事故物件の怪
短いです。すみません。
事故物件。
それは直前まで入居していた者に、目立ったご不幸が訪れた物件の事である。
それ以外にも入居者が超常現象に襲われて、平穏に暮らせない等、居住するにはやや難がある物件の事でもある。
とある地方の都市部に、その事故物件は有った。
その事故物件は、特に忌避される亡くなられ方をした人はいない物件だ。
だからといって超常現象によって住みにくい物件である訳ではない。
ではなぜ事故物件と呼ばれているのか。
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「ここがアパート内の事故物件? 見えにくい所にお札が貼ってある訳じゃないし、近所にうるさい人が住んでもいないし。 なのに入居者が居着かず、1年以内に追い出される物件?
俺みたいな低所得労働者は事故物件じゃないと住めないんだけど、大丈夫かな……」
例えば、こう言った男性入居者が現れたとする。
〜〜入居から(以下、入居からは省略)1週間後。
「最近はやたらと調子が良いな? 疲れて帰ってきても、寝るだけでバッチリ元気になるし。
今まで重かった物も運べるようになったし、物覚えも好くなってる気がする。
これがこの部屋のお陰だって謂うなら、どこが事故物件なんだろうか?」
首を傾げる男性だが、どこにも答えは無い。
〜〜1ヶ月後。
「あの中途採用の新人、全然つかえないなぁ。 俺がどれだけ丁寧に教えても、全然覚えてくれないって人を舐めすぎだろ」
入居してからずっと調子が良く、この男性は自信を持ち始めた。
その結果かなんなのか、人を自分と比べて評価する事を覚えた。
低所得労働者で底辺の生活をしていた自分を基準とする評価だ。
確かにこの男性はプライドになるくらいには高い能力を身に着けた。
入居前とは比べ物にならない能力を。
誰よりも高い筋力と、非常に高い記憶力。
仕事が出来る事による給金の上昇で、容姿も随分と垢抜けさせる金銭的な余裕も出来た。
そこまで行けば、プライドを手に入れるのだって不思議ではないだろう。
〜〜3ヶ月後。
「職場の連中、なんであんなので俺より高い給料もらってんだ? 俺だったらもっと上手くやれるのに。
あー、なんで俺、あんな所で働いてるんだろ。
近所のも付き合いが面倒臭くなってきたし。
転職・転居しちゃおうかなあ」
自信が自尊心へ変わり、そのプライドがこじれて変に他人を見下す事を覚えてしまった。
〜〜5ヶ月後。
「やってられるか! あんな職場と俺を見下す俺以外のこのアパートの連中め! 俺は絶対にここを出ていくぞ!」
ついに耐えきれなくなった男性。
男性の場合鼻は天狗並に高くなっていて、他者の行動全てにイラつきだしたのだ。
この男性は大抵の事なら一人でこなせた。
その結果、至らない部分を見てしまうと、もどかしさに襲われる。
自分より劣った連中ばかりで、みんなして自分の足を引っ張ろうとしているようにしか見えなくなっていた。
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お分かり頂けただろうか。
この事故物件は、入居者にチカラを与える。
そのチカラは入居期間にあわせて、徐々に増していく。
身体能力や記憶力の向上など、幅広い恩恵を得られる。
なんでも出来る様になれる。
だがしかし。
しかしなのだ。
その代償と言っていいのか、何でも出来るようになった結果、人を傲慢にさせる。
それでその物件にいられなくなり、人が居着かず出ていってしまう。
ちなみに、出て行った者の能力は入居前の状態へ、徐々に戻って行く。
この悪循環は、ここが事故物件だと認定されてから今日まで、一度も途切れたことは無い。
この事故物件が事故物件と呼ばれなくなる日は、いつか来るのだろうか?
実質パワースポットのはずですが、その得られたチカラに溺れて不幸になってしまう。
有能になったのに、基準が超有能になったと正確に自覚出来てない自分。
そりゃあ周りが無能ばかりにしか見えなくなりますわ。
それで悪態をつきまくって嫌われて、居場所を無くして退散の永久ループ。
その結果、事故物件と呼ばれてしまう悲しさ。
なお、入居した人が超有能になって出て行く謎現象は、鼻持ちならない人間ばかりが住む物件としてロクに知りたくないと判断されて、アパートが取り壊されるまで気付かれる事はなかった模様。




