第27話 初めての魔王討伐 天馬と月音編
「それで、そろそろ順番が来るんだけど、メンバーはどうしようか?一応、3枠取ってあるから皆ソロで挑むことも出来るよ。」
「結構あるのね。」
「ソロ以外でも良いのか?」
「うん。人数制限はないよ。でも、人数によって、難易度が異なるかな。」
「でも、3枠あるなら、ソロが見たいって事よね?」
「ううん。そこはソロでやりたいって言われた時ように、用意しただけだから大丈夫だよ。最初、3人で挑んで、誰かソロでやっても良いし、枠が余るなら、僕やレーリが埋めるから、好きに選んでいいよ。」
「んー、そうなると3人でも良いけど、天馬はソロでやりたそうだけど。」
「そうだな。ソロでやりたいし、2人の戦いも見たいな。2人は魔法の練習もしてるんだろ?」
「してはいるけど、相手は魔王なんだよね?はっきり言って、俺はどうこう出来るレベルだとは思えないんだけど。」
「いいじゃん。せっかくなんだからさ。難易度も選べるし。それぞれの成果発表って事でさ。それぞれやろうよ。」
天馬はわかってたけど、意外と月音もノリ気っぽいな。
月音は、回復魔法のイメージだったけど、どうするのかな?回復魔法も練習し始めたとは聞いてたけど、攻撃魔法を覚えたって事か。基本属性の適正はほとんどが高かったはずだし。
「まぁ、2人がそうしたいならそれでも良いけどさ。」
「じゃあ、決まりね。」
「順番はどうしようか?」
そして厳正なるジャンケンの結果、天馬が一戦目に決定した。
絶対、トリだと思うんだけど。早く戦いたいって、どんだけ脳筋かしちゃったの!?
「えーと、天馬が戦うのは、属性領域50%の1代目魔王様だっけ?」
「うん。魔王ジェレイド。人型の魔王で意思もある。暗黒魔素の満ち足りた世界を作ることを切望した魔王。武器は黒剣を持ち、剣と魔法を駆使して戦う、戦闘タイプの魔王だね。」
「戦闘タイプ?」
「魔王にも、自信の力を持って侵略を進めるタイプと疫病などを振り撒いて、国力を削いで侵略を進めるタイプがいるからね。やっぱり、力で征服してくる魔王の方が、純粋な戦闘を行う場合、強いよ。」
「だから、天馬は1代目にしたのかな。」
「うん。とりあえず強い魔王と戦ってみたいって言われたから、おすすめしたんだ。」
「デロイはこの魔王様には勝てるの?」
「一応、全ての難易度をクリアはしてるけど、何度も挑戦してやっとだったね。モード100(オール)は一度どだけだし、77(セブンズ)も安定はしないかな?50(ハーフ)は、今では安定して倒せるけど、動きの癖と有効な魔法攻撃に気づくまでは何回も負けたのを覚えてるよ。」
「はー、沢山努力したんだね。」
月音が王子様に感心していると、横からアリアトスさんが口を挟んだ。
「ゲームであっても、本物の魔王だからな。凡人は何度も挑戦しないと勝てないんだ。」
「アリアトスも一度ではクリア出来ていないだろ。」
「ジェレイドの50(ハーフ)は、3回だ。一度目からほとんど追い詰めてはいた。お前ほどはかけてないさ。」
「確かにね。でも、今となっては実力は同じだろ?」
2人がまた、視線をバチバチとぶつけ始めた。
「仲が良いのはわかったけど、そろそろ始まるよ。」
月音がその空気を読むはずなんてなかった。
そして、月音の言う通り、ステージには天馬とジェレイドが相対していた。
お互いがお互いを認識すると同時に、お互いがお互いの距離を詰めた。
デカイ鍔迫り合いの音が鳴り響き、すぐにお互いを弾き飛ばした。
「暗黒飛光!!」
距離を取った位置から、魔王ジェレイドが黒い閃光波を放った。
応戦する様に天馬が叫んだ。
「嵐竜雷火!!」
天馬が呼んだ強大な嵐は、黒い閃光波を飲み込みながら、ジェレイドに向かって直進した。
ジェレイドがなんとか、嵐を剣で払い避けた。
払い避けた嵐の向こうから、天馬が勢いよくあわられた。
「嵐雷の一撃!!!」
名の通り、嵐のようにあわられた天馬による強大な一撃が、ジェレイドの首を切り落とした。
ジェレイドはそのまま再起不能に陥った。
凄まじい歓声で、ゲーセンの中が包まれた。
「す、凄い歓声ですね。」
「戦闘面での天馬様への期待はもともと非常に高かったですが、魔王ジェレイドに初めての挑戦で勝ってしまいましたからね。」
「それも、完全にジェレイドを圧巻した上での勝利です。50(ハーフ)だったとしても、凄すぎますよ。」
今までの話から考えて、天馬がしたことが偉業であることはよくわかる。ピークさんもレーリさんも、呆気に取られて目が点だ。
でも、俺からしたら、流石はチート勇者様って感じだ。天馬なら当たり前だとも思うし、だからこそトリを飾って欲しかったのに、本当に譲って貰えばよかった。
この後に戦うとか、嫌すぎるんだけど。
「いやぁ、天馬は流石すぎね。こんな早く終わるなら言っておいて欲しかったのに。まだ、準備してないんだけど。」
「まぁ、天馬だからね。」
「たしかに、もっと信じるべきだったか。じゃあ、私も行ってくるね。行こう、デロイ。」
「うん。頑張ろう。」
「え?デロイリッドも行くの?」
「まぁまぁ見ててよ。私の魔法。」
「う、うん。」
まじか、王子様と共闘する感じなの?
