第24話 アミューズメントパーク 遊聖の勇戯城(アークグラセフィア)
「ほほう、これがナギナのクッキーね。思ったより見た目は普通ね。味は……無難に美味しいわね。」
「うん。素朴な感じがいいな。」
「その感想で、一切悪意が無いのが一番傷つく。」
せめて馬鹿にしてくれよ。恐ろしく個性がないんだぞ。
「そうは言っても。」
「でも、珍しい属性で作られてるんだろ?」
「作られてはいるけど、出来る事は少ないよ。」
「例えば?」
「このクッキーは、時間属性を練り込んでて、食べると、0.00002秒位の時間操作魔法が使えるよ。」
「なんて?」
「だから、0.000002秒だって。」
「さっきより一つ多かったぞ。」
「あれ?まじか。えっとね、とりあえず少数第五位の桁数が2だよ。」
月音がクッキーを見ながらなんか唸ってる。
「んー、そうねぇ。でも、時は金なりって言うし、時間が買えるクッキー……
「ダメだぞ!絶対、明らかに詐欺臭しかしないからな!」
「流石、月音!その発想はなかった!」
「お前も感銘を受けるなよ!!」
「冗談じゃない。」
笑いつつ、クッキーを口に投げ入れた。
うん。これも美味しいわね。と、頷いている。
「こっちが博打属性だね。359万分の1の確率で成功する魔法が使えるよ。」
「使えないと言った方が正しくないか?」
「万に一つでも可能性があるなら、諦めるのは愚者のすることじゃないかしら?」
「そうだよ。諦めたらそこで試合終了だってよく言うじゃん。」
「他人の名言を泥に浸すなよ!」
「ごめんなさい。」
「謝れるのは良い事だと思うけど。」
「ちなみに、宝くじで一等出すのよりは確率が高いです。」
「ソシャゲのガチャよりも低いけどな。」
月音がクッキーを口に投げ入れる。
モグモグと咀嚼した後、手を前にかざした。
「………」
しかし何も起こらなかった。
「当たらなかったわね。私、運は良い方なのに。」
「運でどうこう出来るレベルじゃないだろ。」
天馬が呆れた顔で、首を振った。
「ちなみに、あの確率で使える魔法は、前方約5メートルを焼き尽くすレーザー砲だよ。」
「当たらなくて良かった!!なんて魔法打ってるんだよ!目の前、俺らだぞ!」
「大丈夫よ。当たるはずないじゃない。こんな確率。」
「万に一つでも可能性があるのに、手を出すのは愚者のする事だろ!?」
「さっきは使えないに等しい的な事言ってたのに。」
「意見が二転三転するのは、ダメ男の典型パターンよ。」
「人は状況が悪いと意見が変わる生き物なんだよ。」
「悲しい性ね。」
「天馬がそんな人だったなんて。」
「100お前らがおかしいからな。」
そう言うと、天馬はクッキーが口に運んでいた。
「あ、それは使役属性のクッキーだったかな。一画で出来る命令を対象に従わせる事ができるよ。」
「一画ってなんだ一画って!何の命令が出来るってんだよ。」
「え?何させる気よ。」
月音が蔑んだ瞳を天馬に向けた。
「だから、逆に何が出来んのか教えろって!!」
「“脱衣″この国の文字で唯一、一筆書きが出来る文字だよ。」
「サイテー」
「ナギナお前……一緒に警察署までは行ってやるからな。」
「流石に冗談だよ。」
そんな感じに希少属性や、うまくいかなかった属性もとりあえずは食べられるようになった。
そのクッキー達をひとしきり食べ終えると、月音が改めて口を開いた。
「とりあえず、実用性は皆無ってことね。」
「突然の正論はやめて。一応、その属性を使える人には、補助になるから。メイン料理とかなら、効能も上がるしさ。」
「お手軽に口に出来て効果が高かったら、凄いんだけどね。」
「実際、そう言う携帯食的な物もあるからね。冒険のお供に食べたことあるよ。」
「あ、確かに。食べた事あるかも。飲み物もあるしな。」
「俺がそのレベルを自作しようとすると、出来るかわからない上に、確実に味は犠牲になるだろうね。」
「それはちょっと。」
「食えるものではあって欲しいな。」
でしょうよ。
「そう考えると、うん。美味しかったわ、ナギナ。」
「ごちそうさまでした。」
んー、この感じで終わるのはなんか納得いかないなぁ。
「はぁ。2人用に特別に用意したクッキーがあるから、せっかくだから出しとくよ。」
そう言って、俺は2人の前に二つのクッキーを前に出した。
「好きな方食べて良いよ。」
