破壊するほどの存在が設定されている
…Sランクより上は、人類がまともに戦える存在ではない
そして、プロの騎士とはBランク以上のモンスターを相手にする者のこと
Bランク以上は、闘氣の力が無ければ太刀打ちができない強さだ
今日も、龍神皇国のどこかで騎士がBランクモンスターを討伐し、人類の支配圏を守っているの
秋が深まり、冬が始まった
俺達の受験勉強も正念場だ
「ラーズ、前回の模試の判定はどうだったの?」
「B判定に落ちてた…」
「えっ、その前はA判定だったのに」
「積分でミスってたんだよ。微分は好きなんだけどなぁ」
そんなフィーナが受験するのは、ハナノミヤ聖女子大学
俺が受けるトウデン大学よりもかなり上の偏差値だ
それでも、しっかりとA判定
伊達に、飛び級で騎士学園を卒業していない
「頑張ってよ。一緒にシグノイアに行くって言ったんだから」
「分かってるよ…」
俺達の家は龍神皇国
しかし、俺達の本命大学は共にお隣の国シグノイアにある
シグノイアとは、龍神皇国の東側に位置
同じく東側の隣国ハカルの南側の国で、海岸添いのトウク大港は多くの船舶が入港することで有名だ
シグノイアとハカルは、龍神皇国とは歴史的な繋がりがある友好国
特急で行き来できるため、海外という感覚はあまりない
「ま、ラーズが落ちたら、ここから通うから別にいいけどね」
「自分に余裕があるからって!」
俺達の大学は、龍神皇国のこの家から通うこともできる
しかし、それなりに時間がかかるため、下宿をしようと考えている
ちょうど、本命が二人ともシグノイアの大学
一人暮らしは心配なため、一緒ならいいと両親が言ってくれたのだ
キャンパスライフに下宿、夢は広がる!
絶対に合格したい!
なお、俺の第二志望は龍神皇国立北大学文化学部
滑り止めは私立ホウチホ大学
どちらも龍神皇国の大学だ
つまり、夢の下宿生活をするなら第一志望のシグノイアのトウデン大学しかない
頑張るんだ、俺!
「あー疲れた。ちょっと休もう」
オンラインの授業を終え、俺はチョコレートを摘んで糖分を補う
…セフィ姉が誘ってくれた、プロの騎士によるモンスターハント
騎士学園出身の俺たちにとっては、大いに刺激になった
名門・龍神皇国騎士団の入団試験を受けるヤマト
龍神皇国立騎士大学を受験し、将来的には騎士団の入団を目指すミィ
あの二人にとっては、プロの騎士の実力と、モンスター討伐の現場は他人事ではない
だが、プロの騎士を目指さない俺にとっては、完全に別世界の光景だ
…いや、誤魔化すのはよそう
騎士を諦めた俺にとっては、か
俺は騎士学園の頃から落ちこぼれ
ヤマト、ミィ、フィーナ…、優秀な同級生たちの背中を眺めて来た
壁役にもなれず、かと言ってアタッカーにもなれない
中途半端すぎる俺の実力で、いつも最後には人の活躍を見守る羽目になっていた
「…」
プロの騎士を見れば分かる
単純な能力の差
俺には、プロになれるほどの才能がない
「おい、ラーズ。本当に騎士を諦めるのかよ」
…セフィ姉と行った、プロ騎士の狩りの帰り道にヤマトが言う
「今さら、何を言ってるんだって」
「ドラゴンエッグに重属剣。ラーズ、いい技を持ってるのに」
ミィまでが振り返る
「…それだけじゃ通じないよ、プロには」
「もうすぐ、チャクラ封印練…。それをやったら、本当に騎士になれなくなっちゃうんだね」
「ああ、そうだよ。ま、未練なんてないよ。俺にプロなんて、さ」
俺は、腕を頭の後ろに組む
「ほら、フィーナ。帰ろうぜ、俺たちは受験生なんだから」
「う、うん…。じゃあね、ミィ姉、ヤマト」
「おう」
「私も騎士大学受けるんだから受験生だし」
「ミィは推薦入試だろ! 羨ましい…」
「ラーズ、自分で受験を選んだくせに」
「…それでも、羨ましいんだよ」
ここからは、それぞれの進路だ
俺達は手を振って別れる
ちなみに、ヤマトとミィの実家は惑星ギアだが、二人はすでに惑星ウルの龍神皇国に引っ越して来ている
ヤマトは騎士団の寮、ミィは騎士大学の寮へ
つまり、結果は出ているようなものだ
受験生にとっては、本当に羨ましい…
「…」
「スー…スー…」
気が付くと、隣のリビングの炬燵でフィーナが寝息を立てていた
龍神皇国の伝統的な床材である畳が敷かれ、横になると気持ちがいい
炬燵の暖かさがあればなおさらだ
「うーん…」
暑いのか、フィーナが寝返りを打つ
すると、足が炬燵の布団からはみ出て来た
スカートが捲れて、太ももが露わになっている
「…目のやり場に困る」
それに、このままじゃ風邪を引いてしまうかもしれない
受験生にとって風邪は、ボスモンスター並みに厄介だ
仕方ないな…
俺はフィーナに近づく
変わらぬ寝息を立てている
「…」
俺は、ゆっくりとスカートを戻していく
起きるなよ…
勘違いするなよ、エロ目的じゃねーからな…
「…んぅ…ん……」
「…っ!?」
フィーナが変な声を出す
俺は、焦って体の動きを止める
「…」
一瞬、起きたと思ったが、フィーナは目を開けることなく仰向けになっただけだった
炬燵で寝ると暑くなるんだよな
起こすか?
だが、スカートを掴んだままではまずい
まずは、完全に捲れを治してから…
「うーん…」
「うおっ!?」
突然、フィーナが膝をついていた俺の足に抱き着いてくる
「ちょっ…」
こ、こらっ!
動くな!
こ、こいつ、寝ぼけてんのか!?
ますますスカートが捲れていく!
このままじゃ…
「あっ…」
フィーナが薄目を開けた気がする
「起きろっ、フィーナ!」
瞬間、俺は声をかける
「ふぇ?」
「寝ぼけんな、風邪ひくぞ!」
「…あれー、寝てた?」
「寝てたよ、放せって」
俺は、素知らぬ顔をして立ち上がる
スカートが捲れた太もも
はだけた胸元
…見てない、見てないぞ!
一章開始です
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