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第21話 天馬とネアさん

「ナギナ!暇してるか!??」


 そんな言葉を聞いたのが一昨日の夜。

 久々に天馬にあったなぁと思ったら、ギルドに行ってみたいというので、時間を合わせた。


「天馬は最近どうなの?なんか、名声?だけは良く聞くけど。」

「名声ってw騎士団の人達に、連れられてダンジョン攻略してるだけだぞ。」

「ダンジョンかぁ。なんか珍しいものとか見つけた?」


 確かギルドでも、ダンジョン攻略は募集されてるらしいけど、運要素高めすぎて、金になりづらいんだっけ?

 当たったらデカイけど、道具の補修とか諸々考えるとタダ働きに近い時もあるから、人気ないんだっけな?


 人間には、一定数ギャンブル好きがいるイメージだけど、それでも人気無いってことは、それほど渋いってことなんかな?

 それか、他にギャンブルがあるとかか?


「手に入れたものはだいたい研究職の人に渡すんだけど、一回すごく喜ばれたのがあったなぁ。あんまり基準はわかって無いけど。」

「それもそっか。」


 二人で街並みを歩いて、ギルドに向かっていく。

 城下街と呼ぶには、比較的小さく感じる街並み。

 見た雰囲気は異国情緒溢れる街並みだけど、整然として清潔な街並みだからか、安らぎを感じる。


「どうかしたか?」

「なんか、こうやって静かな街並みを歩いてるとさ、通学路を思い出さない?」

「あー、なんか言いたいことはわかるな。午前授業の時なんかな。」

「そうそう。」

「でも、俺たちチャリ通じゃなかったか?」

「不思議だよね。」

「ナギナの頭がな」

「ごめんごめん、ネジ外れてた。」

 パッと、ネジを手元に見せてみる。

「んあ、この世界にネジはないだろ?」

「あはは、そういうツッコミになるんだw」

「いつもはないのに、突然出すから。」

「出せる世界だからねぇ。」


 そんな会話をしながら、歩いていると、近くで話し声が聞こえてきた。


「もー、しつこいなぁ。」

「いーじゃん。暇なんだろ?奢るからカフェ行こーよ。」

 この世界でも、ナンパとかは当たり前にあるんだね。

 ネットとかで探せそうなのに。

 文より顔に自信があるんかな?


「あまりしつこいのは良くないぞ。」

 さすが天馬、イケメンやね。

「なんだお前?今取り込み中なんだが。」

 結構ガタイいい感じのお兄さん方だな。魔力より肉体派かな?

「お兄さん、ガタイいいな!これ強化系魔法なしじゃないか?」

「ん?わかってんじゃねぇか。日々鍛えた肉体だからな。そこらの強化系よりよっぽど、キレてるぞ。」

「魔法強化で補ってると、ある程度からは筋肉が付きにくいらしいからな。相当だろ?」

 え?そうなんだ。あんま筋肉質な人見ないとは思ったけど、ある程度までしか鍛えられないんだ。

 いや、ある程度がどれくらいかも知らないけど。


「まぁ、強化系を使えないからでもあるんだがな。」

「0からか!それならもっと凄いな!んー、なら、お兄さん達どっちもワイルドでカッコいいんだし、そんなヘコヘコしてないで、一言声かけてダメなら次くらいのがいいんじゃないか?」

「いや、誰でもいいわけではないしなぁ。」

「好みで選んでる。」

「だったら、尚更だろ!一言に全力を尽くせよ。良さを一回で出し切ってダメなら、諦める。それが男じゃない?」

「「!!」」


 なんだろ?解決したのかな??天馬が戦って格の違いを見せつけるのかと思ったけど、漫画展開じゃなかった。

 天馬にはガッカリだよ。


「待たせたな。一応わかってくれたっぽいな……どうした?」

「天馬の人当たりの良さは、絵にすると地味だなって思って、ガッカリしてた。」

「なにが?何が不満ポイントなんだ?口で済んでよかったろ。」

 否定はせんけどさ。

 でも、当事者じゃないし。


「あの、助けていただきありがとうございました。」

「ありがとうございます。」

「いえ、たいした事はしてませんから。」


 そう言って、天馬がお辞儀して戻ってくるので、俺も歩き始める。するとすぐ、また声がした。


「ねえ、ナギじゃない?」

「え?」

 呼ばれて振り返ってみる。

 ネアさんとラシュアさんが立っていた。

「あ、やっぱり合ってた。」

「ネアさんとラシュアさん、二人?」

 今日は予定があるって聞いてた気がしたんだけど?終わったのかな??

「うん。さっきミサが終わったから、どーするか悩んでたの。」

「ナギナ、どうかした?」

「あ、えっと、いつもパーティ組んでる二人。ネアさんとラシュアさん。」

「あ、ナギの友達ですか?ラシュア・ナイヤゲルです。」

「ネア・バンケットです。」

「あ、エンマ・グウグウです。」

 人のこと言えんけど、偽名適当すぎない?