「え?恐怖なんだが。」
「絶対ろくでもないんだけど。」
2人が明らかに畏怖した表情でクッキーを見ていた。
「大丈夫だよ。一つは自信作だから。」
「もう一つは!?もう一つはどうなんだ?」
「いえ、これは悪い方に自信がある的な意味なんじゃ。」
「そんなことないって、一つはただの罰ゲーム。」
「やっぱりろくでもないじゃない。」
「えー、めっちゃ不味い的な感じか。
2人は二つのクッキーをマジマジと見つめている。
「見た目はあんまり変わらないのよね。」
「若干色が違うくらいだけど、逸脱した色でもないしな。」
「じゃあ、こっちで。」
「あまりものに福はあるはず。」
「「いただきます。」」
「アガっ!!」
直ぐに月音がヒロインらしからぬ、音を発した。
天馬は驚いた表情で、くちをモグモグしていた。
「天馬が自信作で月音が大当たりだね。」
「こ、これ食べられるの(こえたえらえるの)?」
そこで吐き出さなかったのは偉いと思う。
「最初の一口だけだから、もう大丈夫だよ。」
「ほんお?」
「はい、天馬に誓います。」
恐る恐る月音は飲み下していった。
「何なの?さっきの。」
「食べると静電気レベルの電気が流れるビリビリクッキーですね。」
魔素を混ぜる時にあえて、極僅かの電気属性を混ぜる事で、一口目だけ電気を走らせる用に改良したクッキー。
「怪我はしないレベルだから、安心してね。」
既に回復魔法を使ってるっぽいので、意味はないけど伝えておいた。
「だとしてもよ。」
「自信作の方は、もう少し用意してるから、これで許してください。」
月音による無言の圧力が、天馬を襲った。
「色合いが俺が食ったのに似てるから大丈夫だろ。」
天馬が一つ口に運ぶ。
「うん。自信作って言うだけあって、なかなか面白いな。」
月音も小動物かの様に恐る恐る手を伸ばした。
「ん、パチパチする。なんか、お菓子とかアイスに入ってるやつみたいね。」
「あ、イメージはそうだね。月音が食べたのは、痛いレベルのだったけど、これは楽しめるレベルに調整した物だから。」
「味も、良い感じに甘じょっぱくて、好きだな。」
「代わりに、食事効果は全くないけどね。」
「こっちのが向いてるんじゃない?」
「そう言わんといてよ。」
月音の機嫌も戻せてそうでよかった。
「で、だいたい食べちゃったけど、今日ってただのお茶会じゃないよね?」
「そういえば、天馬から話があるってよばれたんかだっけ?」
「そういえばそうだったな。」
「主催者でしょ?」
「お前らがボケ倒すからだろ。まぁ、今日の話な。前にどっか行きたいって話しただろ。」
「そうね。」
「うん。」
「てことで、ここがマルベールン王国最大のアミューズメントパーク!遊聖の勇戯城だ!!」
「天馬も初めて来たんだよね。」
「凄い、物知り顔で話してるわね。」
「ちゃんと、いろいろ調べてきたからな。」
下準備に抜かりない天馬が連れてきてくれた場所。勇聖の遊戯城。過去の勇者様が作ったゲームセンターみたいな場所らしいけど。明らかに面積が広大すぎる。大きさ的にはテーマパークの方があってそうなんだよね。
距離的にはかなり遠い土地に来たっぽいから、土地は有り余ってるみたい。
この世界の移動はめちゃくちゃ便利だ。今までもポータルを利用していろんなところに狩りに行っていたけど、改めて凄いなと思う。
専用の道具に行き先を指定して、ポータルに入ると、目的地のポータルが道具から自分の体を読み取り、体ごと呼び出してくれるって言う、やばい技術で作られている。
作るのに希少な魔石が必要らしいけど、ポータルを作ってしまえば必要な魔素は多くない為、どこに飛んでも料金が一律って凄すぎる。
そのおかげで、この国は都市部と住宅街が結構分かれてるっぽいんだよね。
「懐かしいわね。」
「キアは久々だったっけ?」
「子供の時に来て以来よ。」
今回はキラリアさんとデロイリッド(王子様)、お付きのピークさんにレーリさんが来ている。
「結構、大所帯だね。デロイリッドがせっかくだから同行したいって言ってね。その時、キラリアさんも話を聞いていたから、一緒にって。」
「本日は、同行させてくれてありがとう。今後、もう少し忙しくなりそうだったから、一度気を抜いておきたくてね。」
「せっかくの機会だし、人数多い方が楽しいからな。ありがたかったよ。」
