第29話 メモクラ
機体の外に出るとみんなが待っていた。
みんなに声をかけるよりも先に大きな歓声があがった。
「お疲れ様です!」
「凄かったー!」
「感動しました!」
多すぎて全部は拾えないけど、言葉のニュアンス的に勝ったのかな?
「ナギナ、おつかれ。なんだかんだ言いつつ勝ったじゃないか」
「流石は私が見込んだ男なだけはあるわ。」
二人の言葉から、やっと勝てた事を確信出来た。
俺の意識はギリッギリ保たれてはいたから、先に魔王が消え去ったみたいだ。
「ありがとう。二人と比べたらめちゃくちゃギリギリだったけどね。」
「そ?涼しい顔してたように見えたけど。」
「光の球が直撃した時は、ハラハラしたけどな。あれ何使ったんだ?」
「んー?あれは反転属性とかの合算技。」
「反転属性……やっぱり、カウンター技だったのか!何の属性と混ぜてるんだ??」
実際はほとんど混ざっていない。本来は岩や鋼など守護系の魔法を織り交ぜたり、得意な属性でダメージを軽減したりするもんなんだけど、俺にはそんなゆとりはなかった。
全力で受けて全力で跳ね返す。それしか出来なかったから。
「えーとねぇ。ここから先は有料会員限定です!知りたかったら、お財布のご準備をお忘れなく。」
「いくらだ?全然払うぞ。」
「友達の前で当たり前のようにお財布出さないでくれます?」
俺がいつも取ってるみたいじゃん!
「友人間でも払うべき時は払うべきだろ?この世界の魔法って、知的財産的な雰囲気あるし。」
「言ってる事は妥当だけども。ごめんなさい、企業秘密なので、これ以上の開示は難しいですね。」
これ以上何も無いんですよ、本当は。それを知られるわけにもいかないし。
「え!?私それ目当てで会員登録したんですけど、嘘だったんですか!?」
月音はいつ会員登録したんですかねぇ?
「たぶん、偽サイトですね。」
「う、嘘でしょ!?十万も払ったのに。」
「よくその値段設定で払おうと思ったね。どんだけ知りたかったの!?」
「いや、めっちゃボルじゃんとは思ったよ。でも、それだけお金が無いのかなって思ったら。」
うぅって、涙流そうとしないで。
「月音、そのサイトどこ?俺も登録したい。」
「じゃあ、URL貼っておくね。」
「偽サイトって言ったよね!?」
友人間でもお金のやり取りをちゃんとするのは良い事だと思うけど、貢ぐのは絶対違うと思うんだけど。
「くう、残念。今回は諦めるか。どうせ俺には反転属性の適性ないしな。」
「勇者様、愛用の反転魔法として、転売出来ると思ったんだけどね。」
「全然、元を取りに行く気満々だったのね!言わなくて良かったわ。」
「「ざんねん。」」
これと同じにされてる天馬は怒った方がいいと思う。
「ふふ、相変わらずだね。3人は。」
側で笑ってた王子様がやっと入ってきてくれた。
もっと早く止めた方がいいと思うんだ、こいつらの暴走。(主に月音の)
「集まるといつも楽しそうでいいですよね。」
なんか改まって言われると照れるな。
「ただの腐れ縁だけどね。」
「だとしてもだよ。」
王子様とキラリアさんもちょうどいい距離感って感じがするけどな。
今日もなんだかんだ、キラリアさんのこと要所要所で気にかけてた感じしたし、それでもつきと遊んでる時も楽しそうだったけど、王子様の心はどこにあるんかなぁ?
「さて、時間も遅くなってきたし、そろそろ帰ろうかなって思うんだけど、寄っておきたい場所とか、もういっか遊びたいゲームとかあるかな?VS魔王城以外なら、まだ時間は取れなくもないけど。」
「うーん、俺はもう十分満足したかな。」
「俺も。」
とりあえず、一通り楽しめたし、もういいかな?
勝てたって事実だけでも、十分満足だ。
「んー、そうね。私も特には………」
一応考えつつも、もう満足したという雰囲気で語る月音の元に、スススッとレーリさんが近づいていた。
耳元で囁く言葉に、月音の表情が変わっていくのがわかる。
「何それ!?楽しそう!最後にそれやりたい!!」
月音が何か吹き込まれ陥落したようだ。
「えっと………何かな?」
王子様は何か察したのか、顔が若干引き攣って見える。
「メモリアル倶楽部!最後にみんなで撮ろうよ!」
「メモリアル倶楽部?」
まぁ、字面的にプリクラっぽいかんじかな?