王子様って、ここのランカーって書いてるし、これ月音達も勝つ流れじゃない??
「月音はデロイリッドと一緒に戦うんだな。」
「そうみたい。代わりに難易度を77(セブンス)にしたみたい。」
「まぁ、デュオになるだけでも、難易度補正がかかるらしいけど、月音は何する気なんだ?」
「んー?なんだろうね。でも、一人で勝ち目ないから助っ人を呼ぶってタイプでもないしね。」
「ああ、出来る限りのことを全力でやるはずだ。」
「一緒に魔法の練習はしてたみたいだし、連携の成果を見たいとかかな?」
「どうだろうな、まぁ、見てればわかるだろ。」
そうして、月音と王子様が向い合うのは、魔王ガルヴィー。四代目の魔王であり、人型の魔王の中で、最も魔法攻撃を得意とする、魔王様だ。
直ぐに魔王による攻撃が始まった。
合わせるように月音も動く。
「私色の世界・岩!」
月音を中心に、禍々しかったステージが、こげ茶色に染まっていく。
月音のステージが出来るのに合わせて、王子様が岩の壁を作り、魔王の攻撃を防いだ。
「あれって?」
「77セブンスであの速度で魔法が使えるのか?月音もデロイリッドも?」
「あれは、月音様の魔法ですね。月音様が作った属性領域です。月音様が属性領域内の魔素をデロイリッド様が使うのを許可しているため、デロイリッド様も、普通の速度で魔法が使えているんですね。」
「属性領域って、人でも作れるんですか?」
「作ることは、難しくはありませんね。けれど、あんな風に、半径10メートル近い大きさの領域を作る人は見たことありません。一般的に半径30センチぐらいで凄いと言われますね。」
「規格外じゃないですか。」
「はい。今回はデロイリッド様と二人ですが、あの大きさなら、もっと多くの人が入ることも出来るでしょうから、月音様がいれば魔法を使った戦いも容易になりますね。」
「今回はあえて、77(セブンス)モードにしたのか?100(オール)や77(セブンス)では魔法を咄嗟に使うのは難しい。それでも、最初にこれだけの属性領域を77(セブンス)でも作れるってわかっていたから、この難易度なんじゃないか?」
「そうですね。どこまでわかっていたかはわかりませんが、出来る見込みはあったのかもしれません。」
レーリさんやアリアトスさんが考察する中でも、月音達のバトルは進んでいく。
王子様は岩や土を操るのを得意としていて、土や岩で作った拳で魔王ガルヴィーを殴ったり、岩の拳と挟み撃ちする様に、王子様が切り掛かっていた。
王子様もガルヴィーからの攻撃を受けてもいたが、王子様が怪我をしても月音がすぐに回復してましう。ガルヴィー視点だとジリ貧にしかなっていなかった。
だからこそ、先に月音を攻撃しようとしても、王子様が魔法で防いでしまう。
王子様もガルヴィーの攻撃パターンは、上手くわかっているようなので、綺麗に攻撃を防いでしまう。
「月音様はほとんどの属性で高い水準の魔法特性を持っていました。ですが、攻撃系統の魔法への応用は余り高くありませんでした。代わりに高かったのが、属性領域などのサポート能力です。今回は、デロイリッド様がその隣で戦っていますが、月音様ならどんな一般人でもエリート戦士に変えてしまうほどのポテンシャルを秘めています。」
レーリさんの目線の先で月音がデロイリッドに叫んでいた。
「デロイ、準備出来たよ!」
「わかった、次の攻撃のタイミングでくれ!」
「おっけー!」
月音から王子様に、魔法の付与が行われた。
受け取ったデロイリッドは、最後の攻撃を放った。
今までの1メートルくらいの拳ですら、大きく見えたのに、その5倍近い大きさの岩石でできた大きさの拳が魔王ガルヴィーへと振り下ろされた。
プチっという音が聞こえそうなレベルのサイズ差で、ガルヴィーは潰されてしまった。
ステージが無機質な空間に変わったことで、戦闘が終わったことがわかる。
大きな歓声の中、またレーリさんが口を開いた。
「月音様は人が魔法を使えない様な場面でも属性領域を作り、他の人にも魔法を使えるようにしてしまいます。特性から考えて、希少属性以外の属性領域なら作れてしまうので、人を選ばずにサポートも可能であり、練度の高い属性魔素を付与することで、本来その人が使える魔法以上の魔法を使えるようにしてしまうんです。月音様は歴代最高のサポート型聖女様です。」
レーリさんの言葉を聞いてよくわかった事がある。
月音は回復魔法だけでも十分にチート級の能力を持っていると思っていたが、天馬に負けず劣らずの化け物である事が証明されてしまった。
あぁ、やっぱりな。俺の幼馴染達は異世界に来たって最強だった。
そんな事はわかっていた。わかっていたことだけどさ。じゃあ、やっぱり俺って要らなくない!?




