第23話 食事効果
「遅くなって申し訳ありませんわ。ナギト様。」
「あ、キラリ様。」
ピークさんとお茶をしていた所に、キラリアさんがやってきた。
「あ、いえいえ。大丈夫ですよ。まだ、味見出来るようなものも出来ていませんし。」
「いえ、本日は最初から参加する予定でこちらからお声掛けさせていただいたのに、本当に申し訳ありませんでしたわ。」
今度は頭を深く下げて、謝られてしまった。
確かに、料理を作る際、キラリアさんも来るとは聞いていたけど、味見役だし完成ごろに来るのかと思っていた。
「今やっと、魔素料理に慣れ始めた所だったので、大丈夫ですよ。さっきまでのは、罰ゲームにしかなれませんから、よかったですけど、もう大丈夫なんですか?」
「はい。やるべき事は終わらせてきましたので、この後はご一緒させていただきますわ。」
なんだろ?お仕事かな?一応、城内のお仕事の手伝いをしてるとは聞いてるけど。
ピークさんがキラリアさんにお菓子を届けたのも、少し前くらいだったけど、痛み止めみたいなものっぽいし、栄樹養ってからきたのかな?
「じゃあ、お願いします。続きを始めましょうか。」
そんな感じにまたパンケーキ作りの始まりだ。
とりあえず、凡人がいきなり相性の悪い食材と属性を合わせるのは難しそうなので、簡単に出来るものから味を整えつつ、食べた時に効果が付与するようにしていく。
「ナギト様。もう結構出来ていますのね。」
「得意な属性だけですけどね。ピークさんの教え方がわかりやすかったので、そこまで難しくはなかったです。」
ピークさんが、隣でドヤってる。その顔に不安を見出したのか、キラリアさんが言った。
「そうですか。何か、困らせたりはしませんでしたか?」
「そうですね。肝心な所が抜け落ちていたり、ボケが多いなとは思いましたが、基本的には懇切丁寧に教えていただけましたので、大丈夫ですよ。」
「な、ナギト様!?」
なんで言ってしまうんですか??と驚きに溢れた顔をするピークさんと、その隣でキラリアさんが頭を抱えていた。
「だから、ピークだけで向かわせるのは、嫌だったのよ。」
「なんだかんだ楽しかったので大丈夫ですよ。」
「それでも、申し訳ありませんでしたわ。」
別にそこまで謝られるほどではないんだけど。話題変えないとね。
「キラリアさんって、城内でお仕事してるんでしたっけ?」
「お仕事というほどのものではありませんわ。お手伝いをさせていただいてますの。」
「お手伝いですか?」
「はい。書類仕事をわかる範囲でお手伝いさせていただいてますの。」
「キラリ様は、知識量が豊富でわかる範囲が広すぎるので、さまざまな部署から引っ張りダコなんですよ。」
図書館にある本は、大半を読み終えて、いるらしいしな。いつもどんな質問をしても答えや参考になる資料を教えてくれる。
本当にお手伝いの範囲で収まってるのか謎だね。
「それって結構大変そうですね。」
「そうでもありませんわ。聞かれた事を答えるだけですから。私が答えられるのは、私が知っている事だけですもの。」
「キラリ様が答えられなかった所を見たことありませんけどね。」
「めちゃくちゃ凄いですね。」
知力全振りでありながら、魔素量が多くて、精神力が半端ないってこと?