王子様はあの目が大きくなる感じとかが嫌なのかな?
「なんだそれ?そんなのあったか?」
「するなら、最後が良いかなと思い、説明を省いてしまいました。月音ちゃんに伝えないとと思っていたのに、危ないとこでした。」
みんなでぞろぞろと歩いていく。
一応、情報収集しとくかな。
「キラリアさんはやった事ありますか?」
「いえ、申し訳ありませんが、私の記憶にはありませんわ。」
「メモクラは女性の方が好きな人は多いですからね。デロイリッド様が興味を示さなかったので、キラリア様はご存知無いのかと思います。簡単に言えば、写真を撮ってその場で加工するゲームですね。」
あ、もう本当にプリクラっぽいな。
「せっかく写真を撮るなら、先程の魔王城や店先の方が雰囲気がありそうですけど?」
「そういうのとはまた、違うんですよ。通常の写真に出来る加工とは何倍も簡単に、何倍も凝った写真が撮れるんです。まぁ、見てみるのが一番早いと思いますよ。」
「へぇ、そうですのね。それは楽しみですわ。」
そういえば、この世界の写真って立体的に写して取り出したり出来るんだっけ?
あれ?じゃあ、この世界での加工ってどうなるんだ?
なんか少しだけ怖さもある気がするけど。
わからない。わからないけど、来てしまった。
仕方ないので、言われるがままにポーズして写真を撮った。
そして女性陣がラクガキを始めたので、しばし待つ事となった。
「あれどれくらいで終わるのかな?」
「次が控えてない時は結構時間かかるかな。」
「デロイリッドは取ったことがあるのか?」
「レーリとかと来た時はたまに撮りますね。」
「なんか、顔が引き攣って見えるけど、そんなに変わるのか?」
「えっと、そーだね。なんか、別物が来ると思うよ。」
あー、この世界でもそんな感じなのね。
俺と天馬も、色々と察してしまった。
まぁ、別に目が大きくなったりとか、皮膚がやけに綺麗になるくらいなら、別にどうってこともないよね。そういう遊びなんだし。
逆に、もともとカッコ良さ全振りの二人がどう変わるのか、少し楽しみだったりする。
「そういえば、VS魔王城のサイトってどうやって開くんだ?初見で戦いたかったから、あまり調べてないんだよな。」
「あ、そうなんだ。公式サイトに繋げば、ランキングとかもすぐに見れるよ。天馬君のも更新されてるんじゃないかな?」
天馬が開いたサイトを隣で眺めてみる。
魔王とその難易度ごとにランキングが表示されていた。
天馬の戦った1代目魔王ジェレイドの50(ハーフ)のランキングは、2位が10分29秒なのに対し、一位の天馬が18秒と記録されている。
「え?なにこれ?バグ!?天馬早すぎじゃない!??いや早かったけどさ。」
「なんか、もったいないなこれ。みんなが10分以上楽しんでいるなか、俺だけ18秒って。」
「いや、もったいないって話なの!?これ?」
「二つの魔法で倒してたからね。あれをするには、もう少し難易度を下げないと難しいかな?それでも一分を切るのはなかなか見ないけど。」
あ、本当だ。難易度を避けると、一分何十秒見たいな記録がちらほらある。
「やっぱり、普通に魔法が使えるのが異常なんだね。」
「異常って。」
言い方あるだろ見たいな目で見てくるけど、これについては俺、間違ってないと思う。
「月音が戦った魔王って名前なんだったっけ?」
「ガルヴィーじゃなかったっか?」
「うん。合ってるよ。でも、そこはソロページだから、こっちのデュオの方だね。」
「あ、人数でも分かれてるんだね。ソロ・デュオ・トリオ・パーティか。最大参加人数は四人なんだ。」
「いや、パーティは四人以上が対象だよ。ただ、四人より一人多くなるごとにペナルティが追加されるよ。」
「クリアタイムに時間が追加されるのか。」
「数の暴力はやっぱり強いね。」
「でも、デュオ以上だとデスペナルティもあるから、人が増えるのもリスクは一応あるかな。」
「結構、きちんとルールが決まってるんだな。」
「へー。あ、てかやっぱり、月音とデロイリッドも凄いタイムだったんだね。」
早くても30分代の中、8分53秒って、魔法ってやっぱり偉大なんだね。
「まぁ、僕が結構慣れてたのもあるかな。魔王ガルヴィーは、ソロの50(ハーフ)で10分代で倒したこともあるし。」
本当だ。デロイリッドもちゃんとランカーのようだ。7位にデロイリッドの名前がある。
7位って相当だよな。てか、アリアトスさんとの話を考えると、一位とかも持ってるって感じかな?