 まぁ、名前なんて珍しいで済んじゃうけどさ。


「さっき、颯爽としつこいナンパを撃退してましたよね?勇者様みたいでかっこよかったです。」

 え!?ネアさんが凄く不穏なことを呟いた。

 俺の魔法は、勇者様かもって思われたら簡単に解けちゃうんだけど!??


「あれはたまたまですよ。話のわかる人でしたので。」

「それでも凄かったです。」


 あれ?なんとも無さそうに、ネアさんと話してるな。解けなかったのか?


「で、ナギ達は何してるの?」

 気づくとラシュアさんが隣にいた。

 大丈夫っぽいのかな?

「エンマがギルドに行きたいってことで、向かってたところだよ。」

「何か狩りに行くの??」

「うん。二人でいけるの行こうかなと。」

「私たちも暇してるから、行っていいかな?」

 うーん、勇者ってバレてないならいい気もするけど、天馬が何狩りたいのか知らないし、下手すると今度こそバレるからなぁ。

 天馬に視線を向けてみる。


「いいんじゃないか?多い方が楽しそうだし。」

 天馬がそういうなら、まぁいいか。後で一応確認するけど、うまく調整してくれるだろ。


「じゃあ、お願いしようかな。」

 こうして、四人でギルドに向かうこととなった。


「ラシュアさん達は今日の予定はもう終わったの??」

「うん。今日は、勇者様教会に顔を出してだんだけど、人が少なくてさ。」


 なんか勇者様関連のとこに、登録してるって言ってたね。

「教祖様みたいな感じのありがたいお話をしてくれる人がいつもはいるんだけどね。今日は国産勇者団体の方で、大きな成果があったとかで、話を聞きに出てて、いなかったんだよね。」

「どんな話をするの?」

「最近は、今の勇者様の現状とかの話をわかりやすく話してくれたりするけど、特筆する話がない時は、昔の勇者様や聖女様関連の武勇伝かな。勇者様達の冒険譚が既に凄いんだけど、教祖様は話すの上手いから凄く面白いんだよね。同じ話でも、何回も聞き入っちゃうよ。」


 映画みたいに何回も見ちゃうみたいな話なのかな?それに教祖様っていうか、語り部みたいな感じなのかな?

 それとも映像とかもあったりするのかな??


「そんな感じなんだね。もっと崇拝信高めなのかと思った。結構、面白そうだね。」

「んー、面白いとは思うけど、崇拝信も高めだよ。お話を聞いた後は、集まった人たちで勇者様談義が始まるんだけど、結構白熱するんだよね。勇者様や聖女様には、本当にいろんな人がいたし、やってきたことも違うからさ。みんな推しへの熱意がやばくってね。」


「なるほど、生半可な気持ちじゃいけないな。」

「そんな怖がるもんでもないけどね。でも、勇者様の資料はネット上にたくさん転がってるから、ちゃんと調べて最推しは見つけた方が良いかも。」

「最推しってw」

「そこは冗談だけどさ。勇者様を応援したいって気持ちがあればそれで良いと思うな。それが今の勇者様でも、過去の勇者様でも、未来の勇者様であってもね。」

「そっか。」

「私の場合は、ネアやバーツみたいにやりたい事とかないからさ。こういう趣味くらいしかすることないだけかもしれないんだけどね。」

「そう?趣味だろうとなんだろうとさ、好きな事やしたい事に全力で取り組んで楽しめるって、凄く素敵な事だと思うけど。」

「そうなのかな?」

「?」

 ラシュアさんから、マイナスな雰囲気を感じることがあるとは思わなかった。首を傾ける。

「どんなに頑張ったって、何にもならないじゃない?自己満足からは、出れないと思うけど。」

「んー?どうだろ?そんな極端な話でもない気がするけど、そうだなぁ。」

 一呼吸入れてから、更に続ける。

「漫画とかでさ、俺は昔から悪役とかも好きなんだよね。

 それがどんなに悪い事で、非人道的な事でもさ、自分が思った夢や欲しい物の為に、全力で努力する姿って凄いなって思うんだ。だってさ、そう言う悪役とかが、ヒーローと違う部分って、たった一つなんだよね。善か悪かの違いってだけだと思うんだよね。」

「それは?そうかもだけど。」

「まぁ、人様に迷惑をかけるのは、やっぱり良くないなって思うから、肯定は出来ないけどさ。その人の生き様を否定は出来ないって思うんだよね。俺は自分が頑張ってるとは、思わないからさ。だから、別に誰かの役に立ってなくったってさ。好きな事に全力で、楽しく頑張れるって素敵な事だと思うんだ。」

「そうかな。」

「うん。それに世の中、わけわかんないからね。好きが転じて何が起こるかわかんないし、ラシュアさんの勇者様への応援が、未来の勇者様や今の勇者様の力になるかもしれないからね。悪はわかりやすいけどさ。何が正義になるかなんて、世の中わからないからさ。良いと思うよ。趣味に全力でも。」

「ふふ、だいぶ極論な気もするけど、確かにそうかもね。下手に頑張らなくても良いのかも。」

「うん。それくらいでいいじゃん。」


「はぁ、だから推せるのかな?」

 なんか言ったように聞こえた気がするけど、めっちゃ小さかったし、わざわざ拾わない方がいいかな?