思っていた以上に凄い人だったんだな。
「そうなんですよ。キラリ様は凄いんです。アドバイスを求められればなんだって答えてくださるし、実務を任されれば難なくこなしてしまいます。私は一切理解出来ないって言うのに。」
余計な一言が入った気がするな。
「貴女はもう少し、勉学に力を入れるべきよ。」
「私のお仕事はキラリ様を支えることですから。」
「だから、書類作成くらいは出来ると助かるのだけど。」
「心身からのサポートを得意としています。」
「貴女が胃痛の原因でもあるのよ。」
「私の為にお心を配ってくださるのですね。ありがとうございます。」
これは……?仲が良いからこそのやりとりかな?天馬との会話もこんな感じだから、気持ちはわかるけど。
「たしかに心配しているわ。貴女お店を持つのが夢なのよね?」
「はい。ですので、経理関係のお仕事は頑張って覚えてますよ。」
「貴女が目指すのはパティシエでしょう?作物関連の問題にも目を向けなさい。」
「その年の収穫量や味の良し悪しに関しましては、データにまとめられる様になりましたよ。ですが、悪い場合の解決策を求められても、私には難しすぎます。」
「まぁ、そこはそうよね。」
「私に出来る事は、今ある食材で最高の物を作る事ですから。」
んー、よくわかんないけど、ピークさん。めちゃくちゃ大事にされてない?キラリアさんの出来る範囲で、将来の為のサポートをしてくれてる様に見えるんだけど。
役に立つ云々については、キラリアさんが求められているハードルが高すぎる気がするから、それを補うのは確かに難しいし、役立てるかわからないかもだけど。
とりあえず、それだけ大事にされてることは、理解した方がいいんじゃないかな?優しいで済ますのは可哀想だ。
「と、申し訳ありませんわ。ナギト様。二人で話してしまって。」
「いえいえ、面白かったですよ。それにちょうど出来上がりましたし。」
得意な属性だけで作ったので、怪我する事は無いと思うんだけど。
味はどんな感じかな?
とりあえず、口に入れてみる。
「私も口にしてもよろしいですか?」
「どうぞ。」
「ありがとうございますわ。」
キラリアさんがパンケーキを口に運んだ。
「ん、美味しいですわ。」
「んー、まぁ、美味しいとは思うんですが、ピークさんのものと比べると。」
「これ上手く混ぜ合わせられた属性は、全て入っているんですか?結構、複雑な組み合わせですね。」
「食べただけで、わかるんですか?」
「味覚には自信がありますから。これなら、あとは味か食事効果の調整になってきますから。レシピを見るか研究していけば大丈夫そうですね。」
「食事効果ですか。」
「はい。ナギト様は、属性が豊富ですから、使いこなせれば、様々な効果をもたらす事が出来ますよ。」
「でも、味との両立が難しそうですよね。」
「そうですね。良薬は口に苦しって言いますから。味なんて二の次で、食事効果特化の料理研究をする人もいますし。」
ええ……それは、本当に料理なんだろうか。
「それなら本当にお薬で良さそうですね。薬を食事サイズで出されるって結構キツくないですか?」
「たしかに魔素を固める事でお薬やサプリメントを作ることも出来ますが、媒介とする食材があった方が、効能が高く、効果時間も伸ばしやすいんですよ。」
「そうなんですか?」
「本来、料理は食材が持つ効能を高める事が目的ですから。炎属性耐性の強い食材に対し、雷属性を重ねる事で、食事効果に炎と雷属性耐性を付けるみたいな感じなんです。お薬やサプリメントでこう言った効果を乗せるのは、技術としてかなり高度ですね。」
「そうなんですね。」
食材との兼ね合いが結構難しそうだね。
「考えとしては、防具に近いんですかね?」
「そうですね。防具も素材を生かして、その動物の能力を引き出しますが、食事は時間限定版ってところです。リミットがある分、自由度が高いところが特徴ですね。」
「なるほど。」
「では、そのあたりを踏まえて、もう一度作ってみましょう。」
そうして、また数種類のパンケーキを焼き始めた。
今回の食材はパンケーキ。食材としてはノーマルで、強い食事効果は存在しない。なので、属性強化が一般的だ。
うーん、とりあえず多くの種類のパンケーキを焼いてはみたんだけど。
「ナギト様の料理は、味がくどくなくて、食べやすいですね。」
「サイズも凄く食べやすいですわ。」
それを二人は、俺が作ったパンケーキをスナック感覚で食べてくれた。
なんていうか、本当にお菓子みたいにいくらでも食べられそうな大衆的な味なんだよね。
なんていうか、お嬢様方に食べさせて良いものじゃない気がするんだよな。
味も食事効果も、平凡で、なんていうか、なんとなく口に運んでしまう中毒性だけが存在する、みたいな出来栄えだった。
「あの数は作ってますけど、無理にたくさん食べなくても大丈夫ですよ。後で、天馬と片付けますんで。」
「いえ、別に無理はしていませんよ。」
「あ、申し訳ありませんわ。食べ過ぎでしたか?」
「いや、食べてもらえるならありがたいですけど。」
「でしたら、ありがとうございますわ。」
絶対、二人ともお菓子をバカスカ食べたり、デカ盛り料理に挑戦するタイプではないよね?
すんごく、罪な事を教えてる気がする。




