第4話 能力鑑定と非常な現実
能力鑑定って聞くと、めちゃくちゃわくわくする。実際に我が身に起こっちゃうと、漫画みたいにはいかないだろうなと思いつつも、胸が高鳴るのは仕方ないだろう。
漫画みたいにチート能力を授けられちゃったらどうしようとか、軽く妄想してしまう。
まぁ、そういうのは二人の役目なんだろうなぁと思いつつ、異世界でくらい、自分にも役回りがあっても良くないかなと思ってた。
しかし、現実は甘くない。
いや、まだ結果は出てないんだけど、え?何これ??感、半端ない。
「疲れたー。これでやっと半分なの?多くない??」
「なんていうか、お疲れ様です。」
今、俺たちは30分くらい軽い授業を受けた後、ひたすらそれに沿った問題を解き続けるって言う拷問にかけられている。
こうやって、異世界から来た人達を、食べ物で懐柔した後、酷い仕打ちに押しやるのが手口だったのか。恐ろしい。
「なんかよくわかんないけど、月音は大変そうだね。」
「俺はこの世界で生きてけるんだろうか?」
能力鑑定というか、魔法鑑定みたいなのをすると聞かされてわくわくしていたが、待ってたのは、授業とテストだった。
この世界の魔法は、魔法の効果毎に結構内容が違う。魔法陣書いて終わりとか、属性毎に適性があるとか、詠唱するとか、無詠唱とかそういう話では全くなかった。
属性毎に分かれてるって部分は同じだが、内容は思ったより理論的な感じだ。ただ内容が化学とか物理っぽいなと思うのもあれば、国語というか、文学表現的な雰囲気のものや、パズルっぽく感じる物とか、属性毎に本当に雰囲気が違う。
そして、それらの解き方を、最初の30分で説明されるんだが、適性が無いと本当になんて言ってるかわからなくなる。
天馬は、割と多い頻度で授業中に、頭を抱えて難しい顔してることが多い。
俺は一応ほとんど理解出来ているが、器用貧乏って感じがする。出来るけど、ほとんどが中途半端にしか解けていない。
「でも、解けてる時は月音よりも凄い勢いで解いてたし、平気じゃない?」
「そうだよ。先生の人も言ってたじゃない。得意不得意は誰にでもあって、出来ない問題は、本当に、一生かかっても理解出来ないのが普通だから、出来なそうなら諦めていいって。」
「でも、二人してペン進んでるの見るとなぁ。」
「私の得意な問題がたまたま先に並んでただけよ。すぐ止まるわ。………じゃないと私の身が持たない。」
流石に本音が溢れたようだ。魔法は属性毎に適性があり、適性が無ければ、ほとんど理解出来ない。努力でカバー出来なくも無いみたいだけど、それでもたかが知れてるようだ。だからこそ、軽く教えて、ひたすら解きまくるってのが適正判断としては、一番効率的なんだろう。
本来なら、天馬みたいに出来る問題は時間かかるけど、出来ないのは授業段階で、無理ってわかるんだし。
毎回、毎回、大量に問題解き続けてる月音は本当に大変そうだ。
そして、二日に渡って行われた能力診断は、月音のせいで凄く時間が押した。
いやまぁ、月音はなんも悪く無いんだけどね。
「なんていうか、私もしかして狂ってる?」
月音はほとんどの魔法属性で高水準を叩き出していた。中でも回復魔法は最高峰のようだ。流石としか、言いようがない。
「狂ってるのは、今更でしょ?」
「ん?」
あれなんで?自分から言ったじゃないですか!?同調しただけなのに!
笑ってるのに、目が一切笑ってない。こわい!
