記念SS「眠りの森の白雪姫」1
皆様いつもありがとうございます!!
【人魚無双】10万PV&30万字突破ありがとぉぉぉぉぉぉ!!
数話で本日中に完結です!!
人魚無双を応援してくださる皆様へ感謝を込めて。
「お願いしますって!! ちょっと最後の方に白馬に乗ってあらわれて、白雪姫にキスすればいいだけですから!!」
「意味がわからん申し出をするな。それに、ちょっとのノリで口付けなどするものではない」
私ことヒメ・カンザキと、このグローリアス学園教師でありセイレ王国騎士団長でもあるシリル・クロスフォードは、かれこれ1時間、このやり取りが繰り返している。
セイレ王国・王都セフィレラで行われる演劇大会。
プロの演劇集団からアマチュアまで、エントリーしたグループが自身の持てる力を最大限に発揮し魂の熱演を見せるこの大会に、クロスフォード領の孤児院グループがなんと1次2次と激戦をくぐり抜け、最終決戦にまで残ったのだ。
演目は毎回多数決で決めたようで、1次公演では【シンデレラ】、2次公演では【赤ずきん】と、私が教えてあげた物語を上演したらしい。
そして今回の3次公演は、多数決の末に【白雪姫】と【眠り姫】で票が割れてしまった。
そこで彼らは、いっそのことどちらも混ぜたものを、薄い本で文章慣れしているメルヴィに頼み込んでシナリオを書いてもらい上演することにしたらしい。
が……孤児院内での風邪の大流行で、白雪姫、王子様、鏡、継母が出られなくなったのだ。
「鏡はクレア、継母はレオンティウス様がしてくれるって言ってくれてるんです!! ここは先生もひと肌脱いでください!!」
「だからってなぜ私が王子なんだ。レイヴンあたりなら喜んで受けるだろう」
確かに。
あのお祭り大好き男レイヴンのことだ。
常時であれば、魔術師団長であり学園教師でもある立場も気にせず、すぐにノってくるだろう。
そう、常時であれば。
「レイヴンはメルヴィに禁止されてるんですよ」
「禁止?」
繰り返された言葉に私は呆れたように目を細めて、レイヴンの妹であり私の親友でもあるメルヴェラ・シードに言われた言葉を思い出す。
「なんでも、レイヴンはすぐ調子に乗って勝手に動きまわり、シナリオをぶち壊す癖があるから、絶対に出させてはいけないんだとか」
それを私に告げた時のあのメルヴィの恐ろしい形相は今でも覚えてる。
例えるならそう、能面のようにぬるんとした表情。
無だ。
自分の書き上げた力作を壊されたくないと力説していた。
一体過去に何があったの、あの兄妹。
それに、私にはどうしても先生じゃなきゃいけない理由がある。
それは──。
「私とチューできるチャンスなんですよ!!」
「そんなものチャンスでもなんでもない。ただの罰ゲームだこの変態娘」
容赦なくぶった斬られる私の主張。
そう、私が白雪姫の代役なのだ。
本当にキスするわけではないんだけれど、やっぱり合法的にくっつけるのなら先生とがいい!! という、単なる私の純粋でちょっぴり邪なわがままだ。
「大丈夫!! フリですから!! フリ!! それに、賞品の一つはなんと、先生が前に読んでみたいと言っていた、隣国グレミア公国の魔術書【隠匿魔法とランデブー】なんですよ!!」
「!!」
誰が思っただろうか。
こんなふざけた名前の魔術書が、彼を動かす決定打になるなど。
こうして先生の王子様役としての出演が決まった。
ただし、先生は多忙なため、3日間しかない稽古には参加せず、ぶっつけ本番になるということを条件に──。
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