「そんな感じで、ナギナのパーティ仲間にあったから、昨日は一緒に狩りしてたんだよな。」

「えー、ずるい。私も連れてけし。」

「最近、月音忙しそうだし、狩りには興味ないかと思ったんだけど。」

「たしかに支援魔法しか使えないけど、それは良いし。ていうか、異世界来てから、どっか行くみたいなのしてないから、そろそろどこか行きたい。」

「魔王召喚までには時間がまだあるから、言えば時間作れるんじゃないか?話してみるか?」

「うん。行き先は任せるわ。」

「おっけい。」

「それでナギナの仲間って女の人だったんだね。」

「2人ね。昨日はいなかったけど、いつもはもう一人男の人がいるから。」

「てか、月音も会ったことあるよな?昨日は、変装中だったから言えなかったけど、初めて黒衣獣ダスティマニアと戦った時、助けた人達だよな。」

「うん。よく覚えてるね。」

「一応挨拶したからな。」

「えぇ、あの時助けた人達とパーティ組んでるの?」

「うん。たまたま声をかけてくれたからさ。ギルド行く時はこうやって、顔変えてるから、向こうは知らないけどね。」

「えっ?一瞬で解けたけど、大丈夫?」

「相手に、流瑠瑠凪斗ながるるなぎとかなって、疑われると解けちゃうんだよね。」

「え?そうだったのか!?結構危うかったんだな!!」

「だから、戦闘中全力出し過ぎて、疑われないようにしてって注意したよね!?」

「あぁ、そういうことだったのか。強すぎると俺の存在の説明が面倒くさいとかだと思ってたわ。」

「一人にでもバレたらアウトなんだから。」

「結構、危うい生活してるんだね。ナギナ。いや、勇者ってバレてどうとかないと思うけど。」

「人間離れした技とか能力でも使わない限りさ、その辺の人見て、この人勇者様かもなんて思わないでしょ?」

「まぁ、確かに。」

「だから、今んとこなんともないよ。」


「なるほどねぇ。じゃあ、あの二人はまだ冒険者やってるんだね。」

「そういえばそうだな。」

「そうだね。まぁ、俺から話は触れないし、理由はわからないけど、なんともなかったみたいでよかったよ。」


「でも、良いなぁ。ナギナ、ネアさんとパーティ組めて。」

 やっぱり、ネアさんは天馬の好みだったっぽいね。

「騎士団の方にはいないの?ああいう感じの人。」

「綺麗だなって思う人は、それなりにいるけど、ネアさん、話しやすいし、可愛くない?」

 月音の目線が刺さるな。

「ネアさん、ガチの天然さんだからね。面白いなとは思うよ。右手に盾を呼び出して、次に剣を出すのかと思ったら、左手に右手にあった盾を呼び出した時は、笑った。」

「なにそれ?みたい。」

「咄嗟のタイミングじゃなくて、マジで良かったなとは思うけどね。」

「うわぁ、いいな。俺もそういうところに出くわしたい。」

「んー、俺と来てもいいけど、俺とだと顔隠してるからね。ネアさん、パン屋さんで働いてるはずだから、行ってみたら?」

「まじか!そうなんだ。」


 確か、ネアさんの推しって天馬だったし、お礼したいって言ってたから、喜ぶんじゃないかな?

「え?でもお店って開いてるの?」

「デリバリーもあるけど、お店も開いてるって聞いたよ。俺はデリバリーでしか食べたことないけど。」

 バーツと出かけた時に、デリバリーできるって聞いて、食べてみたけど美味しかったんだよね。


「わかった。お店行ってみる。」

「目立ちすぎないようにね。」

「それはわかってるさ。」


 天馬がお店をチェックし始めたので、月音に話題を変えてみる。


「月音は話進んだ?この前の?」

「うん。デロイに話した結果ちゃんと進みそうだよ。とりあえず、抽選で当たった人を集めつつ、寄付を募ることになった。」

「おお!これで月音も教祖様の仲間入りだね。」

「ふっ!崇めなさいな。」

「待て!この前の冗談じゃなかったのか!?」

「あ、教祖様とか宗教については、流石に嘘だよ。」

「じゃあ、実際はなにするんだ?」

「人を集めて月音が恵みを与えて、寄付を募ろうって計画。」

「恵みを与えるってなんだよ?」

「え?なにって。」

「もう、ナギナの言い方が悪いだけよ。わかりやすく言うなら、聖女様リフレってのをやろうと思ってて。」

「違う方向に印象悪くなったけど大丈夫か??」


 えー?なんで天馬はこんなに引いてるんだろ?俺ら的にはいい感じに落ち着いた話だったのに?


 月音と顔を見合わせて、首を傾げた。

「絶対、おかしいの俺じゃないからな!」





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