「俺も一般的に考えると、結構良い方なんだな。」
次に天馬。天馬は雷と火、そして嵐属性が最強クラスのようだ。また、光や植生属性等六つの属性で高水準の適正を示していた。
俺と月音がほとんどの属性を軽くは理解していたため、頻繁にわからない物が出て来ることを天馬は不安がっていたが、この世界では高水準属性を2つか3つくらい持ってるのが一般的とされている。また、最強クラスの属性を持つ人でも、大抵は一属性であり、二つ有れば天才とされている。よって、3つもある天馬は、チート性能と言って、変わりなかった。
「二人が凄すぎる。俺は異世界に来ても、一般的なんだな。」
そして最後に、俺は高水準特性2つという、なんとも一般的な能力だった。唯一チートと呼べる部分があるのなら、全属性ちょっとだけ使える点だろう。
なんていうか、地味と言う他ない。この世界はスキルと言う、言い回しはしないが、世界感が違えば、ハズレスキルとしか言いようがないだろう。
「完全に月音の下位互換だもんな、これ。」
「んー、ナギナが私の下位互換ってことはないでしょ?」
「なんか、珍しい属性の適正があったんだろ?」
二人の言う通り、一つだけ珍しい属性の高い適正値を持っていたけど。
「月音が適正を示さなかった属性も使えるみたいだけど、ほとんどは初期魔法一つ使えるレベルらしいし。唯一の一つもなぁ………」
月音の紹介で、ほとんどの属性と言ったが、属性にも一般的な属性と、ほとんどの人が使えないマイナー属性が存在する。月音が適正を示さなかったのは、全てがそのマイナー属性であり、使える人も極僅からしい。
俺はそれらについても、器用貧乏に理解した。ただ、ほとんどは軽く使えるレベルだ。
「催眠属性。使い勝手良さそうじゃないか?いろんな意味で。ナギナなら、面白く使うだろ?」
「でも、対象がほとんど自分なんだよね。他人や生物に対しては、あんまり適正ないみたい。」
「たしかに、女性に使ってハーレム作るとかは出来ないかも知れないけど。ナギナなら、上手く使うだろ?」
「いや、そんな事考えてなかったし、魔法無しで出来る人が言うなよとも思うけど。」
出来たところで、申し訳なさ強そうだしなぁ。へたれだから。
「でも、天馬の言う通りだよ。何も無ければ、何かをするのは難しいかも知れないけど、持ってれば何かは出来るよ。備あれば憂いなしってやつだね!」
「「……………」」
備えたつもりは一切ないし、備えるんなら、もっと良い物備えたかったとしか言いようがないんだが。
「本当に月音。自力で解いた?」
「カンニングとかしてないよな?」
天馬と共に、疑いの目を向ける。
「はぁ?二人も一緒に解いてたでしょ??ってか、二人して私が終わるの待ってたじゃん!?」
いや、それもそうなんだが、そんな頭の悪そうなことわざの使い方されたら、心配になるのが、妥当だと思うんだけど。
結果を聞いた後は、稽古場に連れ出された。運動能力を見るらしい。
運動能力や筋力は、大抵の場合違いが無いらしいが、稀に身体構造の書き換えの影響の為か、身体能力が向上している事があるらしい。
お!これはパッとしなかった俺にチャンスが来たのかな?とか、軽い期待を抱いて簡単に弾けた。
期待とは裏腹の予想通り、天馬だけ運動能力が向上していた。元から運動神経良かったのに、更に上がるってなんですか!?
プロにでもなるんですか?あ、勇者でしたね。ごめんなさい。
ふーむ。困った。本格的に困った。もう見る能力は無いらしい。後は、本や慣れで、魔法を上手く使えるようになってくしかないらしい。
魔法の属性適正については、いくら努力しても報われないと言われているのが、この世界の常識らしいのだが、稀に〝遅咲き〟と呼ばれる努力の結果出来るようになる人もいるらしい。
最初は一切の適正が無い属性を、努力を続け勉強し続けるとある時、凄まじい勢いで開花する事があると言う。そう言う人を遅咲きと呼ぶのだ。
まぁ、要約してしまえばそれは全ての能力がちょっとずつ使える俺には、そのチャンスも無いって話になるんだが。
能力は一般人とほとんど同じ、器用貧乏すぎる能力は、今後の発展も感じさせない。
異世界チートなんて言えるはずもない。
この世界は、異世界と言う割には、発展している。
知識チートなんて、存在しない。
何代も勇者がいた事で、能力が他と低いからと言って、簡単に冷遇しないと言う決まりもあるらしい。
勝手に連れてきたお客様として、犯罪しかしないみたいな事にならない限りは、大切に扱う準備が出来ている。
復讐なんて、理由が無いね。
そして、今まで以上にチート的な存在となった幼馴染二人。
環境が変わっても、現実は簡単には変わらないって事なのかな?
テストって字書くのも疲れますよね