「これでも軽いゲーマーでね。時間があるとたまに来るんだ。」
えっ、そうだったんだ。この世界の漫画は見たけど、ゲームとかには触れられて無かったからな。どんなゲームするんだろ?てか、異世界のゲームってなんだ?想像つかないんだけど。
そんな感じに男達で話している裏でも会話が聞こえた。
「キラリアさん、今日はドレスじゃなくて私服なんだね。黒のパンツルックカッコ良すぎる!」
「流石に、こう言う場所でドレスは着ていられないもの。月音様も、可愛らしくて素敵ですわ。」
「ありがとう。」
キラリアさんはの今日の服装は、白のブラウスに黒のパンツスタイル。上に暗めのカーディガン?を羽織ってる。
暗めの服装なのは、魔力の問題かな?まぁ、だとしても、スタイルの良いキラリアさんにはピッタリな服装だけど。
そういえば、デロイリッドもデニムにパーカーで、珍しい格好だよね。
休日というか、行く場所によっては、ちゃんと服装選んでカジュアルな物も来てるんだな。
はぁー。これはこれで絵になってカッコいいな。
「さて、何から遊んでいこうか。」
「初めての方も多いですし、一通り見てもいいんじゃないですか?」
「そうだね。じゃあ最初は、前方を占めてるプライズ系から見ていこうか。」
入り口付近はプライズ系なんだ。その辺は向こうと同じだね。
「この辺が破壊系。景品を破壊することが出来ると、受け取り口から再生されて出てくるよ。」
「なんか、説明の字面がやばかった気がするんだけど、聞き間違いかな?」
「凄く当たり前のように景品を破壊するって言ってたからな。」
「見た目はやばいけど、難易度はちょうど良いよ。何かやってみる?」
「んー、やるにしてもわからないキャラばっかだしな。誰かわかるのある?」
「んー、なんでも良いんでしたら、私このキャラが好きですよ。」
ピークさんが、男性キャラのフィギュアを指さした。
「じゃあ、これでやってみるか。」
硬貨を入れると機械が動きだす。
「見た感じ、操作はUFOキャッチャーとかに似てるね。」
「そうだな。」
天馬が性格に動かした発射機は、照準が決まると瞬く間にビームを打ち出した!
「あ、あぁあぁああー!!!」
ピークさんの絶叫が響いた。
綺麗にフィギュアの顔面が貫かれ消えて無くなった。
「え!?あ、こんな出力なのか!?これ??」
「天馬なんてことを」
「いや、でもこう言うゲームなんだろ!?これ??」
「それがわかっていたのに、好きなキャラを聞いてそれでやるなんて。」
「いやだって、どうせなら誰かが欲しい物でやるじゃん。こういうのって。」
「ピークさん、大丈夫だからね。あっち向いてよう。」
「いえ、月音様。私が軽々しく口にしたのがいけなかったんです。」
「そんなことないわ。天馬!それ責任持ってなんとかしなさい。」
「え、ほんとごめんなさい。」
天馬は申し訳なさからか、一度も失敗せずに着々と破壊を重ね、5回で取ることに成功した。
「ピークさん。これで許して貰えないかな?」
「え、いえ、そんな。」
「いや、本当にお願いします。」
「すみません。ありがとうございます。絶対、大事にします。」
物への有り難みが増したのかな?
「気を取り直して、次が操作系だね。魔素操作系のミニゲームをクリアすると景品が出てくるよ。」
これはまともそうだ。風船みたいなものを、自分の魔素を使って操作して目的地に持ってく系ね。
途中、邪魔者に当たったらアウトって感じか。
「こっちのイルカ見たいなのを動かすの可愛いね!」
「本当だ。泳ぎ方も優雅でいいね。」
「じゃあ、私やってみる。」
月音が操作するイルカに向かって、網やらサメやらが、迫ってくる。
「網とかサメとか、地雷が迫ってくる中、よく涼しげに泳げるなこいつ。」
「たしかに。」
「あ、弾け飛んだ。」
「地雷に当たった見たいだね。」
「思ったより難しいね。もっかいやって良い?」
「うん。」
月音と一緒にレーリさんも遊び始めた。
たしかに見てて、面白そうではあるよね。
俺もなんかやりたいな。
「キラリアさん、何見てるんですか?」
「え?あ、同じゲームでも様々な種類がありますわね。」
「そうですね。どれも面白そうで、良いですよね。何かしますか?」
「い、いえ。私は。」
キラリアさんは、そんなに来たことないって最初に言ってたし、遊び方がよくわかんないのかな?