「デロイリッドもちゃんと強いんだね。」
「ん?あー、いや、VS魔王城のスコアを見て実際に強いかって言われるとなんともね。」
「そうなの?」
「魔王にもそれぞれ弱点とか、パターンとか、結構あって、野生のモンスターを狩るのとは違って、個体自体も完全に一緒だからね。倒し方を知ってるかが、結構キーにもなるんだ。VS魔王城を純粋な腕試しとして使う人もいるし、僕たちみたいなスコアを競う人もいるから、絶対とは言い難いかな。」
「なるほどな。」
「それでも、ランカーの中でちゃんと上位に食い込んでるのは、凄いことだと思うけどね。」
「そうかな?ありがとう。」
戦い方や定石がわかってるからって、それ通りに動くのは実際には難しいことだし、結果が出てるって十分に凄いことなんだよね。
「3人とも、お待たせー!」
そんなこんなで、女性陣も終わったようだ。
「終わったの?」
「うん。とびっきり可愛く出来ちゃった。」
そう言って、月音が見せてきたのは出来上がった画像の一つっぽい。
男女もれなく全員が化粧して女装させられている。
「待って!別人ってレベルじゃなくない!?骨格から別物に見えるんだけど!!」
俺も天馬もデロイリッドもこんなに腰くびれていないし、俺も天馬も月音もデロイリッドも、胸がこんな膨らんでいた記憶がない。
「なんか、失礼なこと考えなかった?」
「いや、普通のリアクションだと思うよ?」
一応、面影はあるから、どれが誰かはわかるけど、みんな一様に別人と化している。
顔を可愛い系に統一した為か、美人系の顔立ちのキラリアさんやピークさんも可愛い系になっているし、月音やレーリさんのプロポーションは、別物だし、俺たちの性別は完全に別物だった。
「やっぱり、なんか失礼なこと考えてる気がするんだよね?」
「でも、加工したのは月音でしょ?」
「治せるなら治すじゃん!憧れなんだもん。」
「俺は何も言ってないからね。」
むー、と頬を少し膨らませつつ、
「じゃあ、こっち。」
と、画像を切り替えてみせた。
次は全員が男装しているものだ。
うん。これも別人だね。
骨格に顔パーツ、髪の毛や服装いじれるって、なんでもありすぎないかな?
向こうの世界の加工詐欺が可愛いらしくなってくるわ。
「んー、とりあえず心折れるな。女性陣、みんなかっこいいし。俺の顔も修正してくれてんのに、それでも一番地味に感じるわ。」
「え?そーかな?いじりすぎるのもなって思ったんだけど。」
「絶世の美少年にしてくれてよかったのに。」
「なってるじゃん。」
「お前がな!」
「えへへ。」
良い笑顔しますね。本当に。
「これは、レーリが加工したのかな?」
口ぶり的に、デロイリッドはこうなるのわかってたのかな?てか、すでに経験済みって感じかな?
「いえ、私はこういうことも出来ますよと教えただけでで。」
「私とキラリアちゃんがベース、監修で。ピーちゃんが仕上げ担当だよ。」
「結構、うまく出来たと思いましたがお気に召しませんでしたか?」
キラリアさんに困ったように言われてしまうと。
「いや、凄くよく出来るなって。」
「関心しただけでね。」
「うん。」
俺たちは受け入れるしかなかった。
ここまで作り替えられるとか、流石に予想出来なかった。
このデロイリッド、めちゃくちゃあざと可愛いね。
モコモコふわふわバニーちゃんだね。
天馬はワンコ系か。
垂れ耳なのが可愛いよね。
で、俺が猫か。
眠たげなとこが、可愛いらしいよね。
で、なんで女性陣は普通にドレスなの?
え?なんでだろ?飼うなら何が良い?見たいな話してたからかな?
え?
ん?
動物の話だよね?
どうだったけ?忘れちゃった!