「じゃあ、これ俺がやってみても良いですか?」
「え、ええ。」
たぶん、この風船を動かすタイプのゲームのプライズを見てた気がするんだけど、どれだろう?
まぁでも上手く出来る自信もないしとりあえずやってみるか。
お金を入れて風船を動かし始めると、イライラ棒のように、移動できる枠が出てくる。しかも強制スクロール方式で、割と早い速度で動き始めた。
一瞬で割れた。
「難しすぎない!?出来る未来が全く見えなかったんだけど。」
「ナギト様は運がありませんね。このタイプはやるたびに難易度が変わるんですよ。さっきのは最高難易度ですね。」
「あ、そうなんですね。」
なるほどね。確率機に近い感じのゲームってことかな。
「じゃあ、もう一度やってみます。」
さっきよりは、速度は遅めに見える。しかし、枠がだいぶギリギリすぎないかな!?あ、割れた。
「無理!」
「運無いですねぇ。クリア出来なくても、もう少し遊びがあると思うんですけど。」
ピークさんの言う通り、月音とかも出だしは順調で、途中で失敗するって感じだったもんな。
「ピークさんやってみます?」
「いえ、私はこれがあるので。」
先程、天馬にもらったフィギュアを大事に抱えていた。
そういえば、壊すときは箱から出てたけど、景品は箱に包装されてるんだね。
「よかったですね。」
「心を痛めた甲斐がありました。」
いらない痛みな気もするけどね。
「じゃあ、キラリアさんやってみます。そんなに難しくないですよ。」
「2連続で即死しているのにですか?」
「操作は難しくないですよ。」
言い直しておこう。
「ですが、そうですね。せっかくの機会ですから、キラリ様も遊びましょうよ。」
「そうですよ。」
2人で呼びかけてみると、キラリアさんも
そうですわね。
と、笑って答えてくれた。
そうして、キラリアさんはぬいぐるみを抱えることとなった。
「あの機体、知能でも乗ってるんですかね?」
「キラリ様の時、凄い難易度優しかったですもんね。」
「あの、よらしかったのかしら?何か欲しい物がありましたのでは?」
「いや、本当に遊んでみたかっただけなので、大丈夫ですよ。」
てか、キラリアさんが何欲しいんだろうと思ってたけど、熊っぽい雰囲気のぬいぐるみだったんだね。
可愛い物への感性は万物共通なのかも。
集まり直して次のゲームにやってきた。
「次に紋章系。欲しい景品と同じ紋章を描く事に成功すると景品が受け取り口に出てくるよ。」
「描くだけでいいの?」
「えっとね、例えばこれだと、外枠に点が四つ四方に置いてあって、中枠がその点を繋ぐ様にバツ印が書かれてるでしょ?」
「うん。」
「描く時に、この外枠の部分は隠されているから、どの角度でバツ印を書くかって言うゲームだね。」
「へぇ。なるほどね。だいぶ難しくない?これ??」
「そうだね。でも、一度取るまでは外枠の位置は変わらないから、天井がわかりやすいって言われてるよ。」
「あぁ、たしかに。」
紋章って言うけど、図柄としては、円形の簡単な図柄だ。360度全部試せば確実にゲット出来るし、さっきの図柄なら、点対象だからさらに回数が減るって感じだね。
判定はどれくらいなんだろ?
そこでも結構変わると思うけど、デロイリッドの話的にそこまでシビアでは無いのかな?
「最後に捕獲系。これは3人は見慣れてるんじゃない?」
「うわ!普通のUFOキャッチャーだ!」
「三角爪もあるな。」
「破壊系に抵抗ある人がこっちで遊ぶ傾向にあるかな?だから、プライズが被ってることもあるよ。」
「あ、やっぱり抵抗がある人もいるのね。」
「ピークさんが持ってるのと同じのがある。」
「え?じゃあ、なんであんな辛い思いを?」
ピークさんが驚愕している。
「えっと、もう一つ取ろうか?こっちで。」
「いえ、私はもうこの子を裏切れませんわ!」
「さて、それじゃあ、次のフロアに行きましょう。次のフロアは私が案内しますね。」
「レーリがしたいなら、任せるよ。」
独自進化しつつ、変わらない良さも良いよね




